天野八郎(読み)あまの・はちろう

朝日日本歴史人物事典 「天野八郎」の解説

天野八郎

没年:明治1.11.8(1868.12.21)
生年天保2(1831)
幕末の佐幕派志士,彰義隊士。上野甘楽郡(群馬県多野郡,富岡市)の農家の次男に生まれ,村民間の係争を解決するなどして声望を得る。文久1(1861)年武士を志して江戸へ赴く。明治1(1868)年1月鳥羽・伏見の戦に敗れ徳川慶喜が江戸帰還,再挙を図る旧幕臣会合がありこれに参加。渋沢成一郎頭取のもと副頭取となる。本営を浅草から上野に移し,隊名を彰義隊とし,総勢2000を号した。内部対立により渋沢が脱走し,隊の実権を掌握して新政府軍と対峙。5月15日新政府軍の一斉攻撃を受け敗走。7月逮捕され下獄,病を得て没す。遺骸小塚原に埋められ,明治23年南千住円通寺に改葬された。田辺太一の寄せた碑文に次のようにある。「君人と為り短小豊肥,眼光炯々人を射る。議論風発慷慨の気眉目の間に露はる。……侠たり義たり,惟斯君有り。嗚呼千載の下,永く阪東の男子をして涙痕を留めしむるは,此三尺の墳か」。<参考文献>山崎有信『幕末史譚天野八郎伝』

(井上勲)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「天野八郎」の意味・わかりやすい解説

天野八郎 (あまのはちろう)
生没年:1831-68(天保2-明治1)

彰義隊副頭取。上野国甘楽郡磐戸村の名主大井田吉五郎忠恕の次男。江戸に出て旗本天野氏を名のる。1868年(明治1)官軍東征が始まるや,徳川氏の受けた朝敵の汚名をそそごうと幕臣たちを集め,彰義隊を組織して副頭取となる。前将軍徳川慶喜などの説得にも応ぜず,上野寛永寺を本拠として官軍に抵抗。敗軍後市中に潜伏して再挙をはかるが,捕らえられて獄死した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天野八郎」の意味・わかりやすい解説

天野八郎
あまのはちろう
(1831―1868)

幕末の彰義隊副頭取。上野(こうずけ)国(群馬県)甘楽(かんら)郡磐戸(いわと)村で生まれる。1865年(慶応1)江戸定火消与力(じょうびけしよりき)広浜氏の養子となり、翌1866年幕臣天野氏を継いだ。1868年2月彰義隊を結成、一橋(ひとつばし)家の臣渋沢喜作(成一郎)を頭取とし、自らは副頭取となった。上野寛永寺を本拠とし、輪王寺宮を擁して徳川家の再興を図る。渋沢が脱してから実権を握った。5月官軍の攻撃に敗れて音羽(おとわ)護国寺に逃れ、市内潜伏中7月13日捕らえられ獄中に病死した。享年38。遺骸(いがい)は小塚原(こづかっぱら)に埋葬され、のち東京都荒川区南千住の円通寺に改葬された。

[小島政孝]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「天野八郎」の解説

天野八郎
あまのはちろう

1831~68.11.8

戊辰戦争時の彰義隊の副隊長。上野国甘楽(かんら)郡磐戸村庄屋大井田忠恕(ただよし)の次男。のち旗本天野氏を称し,徳川慶喜(よしのぶ)の辞官納地を憤り,幕臣を組織して彰義隊を結成,副頭取となる。慶喜の説得に応じず,上野寛永寺にこもって官軍と戦い敗走。江戸市中に潜伏するが密告により捕らえられ,獄中で病死。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「天野八郎」の解説

天野八郎 あまの-はちろう

1831-1868 幕末の武士。
天保(てんぽう)2年生まれ。慶応4年彰義隊を組織し,副頭取となる。江戸上野寛永寺にたてこもり,新政府軍とたたかったが敗れ,潜伏中に捕らえられ明治元年11月8日獄中で病死した。38歳。上野(こうずけ)(群馬県)出身。本姓は大井田。名は忠告。号は斃止。著作に「斃休録」。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「天野八郎」の意味・わかりやすい解説

天野八郎
あまのはちろう

[生]天保2(1831).上野,磐戸
[没]明治1(1868).江戸
江戸時代末期の幕臣。彰義隊副長。大政奉還に強く反対。徹底抗戦後捕えられ獄死。

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