出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
青森県東部を流れる川。延長67キロメートル。十和田湖の東岸子ノ口(ねのくち)から流出し、北流、東流して上北(かみきた)郡おいらせ町で太平洋に注ぐ。子ノ口から蔦(つた)川との合流点の焼山(やけやま)までの14キロメートルを奥入瀬渓流とよび、十和田八幡平(はちまんたい)国立公園の重要な要素の一つとなっている。渓谷にはトチノキ、サワグルミ、カツラなどの河畔林がみられ、渓流から離れるにつれブナ、ホオノキ、オオバクロモジなどブナ林の構成種が混生する。流水による影響を強く受ける河畔の中州や合流地点にはケヤマハンノキ林、ドウノキ林、オノエヤナギ林が発達している。渓流は途中に滝をつくるなど流れも変化に富み、とくに新緑、紅葉の季節は圧巻である。観光バスが通じるほか、遊歩道も完備している。焼山からは三本木台地を刻みながら東流するが、1855年(安政2)南部藩士新渡戸伝(にとべつとう)(稲造の祖父)は、不毛の地である三本木原開拓に着手した。難工事のすえ、1859年に奥入瀬川の水を引き入れることに成功し、これが台地の水田化の契機となった。
[横山 弘]
青森県南東部,十和田湖の東岸子ノ口(ねのくち)に源を発して北流し,焼山付近から東に流れを変え,三本木原台地をきざみながら太平洋に出る川。下流部では相坂(おおさか)川と呼ばれる。幹川流路延長67km,全流域面積820km2。子ノ口から焼山付近までが渓流となり,ブナ,カエデなどの原生林をうつしながら,途中に銚子大滝のほか雲井,双竜などの滝をなして渓流美をつくりだしている。十和田湖とともに特別名勝・天然記念物に指定され,新緑,紅葉のころはとくに観光客を楽しませる。遊歩道も通じている。渓流の水は発電用水としても利用され,上流でとり入れた水で焼山の発電所を動かしている。中流部では灌漑用水として三本木原の耕地をうるおしている。この用水路は1855年(安政2)南部藩士新渡戸伝(にとべつとう)・十次郎父子によって開かれた。またサケの上る川で,十和田市相坂に孵化(ふか)場がある。
執筆者:横山 弘
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