在宅酸素療法(読み)ざいたくさんそりょうほう

家庭医学館の解説

ざいたくさんそりょうほう【在宅酸素療法】

●在宅酸素療法とは
 在宅酸素療法とは、病院ではなく在宅で酸素吸入をする治療法です。病状が安定していても、血液中の酸素が低いために長期入院を余儀なくされている患者さんに対してこの治療法を行なうと、患者さんとその家族にとって、本来の人間的な家庭生活が可能になり、その意義は、医学的にも社会的にも高く評価されます。
●在宅酸素療法の対象となる病気は?
 在宅酸素療法の対象となる病気は、肺気腫(はいきしゅ)、間質性肺炎(かんしつせいはいえん)、肺線維症(はいせんいしょう)、肺結核後遺症(はいけっかくこういしょう)など、呼吸器疾患が大半を占めますが、そのほか心疾患、神経疾患、がんなど、さまざまな疾患が対象となります。
 在宅酸素療法は生命の維持を目標として長期にわたりますので、その長い経過中に生じる多くの問題に対応するために、患者さんや家族が、病気についてある程度基本的なことを知っておく必要があります。
在宅酸素療法の適応基準
 厚生労働省が定めた健康保険適用上の基準は、(「在宅酸素療法の適応基準」)に示したように、慢性呼吸不全(まんせいこきゅうふぜん)例では動脈血酸素分圧(どうみゃくけつさんそぶんあつ)(PaO2)で規定されています。肺高血圧症、チアノーゼ型先天性心疾患についてはPaO2によらず、医師の判断で健康保険を適用することができます。
●慢性呼吸不全とは?
 呼吸不全とは、血液中の酸素と炭酸ガス(二酸化炭素)が異常な値を示し、そのため、生体が正常な機能を営むことができない状態をいいます。血液中の酸素と炭酸ガスは動脈血で判定しますが、酸素分圧(PaO2)が60mmHg以下、炭酸ガス分圧(PaCO2)が45mmHg以上の場合を、呼吸不全といいます。
 慢性とは、呼吸不全が1か月以上続くものと規定されています。また、呼吸不全は酸素分圧だけが低下するⅠ型呼吸不全と、酸素分圧が低下し、炭酸ガス分圧が上昇するⅡ型呼吸不全に分類されます。
 Ⅰ型呼吸不全の代表的疾患には間質性肺炎、肺線維症が、Ⅱ型呼吸不全の代表的疾患には肺気腫や肺結核後遺症があげられます。
●酸素吸入量はどれくらいが適当か?
 Ⅰ型呼吸不全では、炭酸ガス蓄積がありませんので、十分量の酸素を吸入させることができます。一般的には、吸入酸素流量は2~4ℓ/分が適当です。
 Ⅱ型呼吸不全では、不用意に高流量の酸素を吸入しますと、血液中の炭酸ガスが上昇し、頭痛や意識障害をおこすことがありますので、低流量の酸素吸入をする必要があります。
 一般的には、0.5~1.5ℓ/分が適当です。
 患者さんが在宅酸素療法の恩恵を十分受けるためには、主治医の適正な酸素処方とともに、患者さんが酸素吸入流量を勝手に増やしたり減らしたりせず、医師の処方を守ることがたいせつです。
●歩行時の酸素吸入流量の決め方
 慢性呼吸不全の人では、歩行時にPaO2が大幅に低下することが多く、間質性肺炎、肺線維症や肺気腫の場合は、とくにその傾向があります。歩行時の吸入流量のおおまかな目安は、安静時の2~3倍程度です。しかし、正確な流量は、指先に装着して酸素飽和度が測定できるパルスオキシメーターを用いて決定します。
 具体的には、日常生活で歩行しているのと同程度の速度で数分間歩行しながら、この器具で酸素飽和度を測定し、酸素飽和度が90%以上を維持できるように酸素吸入流量を決定します。
●酸素供給装置
 酸素濃縮器 空気中の窒素(ちっそ)を吸着する吸着剤に圧縮空気を通過させて酸素を濃縮し90%以上の濃度の酸素を供給する装置。家庭のコンセントを電源にして使用します。
 酸素ボンベ 軽金属性の軽量ボンベ(3kg)で、容量は360ℓです。キャスターに載せて、携帯用として用います。
 液体酸素供給システム 液体酸素を気化させて供給する装置で、大きな親容器から直接酸素を吸入することができますが、親容器から子容器に液体酸素を充填(じゅうてん)し、携帯用としても使用することができます。
●酸素吸入器具
 鼻カニューラ 酸素供給装置につないで、鼻から酸素を吸入する細いチューブです。目立たないように、めがねのわくを通して吸入する器具もあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

百科事典マイペディアの解説

在宅酸素療法【ざいたくさんそりょうほう】

肺機能が低下して,動脈血液中の酸素分圧(酸素濃度)が異常に低い値になると,息切れなどがして普通の生活を送れなくなる。こうした呼吸不全の患者に対して,自宅で酸素発生装置を使い,酸素を鼻孔に送り込んで,呼吸を助ける治療法のこと。使用器具は据え置き型の酸素濃縮器や,24時間使える携帯用の酸素ボンベなどがあり,患者の状態に合わせて様々な性能を持っている。 呼吸不全が急激に起きたり悪化した場合には入院が必要になるが,安定した状態であれば,医師の判断によって在宅酸素療法が可能になる。1985年1月に健康保険が適用され,現在では全国で約3万人がこの治療を受けている。 患者のなかで最も多いのは,慢性閉塞性肺疾患(喫煙者に多くみられる肺気腫や慢性気管支炎)で全体の約4割,ついで肺結核の後遺症で約2割を占める。病気を完治することはできないが,在宅酸素療法によって自立した生活が可能になり,食事や会話もできる。ただし,医師の指示を正しく守ることが大切であり,投与する酸素の量が多すぎても少なすぎても危険である。今後は訪問看護などフォロー体制のさらなる充実が求められている。→酸素吸入在宅ケア訪問看護ステーション

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

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