国意考(読み)コクイコウ

デジタル大辞泉 「国意考」の意味・読み・例文・類語

こくいこう〔コクイカウ〕【国意考】

江戸後期の国学書。1巻。賀茂真淵著。文化3年(1806)刊。儒教仏教などの外来思想を批判し、古代風俗や歌道の価値を認め、日本固有の精神への復帰を説いたもの。

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精選版 日本国語大辞典 「国意考」の意味・読み・例文・類語

こくいこうコクイカウ【国意考】

  1. 江戸中期の国学書。一巻。賀茂真淵著。明和二年(一七六五)までに成立、文化三年(一八〇六)刊。儒教や仏教などの外来思想を排撃し、国学への復帰を説いたもの。古代の風俗、歌道に価値を認めた。儒教的な作為を排して無為自然を尊ぶ処には老荘思想の影響が見られ、仏教の因果応報の思想を空しいと見る。漢字の不便さを説き悉曇(しったん)ローマ字を支持する点などにはかたよりもある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国意考」の意味・わかりやすい解説

国意考
こくいこう

江戸時代の思想書。国学者賀茂真淵(かもまぶち)の代表的著作「五意考(ごいこう)」の一つ。元来『国意(くにのこころ)』とよばれたらしい。1765年(明和2)成立。1806年(文化3)11月刊。版本には、野公台(野村淡海)の「読加茂真淵国意考」および橋本稲彦の「弁読国意考」付載。真淵の理想とした古道の根本思想を説いた論書で、日本固有の古(いにしえ)の道は、儒教や仏教など外来思想によって曇らされたとし、儒教的な理想主義に対する反発から、老荘思想や近代の自然主義に通じるような一面もみえる。古道については、歌道の意義を強調し、「ことわり」にとらわれず、自然の「まこと」に任せ、「和(にき)び」を旨とすべきを説いている。

[井上 豊]

『『日本思想大系39』(1972・岩波書店)』『『賀茂真淵全集19』(1980・続群書類従完成会)』

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百科事典マイペディア 「国意考」の意味・わかりやすい解説

国意考【こくいこう】

江戸中期の国学書。賀茂真淵の著。1冊。1765年成立。1806年刊。《歌意考(かいこう)》《語意考》などとともに〈五意考〉の一つ。儒の道が人の理知により強(し)いて作られた小の道であるに対し,日本の国の道(古道,いにしえのみち)は天真のままなることを論考,国学体系を示した。→古道学

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国意考」の意味・わかりやすい解説

国意考
こくいこう

賀茂真淵の著。1巻。文化3 (1806) 年刊。『歌意考』『語意考』など国学の体系を著わしたいわゆる五意考の一つ。真淵は歌論,国学双方に大きな業績を残したが,本書は国学の復古思想を明確に打出した代表的著作である。国意とは日本固有の精神の意で,彼は本書において外来思想,特に儒仏思想に対して日本古来の精神の優秀性を説いた。知巧,強制,束縛の儒仏思想を排して,自然のままに生活した日本古代 (古道) に復帰すべきだという復古主義の主張は,一方では国粋主義的偏狭に陥る方向性をもったが,他方では儒教道徳の束縛から人間の性情を解放する意味をもった。彼の歌論と結びついた復古主義はのち本居宣長に継承されていく。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「国意考」の解説

国意考
こくいこう

儒教や仏教に対し,日本固有の古道の優位を主張した書。賀茂真淵(まぶち)著。1760年(宝暦10)成稿,のち加筆して65年(明和2)頃成立。版本は1806年(文化3)刊。古代中国で禅譲(ぜんじょう)と放伐(ほうばつ)がくり返された事実をあげてその非を論じ,日本の天地自然なる政道を是とする。日本の上代に親族結婚が存在したことを,同母兄弟を真の兄弟とする習俗があったという観点から擁護しつつ,人の本質は鳥獣に異ならないとした。これらには老荘思想の影響がうかがえる反面,仁義礼智などの道徳をいっさい拒否する立場を鮮明にしており,儒者の激しい反発を招いた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「国意考」の解説

国意考
こくいこう

江戸後期,賀茂真淵 (まぶち) の著書
1806年刊。儒教・仏教の外来思想を批判し,日本固有の古道にたちかえることを主張したもの。

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