奈良後期・平安初頭の武将。倭(東)漢(やまとのあや)氏の一族であるが,苅田麻呂の代,その宗家となり,同族が直(あたい)-連(むらじ)-忌寸(いみき)-宿禰(すくね)と改姓していくなかで,この宗族坂上氏だけは,大忌寸-大宿禰を称し,苅田麻呂-田村麻呂の代に全盛期を迎えた。苅田麻呂は大和守,造東大寺司長官犬養の子。田村麻呂の父。坂上氏は代々将種をうたわれた家柄で,757年(天平宝字1)の橘奈良麻呂の変において,すでに朝廷軍事力の中核として,牡鹿(道嶋)嶋足らとともに,彼の名があげられている。764年の恵美押勝の乱には,授刀少尉として奮戦,朝廷軍大勝の因をなした。功により,従四位下,大忌寸賜姓,中衛少将,770年(宝亀1)正四位下,陸奥鎮守将軍,771年中衛中将,781年(天応1)右衛士督,翌年氷上川継の変に連座し解任されたがまもなく復し,785年(延暦4)従三位,大宿禰賜姓。772年,785年2度の奏は,倭(東)漢氏=坂上氏の繁栄を示す重要史料。
執筆者:高橋 富雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…日本古代の氏族。渡来系氏族の東漢氏(やまとのあやうじ)(倭漢氏とも書く)から分かれた多数の枝氏族の一つ。東漢氏は,応神天皇の時代に阿知使主(あちのおみ)に率いられて日本に渡来してきたという伝承をもち,5世紀ころよりヤマト朝廷の文筆,財務,外交にたずさわるとともに,あとから渡来してきた手工業技術者などを支配下におさめて急速に成長した氏族であるが,その後分裂をくりかえし,60以上の枝氏族に分かれたという。…
※「坂上苅田麻呂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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