三陸海岸
さんりくかいがん
青森県八戸(はちのへ)市鮫角(さめかど)から宮城県牡鹿(おしか)半島に至る海岸線。約600キロメートルの長大な海岸で、陸奥(むつ)、陸中(りくちゅう)、陸前の3国にまたがることから三陸海岸とよばれる。北上(きたかみ)高地東縁が弓なりに太平洋に張り出した海岸で、宮古市(みやこし)を境に北は隆起海岸で海成段丘が発達し、断崖(だんがい)、絶壁が多く、その間隙(かんげき)を縫うように峡谷をつくりながら注ぐ河川の河口に小漁港が点在する。これと対照的に宮古以南は沈降海岸で多くの湾入と岬とが交互に連続し、天然の良港に恵まれている。海岸は三陸復興国立公園(旧、陸中海岸国立公園および旧、南三陸金華山国定公園)に指定されている。
沖合いはクジラ、マグロ、カジキ、カツオ、サンマ、イカ、イワシなどの好漁場であり、沿岸はアワビ、ワカメ、ウニなどの養殖が盛んで、宮古、釜石(かまいし)、気仙沼(けせんぬま)、女川(おながわ)などは全国屈指の水揚高を誇る漁港である。また、釜石市の製鉄、宮古市の工業薬品や石膏(せっこう)、大船渡(おおふなと)市のセメントなど臨海工業の集積がみられる。三陸鉄道(1984年営業開始)リアス線が通じる。また鉄道に並行して国道45号が走っている。
当地域は何度も地震による大津波の被害を受けてきた。1960年(昭和35)のチリ地震津波以降、防潮堤を築くなどの防災対策がとられてきたが、2011年(平成23)の東日本大震災における被害は甚大であった。現在は防潮堤に加え、住民の高台移転、現地嵩(かさ)上げなどの対策がとられている。
[川本忠平]
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さんりく‐かいがん【三陸海岸】
東北地方北東部、太平洋に面する海岸。八戸市東部の鮫角
(さめかど)から牡鹿半島南端の金華山まで。宮古以北は隆起海岸、以南はリアス海岸。
古来、大きな地震のたびに津波の被害が発生。大部分は
陸中海岸国立公園に含まれる。
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さんりくかいがん【三陸海岸】
北は八戸市東部の鮫崎(さめざき)から岩手県の陸中海岸を経て,牡鹿半島南端の金華山に至る長大な海岸。陸奥,陸中,陸前の3ヵ国にまたがることから三陸海岸と呼ばれ,大部分は岩手県に属する。地形的には宮古湾以北が隆起海岸で最高200mをこえる海岸段丘が発達し,豪壮な断崖と岩礁風景が連続する。これと対照的に宮古以南は沈降海岸を示すリアス式海岸で,数多くの湾と岬が交互に連続し,沖合漁業の根拠地となっている。地質的には北上山地と類似する砂岩,粘板岩などの古生層に花コウ岩,石英粗面岩などが貫入している。
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世界大百科事典内の三陸海岸の言及
【岩手[県]】より
…さらに東北自動車道が86年青森市まで全通,97年秋田自動車道も全通して,〈中央に遠い北国〉という古くからの課題が,ようやく克服されてきた。
[ダムと米と畜産]
岩手県は,北上川縦谷盆地(北上盆地)とそれをはさむ奥羽山脈,北上高地の3条の巨大な地形によって特色づけられ,東縁は三陸海岸線となっている。南流する北上川は一関市の南,狐禅寺付近で北上高地を横切るとき,宮城県域も含めて約25kmに及ぶ峡谷を形成している。…
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