広義においては,租税を除いて,国が国権に基づいて収納する金銭一般を意味する。したがって,司法権に基づいて徴収する罰金,科料,過料,裁判費用,行政権に基づいて徴収する手数料等も,すべて一種の課徴金ということができる(財政法3条)。これに対し,近年,狭義の課徴金とも言うべき種類の行政手段が法定され,注目をあびている。それは,1973年秋の石油危機時に物価沈静のために制定された国民生活安定緊急措置法でまず採用され,その後,独占禁止法の77年改正の際に,カルテル規制の補完手段として,独占禁止法にも盛り込まれた。国民生活安定緊急措置法上の課徴金は,主務大臣が定めた特定標準価格を上回る値段で,価格の安定をはかるべき物資として指定された生活関連物資を販売する者に対して課せられるもので,特定標準価格を上回って販売した額に相当する金銭の納付が命じられることになっている(11条)。徴収の実例はまだない(1996年末現在)。独占禁止法上の課徴金は違法なカルテルをなした事業者から,違法カルテルによって得た不当な利得に相当する額を徴収する趣旨のものと解されている(7条の2,8条の3)。この徴収例は多く,金額も非常に大きくなる場合がある。いずれも行政罰ではなく,法が禁じたり,禁止はしないにせよ好ましくないとの判断を示している行為につき,その行為をなすことの経済的意味をなくし,それによってその行為の発生を未然に防止することを目的とする行政手段として解すべきものであろう。
→不当な取引制限
執筆者:来生 新
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… その後,昭和30年代の高度成長期には,多くの個別適用除外立法が制定されるなど,独占禁止法の運用は必ずしも活発にはなされなくなった。昭和40年代に入って,物価問題が重要な政策課題として認識されるにつれて,独占禁止法の運用も徐々に活発になり,1973年の第1次石油危機を契機にした企業批判のたかまりの中で,77年に独占禁止法の歴史上初めての強化改正が行われ,市場構造にウェイトをおく企業分割規定である,〈独占的状態に対する措置〉の制度や,カルテルに対する課徴金の制度,大規模会社の株式保有総額の規制,同調的値上げの届出制度等々が新設された。 このように,石油危機は,一方では,それに端を発した物価対策の視点から独占禁止法の強化改正をもたらした。…
…またカルテルの違法性について企業の認識が高まった今日では,公正取引委員会が,要件の中心をなす合意の存在を直接に証明することはほとんど不可能であるため,これを直接に示す証拠がなくとも,事業者間の事前の意思の連絡調整があったことと,その結果であることが合理的に推定される事後の行動の一致とが証明されるならば,合意の存在は間接的に立証されたものとして扱われる。違法なカルテルに対しては,協定の破棄を中心とする排除措置が命ぜられるほか,1977年の改正で,すべてのカルテルにつき,カルテルによって違法に得た利得の総額を法定の算定方式によって算出し国庫に納付することを命じる課徴金制度が導入され,これによる抑止効果が高く評価されている。カルテルカルテル法独占禁止法【来生 新】。…
※「課徴金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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