地方財政計画(読み)チホウザイセイケイカク

デジタル大辞泉 「地方財政計画」の意味・読み・例文・類語

ちほうざいせい‐けいかく〔チハウザイセイケイクワク〕【地方財政計画】

地方財政の規模や収支の見通しを全体として捉えたもの。毎年、総務省が策定し、政府から国会に提出する。全国の地方公共団体歳入地方税国庫支出金など)と歳出公務員給与など)を見積もった総額が示されている。歳入不足分が地方交付税の算定根拠となる。地方財政と国家財政の調整、各地方公共団体の行財政運営の指針ともなる。

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共同通信ニュース用語解説 「地方財政計画」の解説

地方財政計画

自治体の歳入、歳出の見通しを合算した計画。年末時点で翌年度見込みを基に作るため、実際の歳入、歳出とは一致しない。歳出は、給与改定を反映した人件費、国の制度変更を踏まえた社会保障費、借金返済に充てる公債費などで構成。歳入は景気動向から予測した地方税収、国が使い道を決めて配る補助金を積み上げ、不足分は地方交付税で手当てする。近年は十分な交付税を確保できず、自治体が臨時財政対策債(赤字地方債)を発行して穴埋めしている。

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改訂新版 世界大百科事典 「地方財政計画」の意味・わかりやすい解説

地方財政計画 (ちほうざいせいけいかく)

内閣は,毎年度,地方公共団体全体の歳入・歳出の見込額に関する書類を作成して国会に提出し,かつ一般に公表することになっており,これを地方財政計画と呼ぶ。今日では,歳入面では,(1)地方税,(2)地方譲与税,(3)地方交付税,(4)国庫支出金,(5)地方債,(6)使用料および手数料,(7)雑収入,歳出面では,(1)給与関係経費,(2)一般行政経費,(3)公債費,(4)維持補修費,(5)投資的経費,(6)公営企業繰出金,(7)地方交付税の不交付団体における平均水準を超える必要経費,が主要項目として掲げられている。ただし,それは地方財政のうち普通会計に相当する部分のみを対象としており,地方公共団体相互間の歳入・歳出の重複を除いた純計で示されている。また,地方財政計画は実際の歳入・歳出を推計するものではなく,標準的な水準での歳入・歳出の見込額を計上するものである。したがって,たとえば,税収入は標準税率ないし標準的な徴収率で算定されて超過課税分を含んでおらず,歳出面でも,国庫支出金の交付対象事業における超過負担分は経費に見込まれていない。

 地方財政計画が作成されるようになったのは1948年からであり,第2次大戦後の大幅な地方行財政制度の改革にあたり,国として採るべき地方財政対策のよりどころにするためであった。さらに,50年に地方財政平衡交付金制度が発足すると,地方財政計画上の地方財源の不足額をもって毎年度の交付総額が決定されることとなった。これ以降,地方財政計画の策定は,〈地方交付税法〉で内閣の義務として明確に規定されている。その後,54年に地方財政平衡交付金制度が現行の地方交付税制度に改められ,交付総額が国税3税(所得税,法人税,酒税)の一定割合として自動的に決定されることになると,総額決定における地方財政計画の直接的な意義は表面的には失われた。しかし,毎年度分として交付すべき普通交付税の総額と各地方公共団体の財源不足額の合算額とが引き続いて著しく異なる場合には,地方行財政制度の改正や国税3税からの繰入率の変更を行うものと規定されており,そのような措置の当否は実際には地方財政計画上の歳入・歳出の過不足によって判断されている。それゆえ,今日でもなお,地方財政計画は地方交付税の総額決定に深いかかわりをもち,地方公共団体に対する財源保障の面で重要な役割を果たしている。ところで,地方財政計画は国の予算編成を踏まえて作成されるものであり,そこには社会・経済の動向に関する政府の見通しや予算編成方針が強く反映されている。そのため,地方公共団体にとって,それは予算編成にあたっての重要な参考資料であり,行財政運営上の基本的な指針を与えるものとなっている。その結果,地方財政計画は,地方公共団体に具体的拘束力を有するものではないにもかかわらず,政府の方針を地方に徹底させる手段としても事実上大きな力を発揮している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「地方財政計画」の意味・わかりやすい解説

地方財政計画
ちほうざいせいけいかく

内閣が毎年度作成し、国会に提出するとともに一般に公表する、翌年度の地方公共団体の歳入歳出総額の見込額。そのおもな役割は、地方財政全体の収支の状況を明らかにして、財源不足が生ずる場合には地方財政対策を講じ、また長期的には地方交付税の総額を決定する基礎とすることにある。

 地方財政計画の策定は1948年度(昭和23)から始まったが、50年度に地方財政平衡交付金制度が発足すると、地方財政計画は新たな役割を受け持つことになった。この制度では、交付金の総額は各地方公共団体の財源不足額の合算額を基礎として定めることになっていたが、実際にはそれが技術的に困難であったため、従来の地方財政計画を利用して、そこで算出される収支の不足額を交付総額として決定するという方法がとられたからである。

 1954年度に地方財政平衡交付金制度が地方交付税制度に改正されると、地方交付税の総額が国税の所得税、法人税、酒税の一定割合と定められたため、地方財政計画は総額の決定には直接関係をもたないことになった。しかし、毎年度分として交付すべき普通交付税の総額が各地方公共団体について算定した財源不足額の合算額と引き続き著しく異なることとなった場合には、地方行財政制度の改正または交付税率の変更を行うとされており、その判断は、実際には地方財政計画上の収支の状況によってなされるので、地方財政計画は、長期的には地方交付税の総額の決定に関連をもっているといえる。

 なお、地方財政計画は実際の収支見込額ではなく、国の定める「標準的な水準」におけるそれを推計するものであって、経費では国庫補助負担事業における超過負担額や国家公務員の給与水準を上回る地方公務員の給与費などは算入されておらず、収入では標準税率を上回る超過課税などによる収入は含まれていない。また、これは普通会計を対象とする単年度の収支見込みであって、前年度からの繰越事業費や剰余金収入は算入されていないし、当初予算ベースで積算されるため、年度当初において予測できない経費や年度中途における地方税の自然増収なども計上されない。このため、地方財政計画額は地方公共団体の実際の決算額をかなり下回っている。地方財政計画による財源保障はこのような前提にたって行われるものであることに注意する必要がある。

[大川 武]

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知恵蔵 「地方財政計画」の解説

地方財政計画

地方公共団体全体の歳入・歳出に関する見込み。地方交付税法第7条により、内閣は翌年度の地方財政計画を国会に提出するとともに、一般に公表することを義務付けられている。平成19(2007)年度の地方財政計画は、前年度とほぼ変わらず、83兆1261億円であった。歳入の内訳は、三位一体改革を反映して、地方税は前年度比15.7%増の40兆3728億円、地方交付税は4.4%減の15兆2027億円、国庫支出金は0.3%減の10兆1739億円、地方債は10.8%減の9兆6529億円、などとなっている。これにより、地方税、地方交付税、臨時財政対策債などからなる地方一般財源は59兆2266億円となり、一般歳出に占める一般財源比率は前年度比1.5%増の68.1%となり、地方財源不足額は4兆4200億円まで低下している。また、地方債依存度も前年度の14.6%から13.0%に低下し、地方財政の健全化が進んだ。財源不足のうち、通常収支の不足4兆4200億円は、財源対策債、臨時財源対策債の発行及び特別交付金により補填(ほてん)される。

(神野直彦 東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授 / 2008年)


地方財政計画

内閣は毎年度、その翌年度の地方公共団体の歳入歳出総額の見込み額に関する書類を作成し、これを国会に提出すると共に、一般に公表しなければならない(地方交付税法第7条)。この地方公共団体の歳入歳出の見込み額を一般に「地方財政計画」と呼ぶ。地方財政計画には、(1)地方交付税制度とのかかわりにおいての地方財源の保障を行う、(2)地方財政と国家財政・国民経済などとの調整を行う、(3)個々の地方公共団体の行財政運営の指針となる、という役割がある。2006年度の規模は約83兆円である。また内閣は、地方財政法第30条2の規定に基づき、地方財政の状況を明らかにして国会に報告する。国と地方の歳出純計額は04年度で約150兆円。国が40、地方が60の割合で支出を行っている。このように、地方財政の規模は大きい。特に、身近な道路・都市計画施設等の生活基盤整備の推進、小・中学校等の教育の振興、高齢者対策等の社会福祉の増進など、国民生活に密接に関連する行政分野においては、大きな部分を地方公共団体が担っている。

(北山俊哉 関西学院大学教授 / 笠京子 明治大学大学院教授 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地方財政計画」の意味・わかりやすい解説

地方財政計画
ちほうざいせいけいかく

自治体の歳入・歳出総額の見込み額を策定すること。内閣には毎年,翌年度の自治体全体の歳入や歳出の見込額について書類を作成し国会に提出し公開することが義務づけられているが,これは単なる地方財政収支の予測ではなく,地方行政の計画をコントロールする意味を含んでいる。つまり計画の策定過程で地方財政対策が議論され,財源措置がとられることから,自治体に対する財源保障や地方財政運営上の指針を示すこととなる。現在,財政規模は公共支出全体の7割を占めるが,そのなかでこの計画は中央・地方を通じた行財政全体の姿を明らかにするものとして重要な地位を占めている。

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世界大百科事典(旧版)内の地方財政計画の言及

【地方財政】より

…【金沢 史男】
【規模】
 地方財政は,最初に述べた地方的公共財提供のほかに,所得分配の公平化を目的として単純に貨幣購買力を移転させる効果の支出をも行っている。これらの移転的支出をも含めた地方財政計画の1982年度決算額による地方公共団体全体の普通会計歳出額は,51.1兆円にのぼり,国の一般会計と10特別会計との純計歳出額50.5兆円を若干上回る規模である。国の歳出には,後述する地方交付税交付金,または国庫支出金のように地方への振替支出が含まれ,その資金の流れとは逆にまた,金額は少であるが,地方から国への支出も存在する。…

※「地方財政計画」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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