斉一説(読み)セイイツセツ(英語表記)uniformitarianism

デジタル大辞泉 「斉一説」の意味・読み・例文・類語

せいいつ‐せつ【斉一説】

過去の地質現象は、現在の自然現象と同じ作用で形成されたとする考え。J=ハットンが唱え、C=ライエル強調。「現在は過去を解くかぎ」という言葉で表される。斉一観。→天変地異説

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精選版 日本国語大辞典 「斉一説」の意味・読み・例文・類語

せいいつ‐せつ【斉一説】

  1. 〘 名詞 〙 過去に起こった地質現象は、現在起こっているものと同じであったと考える考え方。一八世紀末、イギリスハットン(James Hutton)が提唱。近代地質学基礎となった考えで、ダーウィン進化論影響を与えた。現在主義

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改訂新版 世界大百科事典 「斉一説」の意味・わかりやすい解説

斉一説 (せいいつせつ)
uniformitarianism

〈さいいつせつ〉ともいう。イギリスのJ.ハットンは《地球の理論》(1788)の中で,自然の法則は地球が太陽系の一員であるかぎり,過去・現在を通じて不変であるとする考えから,過去の地質現象は現在の自然現象の注意深い観察によって知ることができると説いた。この考えは後に斉一説と呼ばれた。斉一説によって,従来の思弁的地質学は科学的地質学に置き換えられた。1830年代に出版されたC.ライエルの《地質学原理》は斉一説の普及に貢献した。ライエルのいう地質学の原理とは斉一説のことである。しかしライエルは地質現象における過程の一様性を重視したため,斉一説はしばしば漸進説,斉一過程説,現在主義などと同義語とされた。なお斉一説からは,地質現象はきわめて長大な時間の経過の中で緩慢に行われるという考えが導かれる。この地質現象における時間尺度の認識は,J.B.deラマルクやC.ダーウィンの進化論の出発点ともなっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「斉一説」の意味・わかりやすい解説

斉一説
せいいつせつ

過去の地質時代におこった諸現象も、現在働いていると同じ自然の法則に従って生起したとする説、ないし自然観。簡単に「現在は過去の鍵(かぎ)である」と表現される。18世紀中ごろイギリスのハットンによって提唱され、19世紀同じくイギリスのライエルによって広められた。進化論のダーウィニズムにも影響を与えたといわれる。ハットンは野外の観察を重視し、事実に基づいて次のように主張した。すなわち、たとえ急激な変動があったようにみえても、長時間かければ現在も作用しているような緩慢な作用でも形成されうるとした。これはフランスのキュビエカタストロフィズムcatastrophism(天変地異説)に対するもので、近代地質学の基礎を築く考え方である。現行説(アクチュアリズム)ともいう。

[岩松 暉]

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百科事典マイペディア 「斉一説」の意味・わかりやすい解説

斉一説【せいいつせつ】

地質学的過去にも現在と同じ地質作用が起こっており,それらは一連の現象であるとする考え。ハットンが提唱,ライエルが確立した。中世の宗教的自然観を打破し,近代的地質学の確立に重要な役割を果たした。〈現在は過去の鍵である〉という言葉はこの考えを簡潔に表現したもの。現在主義とほぼ同義。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「斉一説」の意味・わかりやすい解説

斉一説
せいいつせつ
uniformitarianism

過去の地質現象が,現在の地質現象を進行させているのと同じ自然法則のもとで進行したとする考え。 18世紀末 J.ハットンが唱え,C.ライエルが『地質学原理』 (1830~33) のなかで的確に基礎づけた。斉一説は,当時,科学的根処がなく多分に観念論的であった天変地異説などに打撃を与え,近代的地質学の礎となった。

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法則の辞典 「斉一説」の解説

斉一説【principle of uniformity】

過去の地質現象は,現在の自然現象と同じ作用の結果として起きたという概念.斉一観*ということもある.地質時代を通じて,同時期の地質学的作用は同じ一定の様式で,本質的に同じ強さで生じたとする.また過去の地質時代における事象は,現在みられる現象によって説明可能であるというものである.

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岩石学辞典 「斉一説」の解説

斉一説

地質学の学説で,以前の地質学的な過程および事件は,現在の過程に照して評価すべきであると主張するもの[Hutton : 1795].

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世界大百科事典(旧版)内の斉一説の言及

【古生物学】より

…この論争自体はキュビエの勝利に終わったが,天変地異説の方はC.ライエル(1797‐1875)の《地質学原理》(1830)で否定されることになった。ライエルの思想は〈斉一説uniformitarianism〉といわれ,〈現在は過去の鍵である〉ことを強調している。19世紀の第2四半期は産業革命のさなかであって,キュビエ以来の生物学的研究とスミスにより刺激された層位学的研究の結びつきが強化され,化石の層位学上の実用的価値が石炭のような地下資源開発の面で認められていった。…

【古生物学】より

…この論争自体はキュビエの勝利に終わったが,天変地異説の方はC.ライエル(1797‐1875)の《地質学原理》(1830)で否定されることになった。ライエルの思想は〈斉一説uniformitarianism〉といわれ,〈現在は過去の鍵である〉ことを強調している。19世紀の第2四半期は産業革命のさなかであって,キュビエ以来の生物学的研究とスミスにより刺激された層位学的研究の結びつきが強化され,化石の層位学上の実用的価値が石炭のような地下資源開発の面で認められていった。…

【地形】より

…山地で起伏量1000m以上を大起伏山地,300m以上を中起伏山地,100~300mくらいを小起伏山地などと分けるが,この区分基準は対象地域と目的によって変化させて差支えない。
[地形の系統的認識]
 海,山,川,崖など地形の経験的認識は人類の生活の歴史とともに古いが,系統的認識は18世紀末のイギリスの地質学者による〈斉一説〉に端を発している。すなわち,J.ハットンが唱道し,C.ライエルによって広められた同説によると,〈現在地表に見られる地学的諸現象と同じような過程で,地球創生以来地形がつくられ続けてきた〉のである。…

※「斉一説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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