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公共の福祉 こうきょうのふくし

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

公共の福祉
こうきょうのふくし

社会の構成員の権利,自由や利益相互的衝突を調節し,その共存を可能とする公平の原理。日本国憲法が,国民は基本的人権を「公共福祉」のため利用する責任を負うこと (12条) ,あるいは基本的人権は「公共の福祉に反しない限り」立法その他の国政のうえで最大の尊重を必要とすること (13条) などを明らかにしたこと (そのほかにも,22,29条でも用いられている) から,第2次世界大戦後広く用いられるようになった (民法1,刑事訴訟法1など) 。この観念は,アリストテレスやトマス・アクィナスらにまでさかのぼるもので,それは全体主義的理念として個人の人権を抑圧した歴史的経験をもつ多義的な不確定概念であることから,公共の福祉を基本的人権の制約原理ととらえることに批判的な見解も強い。公共の福祉の内容として,「社会全体の利益」とか「社会生活を営む成員多数の実質的利益」とかいわれるが,社会の多数者に抗してでも自己を主張することを可能にさせるところに基本的人権の存在理由があるから,単純に「成員多数の実質的利益」が公共の福祉であるということはできない。しかし他方,社会が存続するために,社会の構成員間の利害の衝突を調整,解決する原理が必要ではある。そこで現在では,公共の福祉とはそれによって人権を制約されるその個人の利益にも還元される全体の利益と認識されている。

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デジタル大辞泉の解説

こうきょう‐の‐ふくし【公共の福祉】

社会全体に共通する幸福・利益。基本的人権と矛盾することがあり、その調和問題とされる。

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百科事典マイペディアの解説

公共の福祉【こうきょうのふくし】

相互に対立関係を含む個々の利益を社会全体として調和させるために用いられる公平の原理であり,その内容は歴史的に変化している。起源的にはアリストテレス,特にトマス・アクイナスの思想にさかのぼる。
→関連項目財産権私権自由権所有権土地基本法表現の自由

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世界大百科事典 第2版の解説

こうきょうのふくし【公共の福祉】

社会全体の利益,社会全員の共存共栄,配分的正義の理念,個々の利益が調和したところに成立する全体の利益,人権相互の衝突を調整する原理としての実質的公平の原理などと定義づけられる。古代ギリシア以来,法と国家にかかわる根本問題の一つとされてきたテーマであり,かつ,歴史的・社会的に規定されてきた概念なので,きわめて多義的である。 歴史上重要な憲法的文書に現れたものとしては,近代憲法の最初のものとされるバージニア権利章典3条(1776)に〈共同の利益common benefit〉,アメリカ合衆国憲法前文(1787)に〈一般の福祉general welfare〉,フランスの1789年人権宣言前文に〈全体の幸福bonheur de tous〉,1793年憲法に付された人権宣言に〈共同の幸福bonheur commun〉などの語が用いられている。

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大辞林 第三版の解説

こうきょうのふくし【公共の福祉】

社会一般に共通する幸福や利益。個人の利益や権利に対立ないしは矛盾する場合があり、相互の調和が問題とされる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

公共の福祉
こうきょうのふくし
public welfare

個人の個別的利益に対して、多数の個々の利益が調和したところに成立する全体の利益をさす。法哲学や国家論の根本問題の一つで、古くはアリストテレスやトマス・アクィナスが唱えて以来、論議されてきた観念である。
 人間の生活は本質的に社会生活であるが、個人の利益を貫けば社会生活が成り立たず、社会の利益だけを考えると、個人の利益が踏みにじられることがある。このように個人の利益と社会の利益が矛盾する場合に、両者の調和が必要となる。ここに公共の福祉の観念が成立する。しかし、個人の利益に優越する社会全体の利益を重視する観点から、歴史的には有機体的国家観や全体主義の思想の理論的支えとして多く用いられた。とくに17~18世紀の絶対主義において、貴族や市民の抵抗を排する必要から、君主の権力確立のために、全体の利益への奉仕が主張された。20世紀に入って、福祉国家の思想が強調され、これとは別な新しい観点にたって、ふたたび公共の福祉が唱えられるようになった。
 もともと人間としての権利や自由が、恣意(しい)なものとしての自由、権利を意味しない限り、公共の福祉の観念を否定することはできない。1789年のフランス人権宣言で、「自由は他人を害しないすべてのことをなしうることに存する。各人の自然的権利の行使は、社会の他の構成員に同種の権利を確保せしめることのほかには制限を有しない」と述べているのも、個人の権利に内在する制約を明らかにしたものといえる。日本国憲法第13条も、人権は「公共の福祉に反しない限り」最大の尊重を必要とすると規定している。しかし、人権の制約原理として公共の福祉を一般的に認めると、公共の福祉を理由に、人権が不当に制限される危険が生じやすい。そのうえ、公共の福祉は具体的内容をもたない漠然とした観念であるために、ときとして政府や有力な党派による一方的な解釈が、この観念に与えられる懸念が大きい。たとえば、ナチス・ドイツの標語であった「公共の福祉は個別利益に優先する」は、全体主義における全体の利益の優先を意味する。しかし、日本国憲法で規定された公共の福祉の観念はこの意味とはまったく異なり、あくまでも個人主義的な理念に立脚する観念である。
 1965年(昭和40)ごろまでは、最高裁判所において基本的人権を制限する立法の合憲性の根拠として、公共の福祉の観念が引き合いに出されることが多かったが、多くの学説による批判を受けて、それ以後は、制限を受ける基本的人権とその制限によって得られる利益とを比較衡量するという手法を用いるようになった。この観点からは、基本的人権相互間、あるいは基本的人権と社会的利益の間の矛盾、衝突を調整する実質的公平が公共の福祉の内容をなすといえる。[池田政章]

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世界大百科事典内の公共の福祉の言及

【基本的人権】より

…そして特別の法律関係の内部において人権の侵害が問題となるときは,法治主義の原理に従って司法的救済の途が開かれていなければならない。
[基本的人権の制限,公共の福祉]
 法律の範囲内でのみ人権が保障されていた明治憲法と比べ,日本国憲法は人権の保障をいちじるしく強化した。しかし,そこにおいて,人権の制限はまったく認められないであろうか。…

※「公共の福祉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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