全自治体の歳入、歳出の見通しを合算した計画。年末時点で翌年度の見込みを基に作るため、実際の歳入、歳出とは一致しない。歳出は、給与改定を反映した人件費、国の制度変更を踏まえた社会保障費、借金返済に充てる公債費などで構成。歳入は景気動向から予測した地方税収、国が使い道を決めて配る補助金を積み上げ、不足分は地方交付税で手当てする。近年は十分な交付税を確保できず、自治体が臨時財政対策債(赤字地方債)を発行して穴埋めしている。
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内閣は,毎年度,地方公共団体全体の歳入・歳出の見込額に関する書類を作成して国会に提出し,かつ一般に公表することになっており,これを地方財政計画と呼ぶ。今日では,歳入面では,(1)地方税,(2)地方譲与税,(3)地方交付税,(4)国庫支出金,(5)地方債,(6)使用料および手数料,(7)雑収入,歳出面では,(1)給与関係経費,(2)一般行政経費,(3)公債費,(4)維持補修費,(5)投資的経費,(6)公営企業繰出金,(7)地方交付税の不交付団体における平均水準を超える必要経費,が主要項目として掲げられている。ただし,それは地方財政のうち普通会計に相当する部分のみを対象としており,地方公共団体相互間の歳入・歳出の重複を除いた純計で示されている。また,地方財政計画は実際の歳入・歳出を推計するものではなく,標準的な水準での歳入・歳出の見込額を計上するものである。したがって,たとえば,税収入は標準税率ないし標準的な徴収率で算定されて超過課税分を含んでおらず,歳出面でも,国庫支出金の交付対象事業における超過負担分は経費に見込まれていない。
地方財政計画が作成されるようになったのは1948年からであり,第2次大戦後の大幅な地方行財政制度の改革にあたり,国として採るべき地方財政対策のよりどころにするためであった。さらに,50年に地方財政平衡交付金制度が発足すると,地方財政計画上の地方財源の不足額をもって毎年度の交付総額が決定されることとなった。これ以降,地方財政計画の策定は,〈地方交付税法〉で内閣の義務として明確に規定されている。その後,54年に地方財政平衡交付金制度が現行の地方交付税制度に改められ,交付総額が国税3税(所得税,法人税,酒税)の一定割合として自動的に決定されることになると,総額決定における地方財政計画の直接的な意義は表面的には失われた。しかし,毎年度分として交付すべき普通交付税の総額と各地方公共団体の財源不足額の合算額とが引き続いて著しく異なる場合には,地方行財政制度の改正や国税3税からの繰入率の変更を行うものと規定されており,そのような措置の当否は実際には地方財政計画上の歳入・歳出の過不足によって判断されている。それゆえ,今日でもなお,地方財政計画は地方交付税の総額決定に深いかかわりをもち,地方公共団体に対する財源保障の面で重要な役割を果たしている。ところで,地方財政計画は国の予算編成を踏まえて作成されるものであり,そこには社会・経済の動向に関する政府の見通しや予算編成方針が強く反映されている。そのため,地方公共団体にとって,それは予算編成にあたっての重要な参考資料であり,行財政運営上の基本的な指針を与えるものとなっている。その結果,地方財政計画は,地方公共団体に具体的拘束力を有するものではないにもかかわらず,政府の方針を地方に徹底させる手段としても事実上大きな力を発揮している。
執筆者:大川 政三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
内閣が毎年度作成し、国会に提出するとともに一般に公表する、翌年度の地方公共団体の歳入歳出総額の見込額。そのおもな役割は、地方財政全体の収支の状況を明らかにして、財源不足が生ずる場合には地方財政対策を講じ、また長期的には地方交付税の総額を決定する基礎とすることにある。
地方財政計画の策定は1948年度(昭和23)から始まったが、50年度に地方財政平衡交付金制度が発足すると、地方財政計画は新たな役割を受け持つことになった。この制度では、交付金の総額は各地方公共団体の財源不足額の合算額を基礎として定めることになっていたが、実際にはそれが技術的に困難であったため、従来の地方財政計画を利用して、そこで算出される収支の不足額を交付総額として決定するという方法がとられたからである。
1954年度に地方財政平衡交付金制度が地方交付税制度に改正されると、地方交付税の総額が国税の所得税、法人税、酒税の一定割合と定められたため、地方財政計画は総額の決定には直接関係をもたないことになった。しかし、毎年度分として交付すべき普通交付税の総額が各地方公共団体について算定した財源不足額の合算額と引き続き著しく異なることとなった場合には、地方行財政制度の改正または交付税率の変更を行うとされており、その判断は、実際には地方財政計画上の収支の状況によってなされるので、地方財政計画は、長期的には地方交付税の総額の決定に関連をもっているといえる。
なお、地方財政計画は実際の収支見込額ではなく、国の定める「標準的な水準」におけるそれを推計するものであって、経費では国庫補助負担事業における超過負担額や国家公務員の給与水準を上回る地方公務員の給与費などは算入されておらず、収入では標準税率を上回る超過課税などによる収入は含まれていない。また、これは普通会計を対象とする単年度の収支見込みであって、前年度からの繰越事業費や剰余金収入は算入されていないし、当初予算ベースで積算されるため、年度当初において予測できない経費や年度中途における地方税の自然増収なども計上されない。このため、地方財政計画額は地方公共団体の実際の決算額をかなり下回っている。地方財政計画による財源保障はこのような前提にたって行われるものであることに注意する必要がある。
[大川 武]
(神野直彦 東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授 / 2008年)
(北山俊哉 関西学院大学教授 / 笠京子 明治大学大学院教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…【金沢 史男】
【規模】
地方財政は,最初に述べた地方的公共財提供のほかに,所得分配の公平化を目的として単純に貨幣購買力を移転させる効果の支出をも行っている。これらの移転的支出をも含めた地方財政計画の1982年度決算額による地方公共団体全体の普通会計歳出額は,51.1兆円にのぼり,国の一般会計と10特別会計との純計歳出額50.5兆円を若干上回る規模である。国の歳出には,後述する地方交付税交付金,または国庫支出金のように地方への振替支出が含まれ,その資金の流れとは逆にまた,金額は少であるが,地方から国への支出も存在する。…
※「地方財政計画」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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