地球および地球上の生命が、その起源から現在までにたどった歴史(地史)を研究する学問分野。地史学では、何がどこでいつおこったのかが強調され、それがどのようにどうしておこったのかが追求される。そしてしばしば、地球上のある地域、ある地質時代、あるいは構造地質学的見地とか、古生物学的見地といった、地質学のある分野が強調されてきた。
堆積(たいせき)岩や、新旧の岩石中に貫入した火成岩体や、地表まで噴出した火山岩のなかには、過去の侵食、運搬、堆積作用、火成作用、変成作用、変形運動の跡や、一方には生命の活動の跡が残っているので、岩石や化石を調べることによって、それらより、地殻の運動、地表環境の変遷、生物の発展などの、地質時代におこったさまざまなできごとを読み取ることができる。そしてそれには、過去のできごとの性質を、現在作用していて観察することができる過程と比べて、その類似から類推する、という研究方法がとられる。この方法は現在主義とか方法論的斉一説(せいいつせつ)とよばれ、自然法則は空間的にも時間的にも不変であるという仮定と、かつ現在観察できる事柄で過去のできごとが説明できる限り、説明を複雑にするような理論は主張しないことが、必要条件になっている。方法論的斉一説は、イギリスの地質学者ライエルのころには、当時に存在した自然の超自然的解釈と闘うために必要であったが、これを克服した現在では、経験的科学の一般的な研究法以上のものではなく、地質学が特別にもっている指導原理ではない。
地質学的なできごとを時間の順序に編成するために必要な、岩石の時間的な前後関係の情報を地史学に提供するのは層位学であり、その最近の進歩は、地史の理解を著しく進めた。地層の新旧の決定や、かけ離れた地域の間の地層の対比は、かつては主として標準化石に頼って行われた。この生層位学的方法は、浮遊性微生物を使うようになってきわめて洗練されるとともに、他方、放射性同位体による年代測定や、地磁気の逆転も利用されるようになって、現在では、地史はその時間的精度を増すとともに地球や生命の起源にまでさかのぼった。そしてまた、できごとの時間的規模や速度についても、以前に比べてはるかに正確な把握がなされるようになった。一方、岩石学的および地球物理学的方法の発達は、実際に観察可能な地表と、それから直接推定が可能な地殻上層部に限られていた地史の推定空間を、マントル上部にまで拡大した。
このようにして現在では、移動する磁極、拡大したり消滅したりする海洋底、移動する大陸といった、きわめて不安定な海洋や大陸の世界観のうえに、地史が編まれるようになった。
[花井哲郎]
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