多元論(読み)タゲンロン

百科事典マイペディアの解説

多元論【たげんろん】

英語pluralismなどの訳。世界を複数の実在によって説明しようとする哲学上の立場。一元論に対するもので,そのうち最も明確な形をとるのが二元論である。古代原子論のような唯物論的なものも,またライプニッツモナド論のような唯心論的なものもある。

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世界大百科事典 第2版の解説

たげんろん【多元論 pluralism】

原語は,〈複数形〉を意味するラテン語pluralitasをエリウゲナが用いたことにさかのぼりうるが,哲学の用語としては,18世紀のC.ウォルフが観念論者を,思惟する単独自我のみを認める自我論者Egoistenと,複数の思惟する存在者を認める多元論者Pluralistenとに分けたことに始まり,カントにもまったく同じ用法がある。今日では,複数の実在によって世界ないし人生の全体または部分を,とくに変化・多様を顧慮して説明する立場を指し,二元論はその一種で,ともに一元論に対立する。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

多元論
たげんろん
pluralism 英語
Pluralismus ドイツ語
pluralisme フランス語

哲学的な事象の説明で、二つ以上の究極的な存在、原理、概念、方法などを考える立場や傾向の総称。唯一絶対の究極的なものを考える一元論に対する立場で、次のような分類が考えられる。〔1〕形而上(けいじじょう)学的、存在論的多元論――万物の生成を始元から説明した、ソクラテス以前のギリシアの自然学者のうち、多くの数を原理としたピタゴラス学派、地水火風の四元素を考えたエンペドクレス、多数の種子を想定したアナクサゴラスらは質的多元論者で、デモクリトスの原子論は量的多元論である。近世のデカルトの心身二元論、ライプニッツのモナド論、現代の論理的原子論も多元論の例で、多神教は宗教的多元論といえる。〔2〕認識論的多元論――主観または客観の一元論でなく、主客あるいは中間的存在としての意味などを認める立場はすべて認識論上の多元論である。〔3〕以上のほかにも、複数の道徳的基本概念を考える倫理的多元論や方法論的多元論などが考えられる。

[杖下隆英]

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精選版 日本国語大辞典の解説

たげん‐ろん【多元論】

〘名〙 複数の根源的な実在や原理を立てて、世界や宇宙を説明しようとする哲学の学説・立場。たとえば、古代ギリシアで地、水、火、風を「万物の根」としたエンペドクレスの説や、近代アメリカの哲学者ウィリアム=ジェームズのいう人間の気質の硬軟という二形式にすべての哲学説を還元する説。⇔一元論。〔普通術語辞彙(1905)〕

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世界大百科事典内の多元論の言及

【相対主義】より

…一般的な意味では,唯一絶対の視点や価値観から何ごとかを主張するのではなく,もろもろの視点や価値観の併立・共存を認め,それぞれの視点,価値観に立って複数の主張ができることを容認する立場をいう。複数主義,多元主義pluralismに近く,絶対主義absolutismや普遍主義universalismに対立する。この対立の深刻な場面は,倫理的価値,宗教的価値に最もよく現れる。…

※「多元論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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