江戸時代の思想書。国学者賀茂真淵(かもまぶち)の代表的著作「五意考(ごいこう)」の一つ。元来『国意(くにのこころ)』とよばれたらしい。1765年(明和2)成立。1806年(文化3)11月刊。版本には、野公台(野村淡海)の「読加茂真淵国意考」および橋本稲彦の「弁読国意考」付載。真淵の理想とした古道の根本思想を説いた論書で、日本固有の古(いにしえ)の道は、儒教や仏教など外来思想によって曇らされたとし、儒教的な理想主義に対する反発から、老荘思想や近代の自然主義に通じるような一面もみえる。古道については、歌道の意義を強調し、「ことわり」にとらわれず、自然の「まこと」に任せ、「和(にき)び」を旨とすべきを説いている。
[井上 豊]
『『日本思想大系39』(1972・岩波書店)』▽『『賀茂真淵全集19』(1980・続群書類従完成会)』
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儒教や仏教に対し,日本固有の古道の優位を主張した書。賀茂真淵(まぶち)著。1760年(宝暦10)成稿,のち加筆して65年(明和2)頃成立。版本は1806年(文化3)刊。古代中国で禅譲(ぜんじょう)と放伐(ほうばつ)がくり返された事実をあげてその非を論じ,日本の天地自然なる政道を是とする。日本の上代に親族結婚が存在したことを,同母兄弟を真の兄弟とする習俗があったという観点から擁護しつつ,人の本質は鳥獣に異ならないとした。これらには老荘思想の影響がうかがえる反面,仁義礼智などの道徳をいっさい拒否する立場を鮮明にしており,儒者の激しい反発を招いた。
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