江戸時代,文書や帳簿の記載が正しいことを証明するために,ふつう作成者よりも上位の者・機関によって文書・帳簿の末尾に押される印。奥判とも言い,多くの場合,証明文言(奥書)を伴う。機能から言えば,古く戦国期以前の紛失状・売券その他にみられる証判・与判につながる性格を持つが,幕府法令などによって奥印の形式が制度的に整えられてくるのは,享保期(1716-36)ごろと考えられる。たとえば年貢,諸役,村入用の帳面には早くから惣百姓・村役人の連印が義務づけられていたが,1740年(元文5)の幕令は,惣百姓連印のうえで名主・組頭が奥判をするよう命じている。江戸町方の場合も,沽券状,遺言状への名主加判令は早いが,訴訟・請願文書に名主が奥印すべき旨の町触が出たのは1721年であった。また幕府勘定所などの帳簿にあっても,享保期以降,老中奥印などの形式が詳細に確定している。なお,奥印と同じ機能をもつものに,文書の裏に押される裏判がある。
執筆者:安藤 正人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
奥判とも。証文や諸願届書などに記載された内容に誤りがないことを証明するため奥書に押す印。裏に押した場合は裏印という。江戸時代,百姓・町人が土地売買証文・戸籍書類・訴状・諸願届などを提出する際には,記載が事実であることや内容の効力を保証するため,庄屋(名主)・町年寄などの奥印が必要であった。村方では庄屋が奥書や加印をした諸証文などを写し,後日の備えに奥印帳・裏印帳を作成することが一般的に行われた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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