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地史 ちしgeological history

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

地史
ちし
geological history

ある地域の地質学的な歴史あるいは地球全体の自然史。地史を論ずるためには,その地域に分布する地層や岩石の性質や特徴,地層の重なり方など形成の順序,それらの対比と可能なかぎり精度の高い地質年代を明らかにし,その生成環境と変遷地質構造とその発達過程を検討しなければならない。そのためには地質学の種々の分野を総合して検討することが必要であり,そうすることによって内容の豊かな地史をつくることが可能となる。
地球の誕生は隕石の年齢と同じおよそ 46億年前と考えられるが,最初の地殻海洋大気が形成されたのは,その後 8億年近くを経た 38億年前頃と推定される。やがて生命が誕生した。しかし,生物の遺骸や遺物である化石がよく産出するようになるのは古生代初めのカンブリア紀以降の約 5億4200万年間で,その間の地史はかなりよくわかってきた。地球の自然史と一口にいっても内容は多種多様なものを含んでいる。古地理,古気候,古環境の変遷史,生物界の変遷史,地層群の形成史,地質構造発達史,火成・火山活動史,地殻変動史,含油層・夾炭層(きょうたんそう),鉱床・鉱物の形成史など,それぞれの観点から地史を構成することも可能であるが,いくつかの分野を総合した地史も考えられる。したがって,どのような観点で総合すれば特色ある地史を編むことができるかが問題である。
地史における時間の概念は,地層は下位から順に重なるという地層累重の法則と,地層中に含まれる生物の遺骸・遺物である化石の変化を基礎に,地層の地質時代の新旧を区別する方法が示され,これによって地質時代区分の標準がつくられた(→相対年代)。この標準は古くから研究されたヨーロッパ諸地域の地層を模式として,地質時代区分と名称がつけられている。地質時代は古い方から先カンブリア時代,古生代,中生代新生代に大別される。先カンブリア時代は古生代より前の時代を一括してさすもので,約 40億年を占めることになるが,始生代原生代に分けたり,あるいは創生時代を加えて三分することもある。いずれにしても生物を中心とし,それは時代とともに進化して新しくなるという意味が示されている。古生代,中生代,新生代の細分は,これらの時代に堆積した地層をと呼ぶ。例をあげれば,新生代・新第三紀・中新世・メッシニア期,その時期に堆積した地層が新生界・新第三系・中新統・メッシニア階となる。
互いに離れた地域にある地層が同時代であるかどうかを決めることを対比 correlationという。特に国際的標準の模式地の地層と対比できるかどうかは重要である。これまで対比には広域に認められる地殻変動や不整合,気候変化,海進海退などの海陸の大きな変化を利用する方法も使われてきたが,一般に,ある特定の時代に広く分布した生物の化石が地層の年代的位置を示す示準化石として利用され,それと時代的に変化が速い,進化系統のよくわかる種を選び,いくつかの種の共存により規定される化石帯が,地層の最も細かい区分と対比に使われてきた。そして,その精度を高めることや地質時代の境界をより正確に決めることは,いまなお国際協力で努力がなされている。
地層の年代については,放射性同位体の半減期を利用して鉱物や岩石の年代を測定する方法が導入されて以来,質量分析計の精度も高まり,放射能年代測定は数多く実施され,火成岩火山岩変成岩について多くの年代測定結果が得られるようになった(→絶対年代)。ただし,地質時代の境界に年代測定ができる岩石が必ずあるとはかぎらず,鉱物,岩石の熱的な変化の歴史は単純ではないので,測定法とその値の解釈は慎重を要することもある。(→年代測定
中生代白亜紀以降の,およそ 8000万年前までの地層の年代については,海洋を浮遊するプランクトンの仲間であるナンノプランクトン,浮遊性有孔虫ケイ藻類放散虫類微化石を利用し,海成層の国際的な対比が可能となったが,近年ではそのような生層序(生物層序学)的変遷と,古地磁気の磁極逆転の変遷史,それに放射年代を組み合わせることによって,高い精度で,しかも連続的に地層の年代を決めることができるようになった。現在のところほぼ 1Ma(Mega annum=million years 100万年)の精度,年代によってはそれ以上の精度で地層の年代を決められるようになり,これらの時代については,地質時代はほとんど年数の入った地質年代として使うことができるようになった。また,第四紀後半になると火山の多い地域では噴火による火山灰の広域な広がりに基づいて対比し,あわせて,放射年代を決める火山灰年代学や,木片や炭化物の放射性炭素同位体を使った炭素14年代測定法(→ラジオカーボンデーティング)による対比・編年と組み合わせて,場合によっては 1000年単位で地層の年代を論ずることができるようになった。このように精度の高い地質年代が得られるようになった結果,地球上に起こったさまざまなイベントの同時性や関連性,生物の進化速度などを,かなり正確に扱うことができるようになり,地史のうえでも画期的な進歩をもたらした。
これまでの地球全体の地史を眺めると,大山脈を形成する造山運動,陸地の沈降隆起を示す海進・海退,気候変化のそれぞれに周期的変化が知られ,生物界の変遷にしても生物群の出現,繁栄,絶滅にほぼ周期性が認められ,特に地質時代の境界には大きな変化があり,それらの様相もしだいに明らかにされている。一方,アルフレッド・L.ウェゲナー大陸移動説に始まった大陸移動の考えは,今日ではプレートテクトニクスに発展し,大陸の離合集散の周期性が論じられ,その地史が年代的にも具体的に組み立てられようとしている。中生代白亜紀末に知られる生物界の大量一斉絶滅については,巨大隕石の衝突という外的原因が主張されているが,古生代ペルム紀末の生物界の大量一斉絶滅は,地球上の全大陸が融合したパンゲア超大陸形成の年代に近い。それまであった海洋の消滅と一大超大陸の形成という地史上のイベントが,気候・生物にどのように大きな影響を与えるのか,これからの地史の研究の重要課題の一つと考えられる。

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デジタル大辞泉の解説

ち‐し【地史】

地球またはある地域の地質などの発達・変遷の歴史。

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大辞林 第三版の解説

ちし【地史】

地球の発達・変遷の歴史。
ある特定の地域の地殻と生物との生成・変化の歴史。層位・古生物・地質構造などから組み立てる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

地史
ちし

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