投資家が株式等の5%を超えて保有した場合、金融商品取引法(金商法)の「5%ルール」に基づき、内閣総理大臣に提出が義務づけられている報告書。同報告書は金融商品取引所にも送付され、それぞれ受理・送付を受けた日から5年間、公衆の縦覧に供さなければならない。大量保有報告書は、金商法第27条の23で定められているものである。
大量保有報告書の前提ともなる5%ルールは、市場の公平性・透明性を高め投資家保護を徹底するため、株式等(株券、投資証券等、新株予約権証券など)を大量に取得、保有、処分した際に、その旨を開示するもので、1990年(平成2)の証券取引法(現在の金商法)改正により日本で導入された制度である。投資家が対象企業の発行済株式数の5%を超えて保有した場合などに報告義務が生じる。保有者か否かの判断は、株主名簿の記載とは関係なく、実質的に保有しているかどうかが問われる。報告書に記載する内容は、提出者(株式等の保有者)の概要、保有目的、最近60日間の取得または処分の状況、保有株券等の取得資金など、精緻(せいち)なものとなっている。
また、大量保有報告書の提出後に保有割合が1%以上増減した場合には、そのつど変更報告書を提出しなければならない(ただし、5%を下回った場合は、その旨の変更報告書を提出すれば、ふたたび5%を超えるまで報告書の提出義務はない)。変更報告書には、たとえば株式等を処分した場合には、譲渡先やその値段を記載する必要がある。大量保有報告書や変更報告書は、その事由が発生した日から5営業日以内の提出が求められているが、証券会社や銀行などはそもそも株券等の売買を事業とし、報告書提出に関する事務手続が煩雑となるため、一定の要件を満たせば基準日時点における報告でよいことになっている。
なお、大量保有報告書や変更報告書の提出に際しては、2007年(平成19)4月以降、開示用電子情報処理組織(EDINET(エディネット):Electronic Disclosure for Investors' NETwork)の使用が義務づけられており、インターネットで提出しなければならない(書面での提出は認められない)。ちなみに、EDINETは「金商法」に基づく電子開示システムであり、報告書の直接的な提出先は、大量保有者の所在地(法人の場合)や住所(個人の場合)を管轄する財務局(非居住者の場合は関東財務局)となる。EDINETの利用には、事前に届出書を提出し、システム利用のためのIDとパスワードを取得する必要がある。
さらに、2008年に施行された金商法改正に伴い、課徴金制度が導入された。課徴金の対象となるのは、(1)大量保有報告書や大量保有変更報告書が提出期限までに提出されなかった場合、(2)これらの報告書に虚偽記載がある場合、(3)記載すべき重要事項が未記載の場合、である。課徴金の額は、報告対象となった株券等の時価総額の10万分の1となっている。
こうした制度上の整備の進捗(しんちょく)は、規制緩和や国際化の進展に伴い日本においてもM&A(合併・買収)が活発に行える環境になったことを考慮すると、投資家への適切な情報開示(ディスクロージャー)を通じて情報の非対称性を解消する効果が期待される。
[高橋 元 2021年12月14日]
『根本敏光著『大量保有報告制度の実務』(2009・商事法務)』
出典 株式公開支援専門会社(株)イーコンサルタント株式公開用語辞典について 情報
出典 M&A OnlineM&A用語集について 情報
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