外来河川(読み)がいらいかせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「外来河川」の意味・わかりやすい解説

外来河川
がいらいかせん

降水量の多い地域に水源を発して乾燥地域に流れ込む川。普通、砂漠では恒常水流がみられないが、湿潤地域に水源をもつ川は、降水がないときでも流れている。砂漠中に入ると蒸発浸透などによってしだいに流量は減少し、小さな川は砂漠中で消失して末無し川となるか、内陸塩湖に流入する。水量の豊富な川は砂漠中を貫流して海に注ぐ。外来河川沿岸地帯は灌漑(かんがい)水を容易に得られるために、流路沿いに農耕が行われている例が多い。ナイル川チグリス川ユーフラテス川などの古代文明の発祥地は外来河川の沿岸にある。そのほか、中国のタリム川、中央アジアのアムダリヤシルダリヤ、アメリカのコロラド川なども沿岸に農地がみられる。

[髙山茂美]

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改訂新版 世界大百科事典 「外来河川」の意味・わかりやすい解説

外来河川 (がいらいかせん)
exotic river

流水大部分上流の湿潤地域の降水で涵養(かんよう)されながら,乾燥地域を流れる河川。乾燥地域では,河川が形成されにくいので,合流してくる支流がないのが特徴である。また,活発な蒸発や地下への浸透のために,しだいに流量が減少し,ついには尻無川となって消滅することもある。外来河川は乾燥地域にとっては貴重で,これを水源とする灌漑農業が発達し,多数の人口を養っている例も多い。ナイル川,ティグリス・ユーフラテス川などの流域の乾燥地域では,外来河川の沿岸に文明が発達している。アメリカのコロラド川も乾燥地域の開発に寄与している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「外来河川」の意味・わかりやすい解説

外来河川
がいらいかせん

流水の大部分を上流の湿潤気候地域の降水に依存している河川。砂漠のような乾燥地域で,遠距離にある湿潤多雨地域または高山の氷雪地域からの供給によって,流水を保持し砂漠地帯を横断しているような河川をいう。ナイル川,チグリス川,ユーフラテス川など。外来河川は湿潤気候地域の河川と逆に,乾燥地域を流れる間に水面からの蒸発,河底からの漏洩によって,下流にいくに従い水量が減少する。

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世界大百科事典(旧版)内の外来河川の言及

【オアシス】より

…同じく西アジアのアンチ・レバノン山脈の東麓に,バラダー川がつくる扇状地は,シリアの首都ダマスクスが位置するほか,8000haの灌漑耕地が展開する大オアシスとして名高い。(3)外来河川ぞいのオアシス 乾燥地域の河川は一般にワーディーであるが,しかしティグリス,ユーフラテス,インダス,ナイル,コロラドなどの長大な河川は,乾燥地域外に水源をもつため,たえず豊かな水量の供給をうけ,途中で蒸発作用によって水量の一部を失いながらもかれることなく,外洋に達している。このような河川は,乾燥地域外に源を発しているところから外来河川と呼ばれるが,その沿岸地帯も外来河川に淡水をたよれるためにオアシスを形成する。…

※「外来河川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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