地震観測(読み)じしんかんそく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「地震観測」の意味・わかりやすい解説

地震観測
じしんかんそく

地震活動を把握し、震源の位置、断層の種類や地下構造を推定するため、あるいは建物や地盤の地震時の震動を知るため、通常、地震計を用いて行われる観測のこと。特定地点揺れの程度は、震度計を用いて表すことができるが、人の感じ方や物体の動き、被害などから推定することもできる。日本での最初の地震観測は、1872年(明治5)開成学校教頭であったアメリカの宣教師フルベッキにより振り子を用いて始められたという。東京気象台では、1875年の創設時からパルミエリ地震計による観測が始まり、1884年からは、震動の強弱など地震計によらない地震の報告が日本中から収集されるようになった。

 地震観測は通常、同一地点で長時間続けられ、地面の動きは地震計により連続的に記録される。この記録からP波などの地震波の到達時刻や振動方向、振幅などが読み取られ、多数点の読み取りから震源の位置やマグニチュードなどが決められる。1980年代以降これらの作業は、リアルタイムでコンピュータにより自動処理されることが多く、地震波形から直接震源での動き(断層の種類など)が推定される。このような定常観測のほかに、余震群発地震活動の把握など、特定の目的をもつ一時的な観測も行われる。

[島崎邦彦]

『川崎一朗・島村英紀・浅田敏著『サイレント・アースクェイク――地球内部からのメッセージ』(1993・東京大学出版会)』『ブルース・A・ボルト著、金沢敏彦訳『地震』(1997・東京化学同人)』『宇津徳治著『地震学』(2001・共立出版)』『島村英紀著『地震学がよくわかる――誰も知らない地球のドラマ』(2002・彰国社)』『島村英紀著『地震はどこに起こるのか――地震研究の最前線』(講談社ブルーバックス)』

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改訂新版 世界大百科事典 「地震観測」の意味・わかりやすい解説

地震観測 (じしんかんそく)
seismic observation
seismological observation

地震観測は地震波の検出,記録,および記録データの検測・処理などの過程から成り立つ。地震観測の目的は地震活動,震源過程,地球内部構造などの研究,地震による災害の軽減・予防など多岐にわたる。これらの目的により観測の対象となる地震波の周波数帯域が異なることが多いので,地震波の検出にはそれぞれの目的に応じた最適の周波数特性をもつ地震計を用いる。地震計の出力信号は電気的信号として取り出されるが,それは各種の記録媒体に時間的に連続した波形データとして記録される。記録はアナログ方式とディジタル方式とがあるが,地震波形の数値解析の手法の進歩や,多量の数値データの収録・制御装置の開発によって,ディジタル方式が主流となりつつある。

 地震波は地震の震源で発生し地球内部を伝搬してくるので,地震の発生や地球内部構造に関する情報を豊富に含んでいる。しかしこれらの情報を有効に取り出すためには,震源を中心としたさまざまの方位と距離に位置する地点で地震波を記録し,これらを総合的に解析する必要がある。そのため地震の発生地域に地震計を多点配置した地震観測網を設置することが多い。地震は突発的に発生し,しかもその発生場所は一定していないのが普通である。そのため,ある地域での地震発生の時間的・空間的分布を調べるためには,長期間にわたる常時的,連続的な観測が必要となる。

 地震観測網はその広がりが10km程度のものから1000kmあるいは地球全体をおおうものまでさまざまな規模のものがある。そのため,便宜的に観測網の広がりによって局地観測網,広域観測網とよんでこれらを区別することがある。こうした規模の大小によらず,地震観測網の基本条件は地震波の伝搬と波形特性を正確に計測する機能を備えていることである。そのためには地震計配置の最適化,地動雑音の除去,地震計の規格の標準化と精密検定,広い周波数帯域とダイナミックレンジの確保,高精度の刻時の保守などが必要である。

 代表的な地震観測網としては,地球規模の観測を目的とした世界標準地震観測網World-wide Standardized Seismograph Network(略称WWSSN),日本全域をおおう気象庁の全国地震観測網などがある。これらの観測網はそれぞれ世界規模および日本周辺の地震活動の解明に大きく貢献し,また地震学全般の進歩をうながした。最近の地震観測技術の進歩は,高性能のディジタル方式地震計,海底地震計に代表される特殊地震計,地震波データの自動処理システム,通信衛星を利用した地震観測網の開発などめざましいものがある。
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百科事典マイペディア 「地震観測」の意味・わかりやすい解説

地震観測【じしんかんそく】

地震計などを用い,地震発生の時,所,規模,消長などを観測すること。日本では気象庁が全国約170ヵ所に地震計を設置しているほか大学関係のものが幾つかある。

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