天の邪鬼(読み)アマノジャク

デジタル大辞泉 「天の邪鬼」の意味・読み・例文・類語

あま‐の‐じゃく【天の邪鬼】

2原義
わざと人に逆らう言動をする人。つむじまがり。ひねくれ者。
民間説話に出てくる悪い鬼。物まねがうまく、他人の心を探るのに長じる。あまんじゃく。
毘沙門天びしゃもんてんよろいの腹の辺りにある鬼の面。また仏像で、仁王などの仏法守護神に踏みつけられている小鬼。
[類語]へそ曲がり偏屈気むずかしいつむじ曲がり捻くれ者拗ね者

あま‐の‐じゃこ【天の邪鬼】

あまのじゃく」に同じ。
「―重きに耐へし我が身も音をこそ泣かめ人は恨みじ」〈仮・仁勢物語・下〉

あま‐の‐ざこ【天の鬼】

あまのじゃく」に同じ。〈日葡

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精選版 日本国語大辞典 「天の邪鬼」の意味・読み・例文・類語

あま‐の‐じゃく【天邪鬼】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 民話などに悪役として登場する鬼。天探女(あまのさぐめ)に由来するといわれるが、瓜子姫(うりこひめ)の話に見えるものなど変形は多い。あまのざこ。あまのじゃき。あまのじゃこ。あまんじゃく。〔俗語考(1841)〕
  3. ( 形動 ) 何事でも人の意にさからった行動ばかりをすること。また、そのようなさまやそのような人。ひねくれ者。つむじまがり。
    1. [初出の実例]「人のなせそといふことを、別而好まるるは、天(アマ)のじゃくの氏子にはなきかとおほさる」(出典:評判記・赤烏帽子(1663)中村蔵人)
  4. 仏像で、仁王や四天王の足下に踏みつけられている小悪鬼。また、毘沙門(びしゃもん)の鎧の腹についている鬼面の名。
    1. 天<a href=邪鬼〈多聞天像部分 西大寺蔵〉" />
      天邪鬼〈多聞天像部分 西大寺蔵〉
    2. [初出の実例]「毘沙門の鎧の前に鬼面あり。其名如何 常には是を河伯面と云。〈略〉或書に云。河伯面、是を海若(アマノジャク)と云」(出典:壒嚢鈔(1445‐46)一〇)

あま‐の‐じゃこ【天邪鬼】

  1. 〘 名詞 〙あまのじゃく(天邪鬼)
    1. [初出の実例]「月の前(まへ)にさし出る雲やあまのじゃこ〈信相〉」(出典:俳諧・鷹筑波(1638)二)

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改訂新版 世界大百科事典 「天の邪鬼」の意味・わかりやすい解説

天邪鬼 (あまのじゃく)

アマノザク,アマンジャクメ,アマノサグメなどとも称され,漢字は天邪鬼を当てている。昔話瓜子姫を代表として,民間説話に多く登場する想像上の妖怪。現在も,性質が素直ではなく,人に逆らう者を称して通常用いられる。天邪鬼は神や人に反抗して意地が悪く,さらに人の心中を探り,その姿や口真似を得意とするところに特徴があり,最後には滅ぼされるという悪者典型を示す。主人公である神の正しさと勝利をよりきわだたせる脇役として設定され,結果的には善と悪二つを対照させる効果をあげている。また天邪鬼は山中にある妖怪の一つとも考えられている。たとえば栃木県や富山県,岐阜県などでは山姥(やまうば)をいい,秋田県,茨城県,群馬県,静岡県などでは口真似をするというところからこだまをアマノシャグ,アマンジャクと呼んでいる。さらに神話に登場する天探女(あめのさぐめ)も天邪鬼と共通性があると認められる。
邪鬼(じゃき)
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百科事典マイペディア 「天の邪鬼」の意味・わかりやすい解説

天邪鬼【あまのじゃく】

民話の怪物。あまのざく,あまんじゃめなどとも。他人の姿や口まね,物まねをして人に逆らい,ついには滅ぼされる。瓜子(うりこ)姫の話に出てくる天邪鬼は典型的。古代の被征服民を典型化したものという。東北地方では山姥(やまうば)や鬼といい,山彦(やまびこ)の名とする所もある。日本神話の天探女(あまのさぐめ)に由来するともいい,仏教では毘沙門天(びしゃもんてん)の腹部にある鬼面を海若(あまのじゃく)と呼んだが,後にはその足下に踏まえた2鬼をいう。今日でも,わざと他人に逆らう者をさす言葉。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「天の邪鬼」の解説

天邪鬼 あまのじゃく

民間説話に登場する妖怪(ようかい)。
人の心中をさぐることがたくみで,口まね,物まねを得意とするが,人や神にさからい,最後にはほろぼされる。「瓜子(うりこ)姫」などの民話に登場。仏教では,毘沙門天(びしゃもんてん)の腹部にある鬼の面や,四天王,仁王にふまれる小悪鬼をいう。山姥(やまうば)や谺(こだま)をさす地方もある。別称にあまのじゃこ,あまのざく,あまのさぐめ。

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世界大百科事典(旧版)内の天の邪鬼の言及

【邪鬼】より

…祟りをする神,物の怪(もののけ)などを総称していうが,仏像に関しては仁王像や四天王像の足の下に踏まれている小型の鬼類をさす。毘沙門天(四天王の多聞天)の足下にいる鬼を特に天邪鬼(あまのじやく)と呼ぶという説がある。〈天邪鬼〉は毘沙門天像の鎧に付けられた鬼面の名称であることが室町時代の《壒囊鈔(あいのうしよう)》に記されており,当初は鬼面の名称であったが後に足下の鬼をも意味するようになったと考えられる。…

【山彦】より

… 山彦の現象は,自然現象ではなく,山谷に人以外の者がいてそれが人の声をまねしているのだと考えられていた。茨城では〈あまのじゃく(天邪鬼)〉がまねをするのだといい,静岡では〈山の小僧〉,鳥取では呼子(よぶこ)とか呼子鳥(よぶこどり)というものが声を発しているのだと伝えている。あまのじゃくは人に逆らい,神に反抗する存在であるが,山中にあって人の口まねをするものもこう呼んだのである。…

※「天の邪鬼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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