エーコ(読み)えーこ(英語表記)Umberto Eco

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エーコ」の意味・わかりやすい解説

エーコ
えーこ
Umberto Eco
(1932―2016)

イタリアの評論家、美学者、記号論者、小説家。トリノ大学で美学を専攻。『トマス・アクィナスにおける美的問題』(1956)、現代芸術の新しい傾向を「開かれた作品」と規定し、ジョイス文学実作に則して論じた『開かれた作品』(1962)を著し、新前衛派(63年グループ)に加わり、サングイネーティ、アルバジーノ、バレストリーニらとともに反リアリズム文学を唱え、『クインディチ』誌の反体制運動にも参加した。哲学分野では『不在の構造』(1962)、『内容の諸形態』(1971)、『記号論』(1975、英語版1976)などがある。1971年からボローニャ大学教授となり、長編小説『薔薇(ばら)の名前』(1980)を出版して、世界的に話題を集めた。ほかに長編小説『フーコー振り子』(1988)、『前日島』(1994)、自伝的な要素も加えた『バウドリーノ』(2000)などがある。

河島英昭 2018年6月19日]

『池上嘉彦訳『記号論』1・2(1980・岩波書店/講談社学術文庫)』『河島英昭訳『薔薇の名前』上・下(1990・東京創元社)』『藤村昌昭訳『前日島』(1999・文芸春秋/文春文庫)』『藤村昌昭訳『フーコーの振り子』上・下(文春文庫)』『篠原資明著『現代思想の冒険者たち29 エーコ』(1999・講談社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エーコ」の意味・わかりやすい解説

エーコ
Eco, Umberto

[生]1932.1.5. アレッサンドリア
[没]2016.2.19. ミラノ
イタリアの文芸評論家,小説家,記号学学者。1954年トリノ大学で博士号を取得,イタリア放送協会を経て,1956~64年トリノ大学の教壇に立った。フィレンツェ,ミラノで教え,1971年にボローニャ大学の教授に就任した。初め美学を研究し,1962年にジェームズ・ジョイス論を中心に新しい美学の可能性を探った『開かれた作品』Opera apertaを発表した。その後,中世美術を研究し,前衛美術と大衆的なマスコミュニケーションとの関係を論じた『啓示と統合』Apocalittici ed integrati(1964),フェルディナン・ド・ソシュール構造言語学を発展させようと試みた『不在の構造』La Struttura assente(1968),イタリア語と英語で『記号論』Trattato di semiotica generale(1975),A Theory of Semiotics(1976)を発表した。小説は,1980年の長編第一作『薔薇の名前』Il nome della rosaが 1981年度のストレーガ賞を受賞し,世界的ベストセラーとなった。『フーコーの振り子』Il pendolo di Foucault(1988)も評判が高かった。新前衛派の重要な一員。(→イタリア文学

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