改訂新版 世界大百科事典 「塩分計」の意味・わかりやすい解説
塩分計 (えんぶんけい)
salinometer
海水の塩分salinityを求める測器。塩分とは海水1kg中に含まれる塩類の重量をいい,千分率‰で表す。海水は各種の無機塩類の電解質水溶液であり,その組成比はほぼ一定で,外洋水1kg中には約35gの塩類が含まれている。過去においては脱水して固形物の重量を測定したり,硝酸銀水溶液による滴定によって測定したが,近年,塩分が増加すれば電気伝導度が増大する関係を利用して塩分を求める塩分計が採用されるようになった。電気伝導度を測定するためには,海水に電極を入れ電流を流して測定する方法と,電磁誘導を利用する方法がある。電気伝導度は温度によって変化するので,いずれの方法でも一定の温度で試水と標準海水(国際的にその成分が定められており,塩分が既知の溶液)の電気伝導度の比を測定し,実験式を用いて塩分を求める。測定精度の向上にともなって,ユネスコが中心になり,実用塩分尺度practical salinity scaleを1978年に制定した。それによれば,15℃のとき,塩化カリウム水溶液32.4356g/kgと電気伝導度が等しい海水の塩分を35‰と定義している。
執筆者:平 啓介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報