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図像学 ずぞうがく

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

図像学
ずぞうがく

「イコノグラフィーイコノロジー」のページをご覧ください。

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百科事典マイペディアの解説

図像学【ずぞうがく】

イコノグラフィー(アイコノグラフィー)iconographyの訳。欧語はギリシア語eikonographiaに由来し,文脈に応じて図像,図像表現,図像体系,図像学などと訳される。

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世界大百科事典 第2版の解説

ずぞうがく【図像学 iconography】

図像を記述,解釈する学。図像解釈学ともいう。iconographyとiconologyの語源は,ギリシア語のeikōn(肖像)+graphein(描く),logos(言葉,理法)である。古代には,著名人の肖像の記述,同定を意味した。西洋近世には象徴・寓意像(アレゴリー)の集成がこの名で呼ばれた(C.リーパ《イコノロジア》1593)。近世における,カタコンベ壁画など初期キリスト教美術の発見を機として,キリスト教図像の収集・解釈の努力が始まり,やがて反宗教改革期にはイエズス会修道士らもこれに加わった。

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大辞林 第三版の解説

ずぞうがく【図像学】

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

図像学
ずぞうがく

美術史の一研究方法で、図像の主題や象徴を識別し、比較、分類するイコノグラフィーiconographyをさす。しかし、このイコノグラフィーから発展し、図像のもつ深い意味を時代、教養、精神性といったものと関連づけて研究、解釈するイコノロジーiconology(図像解釈学)をも含めて図像学の用語が用いられることもある。これらのことばは、イメージ、肖像を意味するギリシア語のエイコン eikon(イコンicon)に由来し、イコノグラフィーは「記述」を意味するgrapheinが、イコノロジーは「ことば」「論理」を意味するlogosが、それぞれeikonと結びついたものである。[田川光照]

イコノグラフィー

イコノグラフィーは、17世紀ごろから著名人の肖像の集成をさして用いられていた。しかし19世紀になると、ロマン主義運動を背景に中世のキリスト教美術への関心が高まり、フランス人アドルフ・ディドロンAdolphe Didron(1806―67)の『キリスト教図像学 神の歴史』(1843)のような現代的な意味でのイコノグラフィー的研究が登場する。そして、『フランス宗教美術研究』全4巻(1898~1932)を著したフランス人美術史家エミール・マールEmile Mle(1862―1954)らの功績によって、美術史の方法論として確立した。
 イコノグラフィーの基礎となるのは典拠とアトリビュート(持物(じもつ))である。典拠とは、聖書や聖人伝、神話等の文献における記述のことで、アトリビュートとは、たとえば聖セバスチアヌスの像には矢が添えられるというように、宗教上・神話上の人物あるいは寓意的象徴像などの性格、概念を説明するために添えられる補助的な事物のことである。イコノグラフィーは、これらを前提として美術作品の主題を特定し、同時代やそれ以前の作例を示し、それらの表現の間に起こりうる主題的な変化を把握することを目的としている。[田川光照]

初期のイコノロジー研究

他方、イコノロジーの語が最初に使用されるのは、1593年にイタリアのチェーザレ・リーパCesare Ripa(1560ごろ―1620ごろ)が自著につけた題名『イコノロギア』Iconologiaによってである。この著作は、芸術家や詩人が象徴および寓意を視覚化する際に参照することを目的とした図像集成であったため、以後、イコノロジーの語は「象徴・寓意像」を意味するようになった。この語に今日の意味を与えたのはドイツの美術史家アビ・ワールブルクAby Warburg(1866―1929)である。ワールブルクは、1912年にローマで開催された国際美術史学会において、「特定の文化や個性の表現とみなしうる芸術作品の深い内容についての研究」という意味をイコノロジーに与え、美術史の方法論としてイコノグラフィーから区別した。[田川光照]

パノフスキーの理論

「ワールブルク学派」を中心にイコノロジー研究は進展したが、そのなかで決定的な役割を果たしたのはアメリカに亡命したドイツ人美術史家エルビン・パノフスキーである。パノフスキーは、1939年に刊行した『イコノロジー研究』の序論(後に「イコノグラフィーとイコノロジー」と題して『視覚芸術の意味』に再録)において、イコノロジーの概念を明確にし、決定的な意味づけを行った。彼は、芸術作品の内容あるいは意味を以下のような三つの層に区別して、作品解釈の方法を述べている。
(1)自然的内容 これは、作品に描かれた形態が、人間、動物、植物、家屋、道具など自然物の表現として認知される「実際的なもの」と、姿勢や身振りの表情として認知される「表現的なもの」とに細分される。この自然的意味を保有するものとして認められる純粋形式の世界が芸術的モチーフの世界であり、実際的経験に基づいてこれらのモチーフを列挙することは、美術作品の「イコノグラフィー以前の記述」である。しかし、実際的経験を単に当てはめるだけでは記述の正確さは保証されず、「移りゆく歴史的条件のもとで、客体やできごとが形式によって表現される方法の洞察」が必要である。
(2)慣習的内容 これは、たとえば、ある配置とある姿勢で夕べの食卓についている多人数の群像を「最後の晩餐(ばんさん)」として理解するときに把握される。この慣習的内容を保有するものとして認められたモチーフがイメージであり、そのイメージの組合せが物語や寓意である。文献資料をもとに作品の寓意的な意味の分析を行うのが、「イコノグラフィー的分析」である。しかし、文献的資料をむやみにモチーフに当てはめるだけでは正しい分析は行えず、「移りゆく歴史的条件のもとで、特殊なテーマや概念が客体やできごとによって表現される方法の洞察」が必要である。
(3)本質的意味もしくは内容 これは、一つの作品に凝縮される国家、時代、階級、宗教的あるいは哲学的信条などの基本的態度を明示する根本原則をつきとめることによって把握される。すなわち、純粋形式、モチーフ、イメージ、物語、寓意などは根本原則の表れであり、これらがカッシーラーのいう象徴的価値の世界を構成していると考えられる。文献資料から得られた特殊なテーマまたは概念に精通するだけでなく、「総合的直観」によってこの象徴的価値の世界あるいは時代や個人の世界観を解釈するのが「イコノロジー的解釈」である。しかし、解釈が主観的な誤謬(ごびゅう)に陥るのを防ぐために、「移りゆく歴史的条件のもとで、人間精神の本質的傾向が特殊なテーマや概念によって表現される方法の洞察」が必要である。[田川光照]

イコノロジー的方法への批判

このパノフスキーの仕事は、美術作品をそれが制作された時代の知的・社会的枠組みのなかで体系的に理解することへと人々の関心を向けることによって、美術史研究の進展において重要な役割を果たした。しかし、批判もないわけではなく、とくに1960年代後半以降イコノロジー的方法についての再検討がなされるようになった。おもな点をあげると、第1段階の理解があまりに単純素朴であり、自然的内容の認知とされるものはすでに特定の文化的状況によって条件づけられているのではないかということ、第2段階における意味の分析がもっぱら文献資料に基礎づけられていること、第3段階の解釈は作品個別の価値を文化一般のなかに解消してしまうこと、「総合的直観」は恣意(しい)的な解釈を導きかねないこと、美術史を作品解釈の積み重ねに還元してしまうこと、などである。
 イコノロジーに対する根本的な批判が、オットー・ペヒトOtto Pcht(1902―88)の『美術への洞察』(1977)にみられる。ペヒトは、イコノロジー研究者は作品に表現された意味の下により深い隠喩(いんゆ)的・寓意的・象徴的あるいは精神的意味が隠されているという信念を抱くことによって、絵画や芸術作品を絵文字ででもあるかのように扱い、それを解くためにテキスト狩りを行っていると批判する。そして、作品の背後ではなく内部に存する意味を追跡することが重要であるとし、作品を生んだ美術家とその観衆がもっていた視習慣を身につけることによって、作品の内在的な形成原理を追体験し再構成することが美術史研究の中心であると主張しているのである。
 また、イコノロジー研究者でワールブルク学派の重鎮であるエルンスト・ハンス・ヨーゼフ・ゴンブリッチは、『シンボリック・イメージ』(1972)の序説において、美術作品にありえない意味をみいだしたり、象徴が記号と意味との一対一の関係であると誤解することから誤った結論を導いたりするなど、イコノロジストたちがおかしがちな過ちを指摘し、イコノロジーは象徴の研究よりも、美術をめぐる慣例の研究から出発しなければならないと述べている。[田川光照]

イコノロジー研究の成果

このような批判や反省がありはするが、イコノロジーは美術史学の方法論として一大勢力を形成した。新プラトン主義がボッティチェッリらの絵画作品に与えた影響を論証したエドガー・ウィントEdgar Wind(1900―73)、ルネサンス建築の研究に応用したルドルフ・ウィットコウアーRudolf Wittkower(1901―71)など、多くの研究者が成果をあげている。
 また、とくに第二次世界大戦後には、政治、社会、宗教、文学など広く人文諸科学の分野においてもイコノロジーを適用する傾向や、さらにイタリアのウンベルト・エーコのようにイコノロジーを文化記号学の一部門とみなす傾向なども現れた。また、「イメージそれ自体という観念」の考察をイコノロジーに求め、イメージの観念がいかにして「一種の中継物として、芸術、言語、精神に関する理論と、社会的、文化的、政治的な価値の観念を結びつける」役割を果たしているかを示そうとする、アメリカのミッチェルW. J. T. Mitchell(1942― )のような研究者もいる。
 なお、日本では仏教図像を対象として、仏像の面相、姿、手、足の表現形式を研究する仏教図像学が成立している。[田川光照]
『オットー・ペヒト著、前川誠郎・越宏一訳『美術への洞察』(1982・岩波書店) ▽E・パノフスキー著、浅野徹也訳『イコノロジー研究』(1987・美術出版社) ▽E・パノフスキー著、中森義宗ほか訳『視覚芸術の意味』(1987・岩崎美術社) ▽E・H・ゴンブリッチ著、大原まゆみ・鈴木杜幾子訳『シンボリック・イメージ』(1991・平凡社) ▽水之江有一著『図像学事典 リーパとその系譜』(1991・岩崎美術社) ▽W・J・T・ミッチェル著、鈴木聡・藤巻明訳『イコノロジー』(1992・勁草書房) ▽若桑みどり著『絵画を読む イコノロジー入門』(1993・NHKブックス) ▽フレッチャー・アンガス著、伊藤誓訳『思考の図像学 文学・表象・イメージ』(1997・法政大学出版会) ▽荒俣宏著『図像学入門』(1998・集英社)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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世界大百科事典内の図像学の言及

【ワールブルク】より

…彼は,当時全盛の様式批判による美術史に対して,作品の主題的側面が芸術家やパトロンたちにとって重要な意味を有していたことを,主としてイタリア初期ルネサンス美術の研究を通じて主張。その画期的なボッティチェリ論(1893)によって拓かれ,後にパノフスキー等の図像学(イコノロジー)として結晶した彼の美術史的方法の基本は,すでに文庫の構成に組み込まれており,現在の研究所に継承されている。ルネサンス美術史研究に,古典古代はもとより東洋美術への視点も取り入れた彼の視野の広さは,研究所の活動を通じて美術史のみならず20世紀の文化史,哲学史研究などに多大の影響を及ぼした。…

※「図像学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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