年齢・勤続年数、成績考課などの賃金決定要素の変化に応じて行われる基本給の引上げをいう。自動的に生じる年齢・勤続年数の変化を基準とするものを自動昇給といい、成績考課を基準とするものを考査昇給あるいは査定昇給という。また、実施される時期からみて、毎年ある時期を決めて定期的に行われる定期昇給と、時期をとくに定めない臨時昇給とに分類される。さらに、昇給の理由からみて、職務遂行能力の向上などの一般的理由に基づく普通昇給と、特殊な職務への従事、特別な功労などの特別な理由に基づく特別昇給とに分ける分類もある。昇給には、(1)年齢・勤続年数、職務遂行能力などの変化と賃金との調整機能、(2)定額給のもつ刺激性の欠如を補う労働意識の刺激機能、(3)労働者の生活水準の上昇に伴う生活費の増加に対応する生活水準の維持機能、(4)賃金の計画的増額を可能とする企業経営の安定機能、などがある。
昇給は、基本給を増額する主要な方法ではあるが、唯一の方法ではない。これ以外にベース・アップ(ベア)による方法がある。昇給の特徴は、現行の賃金水準のもとで個々の労働者を対象として行われる点にある。これに対してベース・アップは、賃金水準それ自体を改定して全労働者の賃金を一斉に引き上げる方法である。労働者は、昇給のみならずベース・アップによって賃金の増額を獲得しようとするが、資本家は、賃金総額の大幅な増加をもたらすベース・アップよりは、計画的に賃金増額を進めることによって賃金総額を長期安定化できる昇給のほうに利点をみいだす。
昇給制度は、日本の年功賃金体系を支える一つの要因として第二次世界大戦前から採用されてきた。戦後、改めて賃金管理の側面からその役割が注目されるようになり、昭和20年代末から30年代前半の時期に広く普及し、大部分の企業で定着をみた。しかし、1990年代以降、国際競争が強まるなかで勤続年数に基づく昇給や毎年のベース・アップを見直す動きが高まっており、従来は定年に至るまでほとんど自動的に昇給する形をとっていたが、40歳代後半以降からはこの年功的自動昇給をストップないし減額したり、考課昇給の比重を高めて、仕事や能力に応じて格差をつけるなどの運用方法が増大している。
[横山寿一]
『加藤源九郎著『新版 賃金制度の話』(日経文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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