岩手県南東部、陸中(りくちゅう)海岸の大船渡湾に臨む市。1952年(昭和27)気仙(けせん)郡盛(さかり)、大船渡の2町と日頃市(ひころいち)、立根(たっこん)、猪川(いなかわ)、赤崎、末崎(まっさき)の5村が合併して市制施行。2001年(平成13)三陸町(さんりくちょう)を編入。JR大船渡線BRT(バス高速輸送システム)、三陸鉄道リアス線、国道45号、107号、三陸沿岸道路が通じる。湾入の深い大船渡湾に注ぐ盛川の河口に平坦(へいたん)地が開け、市街地は西部湾岸に沿って長く延びている。町域は古くから盛六郷の中心として栄えた商業、行政の中心地の盛地区と、港湾を背景とする大船渡地区および旧三陸町地区に分けられる。1953年からの北上川流域特定地域の開発で臨海工業造成地区となり、盛川沿岸の埋立地には小野田セメント(現、太平洋セメント)大船渡工場や木材工業団地が造成され、また魚市場を中心に冷凍、缶詰(かんづめ)工場などが立地し、漁業基地としても重要。三陸復興国立公園(旧、陸中海岸国立公園)の南の玄関口でもあり、碁石海岸(ごいしかいがん)(国指定名勝・天然記念物)、珊琥島(さんごじま)(国指定名勝)などの景勝地、ツツジやシャクナゲの群生地として知られる五葉山(ごようざん)県立自然公園、縄文時代の生活文化をいまに伝える蛸ノ浦貝塚(たこのうらかいづか)、下船渡貝塚、大洞貝塚(おおぼらかいづか)(ともに国指定史跡)、日本最古の地層といわれる樋口沢ゴトランド紀化石産地(国指定天然記念物)などがある。面積322.51平方キロメートル(一部境界未定)、人口3万4728(2020)。
[川本忠平]
〔東日本大震災〕2011年の東日本大震災では8メートル以上の津波が市街を襲い、死者422人・行方不明79人、住家全壊2791棟・半壊1147棟を数えた(消防庁災害対策本部「平成23年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について(第159報)」平成31年3月8日)。2018年3月時点で、基幹産業の水産加工業では冷凍冷蔵施設の復興などは進みつつあるが、漁獲量の減少など新たな問題も生じている。また、市は防災集団移転促進事業などの復興対策事業に取り組んでいる。
[編集部 2019年9月17日]
『『チリ地震津波1960――大船渡災害誌』(1962・大船渡市)』
岩手県南東部の市。2001年11月旧大船渡市が三陸(さんりく)町を編入して成立した。人口4万0737(2010)。2011年3月の東日本大震災では,死者行方不明461人,全壊住宅3630戸にのぼった。
大船渡市西部の旧市。大船渡湾に臨む。1952年に大船渡,盛(さかり)の2町と,末崎,赤崎,猪川,立根(たつこん),日頃市の5村が合体して市制。人口3万6570(2000)。市街地は細長く入り込んだ大船渡湾および盛川西岸に沿って立地する。後背地には約40億tと推定される石灰岩・蛇紋岩を有し,1934年の大船渡線開通直後に,東岸の赤崎に小野田セメント(現,太平洋セメント)大船渡工場が誘致された。窯業・土石製品工業の製造品出荷額は市の工業の5割以上(1995)を占めている。60年に1万t岸壁が完成し,これと接続して盛川筋の埋立てによって木工関連工場などが立地,さらに西岸には漁港・魚市場を中心に冷凍・加工諸施設が整備され,漁業基地としても重要な地位を占める。60年のチリ地震津波によって大被害をうけたが,その後,臨海工業都市として復興している。陸中海岸国立公園の南玄関口にあたり,末崎半島の碁石海岸や桃山時代の建築美を残す日頃市の長安寺などがあり,県立自然公園五葉山とともに観光客が多い。JR大船渡線が通り,盛は三陸鉄道南リアス線の起点となる。
執筆者:川本 忠平
大船渡市東部の旧町。旧気仙(けせん)郡所属。1956年綾里(りようり),越喜来(おつきらい),吉浜(よしはま)の3村が合体して三陸村となり,67年町制。人口8590(2000)。三陸海岸の綾里湾,越喜来湾,吉浜湾に臨み,北は釜石市,西は旧大船渡市に接する。北上高地の支脈が海岸までのび,海岸線は典型的なリアス海岸をなす。水産業が主産業で,ホタテガイ,ホヤ,ワカメの養殖,ブリ定置網漁業などが行われ,吉浜(きつぴん)アワビはよく知られる。木材,シイタケなどの生産も多い。気象庁気象ロケット観測所(2001年廃止),宇宙科学研究所三陸大気球観測所(07年廃止),東北大学三陸地殻変動観測所(現,三陸地震観測所),北里大学水産学部(現,海洋生命科学部)などの研究施設が開設され,〈科学の町〉として発展した。海岸部は陸中海岸国立公園に指定され,三陸鉄道南リアス線,国道45号線が通る。
執筆者:松橋 公治
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