日本大百科全書(ニッポニカ) 「多良木」の意味・わかりやすい解説
多良木(町)
たらぎ
熊本県南東部、球磨郡(くまぐん)にある町。1926年(大正15)町制施行。1955年(昭和30)黒肥地(くろひじ)、久米(くめ)の2村と合併。町名は鎌倉時代における一帯の荘園(しょうえん)名「多良木荘」によっている。丘陵、沖積層、段丘礫(だんきゅうれき)層からなる人吉(ひとよし)盆地を挟んで、北に九州山地北部、南に九州山地南部にそれぞれ属する山岳地からなる。盆地地区は相良(さがら)氏によって涵養(かんよう)されたいわゆる球磨文化の発祥地であるだけでなく、現在も中球磨地方の穀倉地帯であると同時に、行政・教育・交通の要地でもある。くま川鉄道、国道219号が通じる。他方、町域の3分の2を超す山林にはアカマツ、ヒノキ、スギなどの良材のほか、モミ、ツガ、ブナなどの天然林相も随所にみられ、一部は奥球磨県立自然公園となっている。1975年に導入されたプリンスメロン栽培は、盆地特有の昼夜の温度差が糖度を高めることにつながり、いまや伝統的な基幹作物(タバコなど)をしのぐ勢いで伸張しており、作付面積は県下有数。また、繊維、電子部品などの工場進出もみられ、球磨地方での中心性は高まりつつある。青蓮寺(しょうれんじ)阿弥陀堂(あみだどう)、太田家住宅(ともに国指定重要文化財)は当町の豊かな文化財のなかでもことに有名である。面積165.86平方キロメートル、人口9076(2020)。
[山口守人]