多多ますます弁ず(読み)たたますますべんず

精選版 日本国語大辞典 「多多ますます弁ず」の意味・読み・例文・類語

たた【多多】 ますます弁(べん)

  1. 仕事が多ければ多いほど、立派にやってのける。手腕才能ゆとりがあるさまにいう。
    1. [初出の実例]「唯言目たたきする間にそっと文を出して遣るなり。いかな多踰山渡水来者にも、多々益辨也」(出典:杜詩続翠抄(1439頃)一三)
    2. [その他の文献]〔漢書‐韓信伝〕
  2. 多ければ多いほどいい。
    1. [初出の実例]「二人可し三人可しと多々益々辨(タタマスマスベン)ずる者から見れば」(出典江戸から東京へ(1921)〈矢田挿雲〉二)

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故事成語を知る辞典 「多多ますます弁ず」の解説

多々ますます弁ず

数量が多ければ多いほど、都合がよいということ。また、仕事が多ければ多いほど巧みにやってのけること。

[使用例] 大学出という人材の必要からすれば、新建設にいそがしい現在、多々ますます弁ずるというわけだが、りっぱな建物はできても教師が足りない[橘善守*招かれて見た中共|1956]

[由来] 「漢書かんしん伝」に見える、紀元前三世紀、前漢王朝の樹立に大きな功績を挙げた将軍韓信ことばから。韓信は、前漢王朝の初代皇帝、りゅうほうに対して反乱を企て、失敗して捕まってしまいました。その後、劉邦が、将軍たちの能力について、とらわれの韓信と語り合ったことがありました。劉邦が「私は、何人くらいの軍隊を束ねる将軍にふさわしかろうか」と尋ねると、韓信は「一〇万人くらいですね」と答えます。そこで、劉邦が、「では、貴公はどうなのだ」と言うと、「私のような者は『多々益々ますます弁ず(人数が多ければ多いほどやりやすいのです)』と答えた、ということです。ちなみに、劉邦がさらに「ならば、それだけの能力を持つ貴公が、どうして私に捕まってしまったのか」と尋ねたところ、韓信は、「陛下は、将軍たちを束ねる才能をお持ちです。それはいわゆる天から与えられた才能で、人間ではどうにもならないのです」と答えています。

[解説] 同じ話を載せる「史記わいいんこう伝」では、韓信のセリフは「多々益々善きのみ」となっているので、「多々益々善し」の形で使われることもあります。

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ことわざを知る辞典 「多多ますます弁ず」の解説

多多ますます弁ず

すぐれた能力で、仕事が多ければ多いほど巧みにやってのける。また、数量が多ければ多いほど都合がよい。

[使用例] 能うかぎり何事に向かっても多々益々弁じてほしいと私は思って居る[与謝野晶子*人及び女として|1916]

[解説] 漢の高祖が韓信と、将軍たちの統率できる兵力について話し合ったとき、高祖の問いに韓信が、陛下は十万人の兵を率いられる程度でしょう、と答えた。高祖が、おまえはどうだと尋ねると、韓信は「私は兵士の数が多ければ多いほどうまくやれます」と答えたという「漢書―韓信伝」にある故事によることば。「史記―淮陰侯列伝」では「多多益弁」が「多多而益善」となっており、現代中国語ではこちらをもとにした「多多益善」が用いられています。

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