行政庁が国民各個人にコード番号を付し,行政の合理化と能率化を図ろうとする制度のこと。情報化社会の到来が現実味を帯びてきた1970年2月,政府は行政管理庁を中心に〈情報処理高度化運営方針〉を作成するとともに〈事務処理用統一個人コード設定の推進〉を図ることとした。これが,国民のプライバシーを侵害する国民背番号制であるとして反発を招き,国会でも追及が行われた。72年11月,全電通などの提唱で〈国民総背番号制に反対し,プライバシーを守る中央会議〉が結成された。一方,国際的にも個人情報保護の制度的基準の必要性が高まり,80年10月,OECD(経済協力開発機構)評議会は加盟国に対し〈プライバシー保護と個人情報の国際間の流通に関するガイドライン〉を勧告した。日本政府も,総務庁を中心に制度化に乗り出し,88年12月〈行政機関の保有する電子計算機に係る個人情報の保護に関する法律〉(個人情報保護法)が制定された。また,地方自治体でも個人情報保護条例を制定しているところが少なくない。たしかに,高度情報化社会にあって,複雑な行政の合理化・能率化を図ることは,国民の利益にも合致するし,目的と使用を限定したコード番号による処理はやむをえない趨勢であろう(たとえば納税者コードなど)。しかし,それらの情報が集中・結合・加工されて利用される場合は,まさに国民総背番号であり,〈裸の社会〉とならざるをえない。
→情報化社会 →プライバシーの権利
執筆者:清水 英夫
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… 現代の管理社会論は,こうした流れをふまえて,コンピューターの発達にともなう情報技術の発展とそのあらゆる方面への波及が,あらゆる情報の管理中枢あるいは支配層への集中をもたらし,少数エリートによる大多数の人間の管理が徹底されると説くものである。経営については経営情報システム(MIS)が,また社会全体については国民情報システム(NIS),すなわち国民総背番号制がこうした危険性を現実化する。しかも今日では,情報革命が社会主義社会でよりも高度資本主義社会のほうではるかに進展しているために,民主主義を政治の原則にしている社会のほうこそかえって管理社会化する危険性が高い。…
※「国民総背番号制」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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