村入用(読み)ムラニュウヨウ

デジタル大辞泉 「村入用」の意味・読み・例文・類語

むら‐にゅうよう〔‐ニフヨウ〕【村入用】

江戸時代村役人給料、紙・墨・筆代などの事務経費、道・橋・用水の普請費用など、村の運営上必要とする諸経費村民高割り軒割りで割り当て徴収された。

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精選版 日本国語大辞典 「村入用」の意味・読み・例文・類語

むら‐にゅうよう‥ニフヨウ【村入用】

  1. 〘 名詞 〙 村で必要とする経費。特に、江戸時代の村費をいう。村民の持高や家の大きさに割当てて徴収し、村役人の給料、道・橋の修造および用水費、役場諸入用などに当てる。
    1. [初出の実例]「百姓不得心の条決して割かけず、少も村入用減ずべき様申合せ、心を付て評議の上、止事なき品は此帳面にしるし置」(出典:地方凡例録(1794)五)

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改訂新版 世界大百科事典 「村入用」の意味・わかりやすい解説

村入用 (むらにゅうよう)

〈むらいりよう〉とも読み,小入用(こにゆうよう),夫銭(ぶせん),入箇(いりか)などともいう。近世農民が村を通じて賦課された,年貢以外の農民負担である。村入用の内容は村入用帳などと呼ばれる帳簿に記されており,村によってさまざまであるが,大きく三つに分けられる。(1)領主夫役(ぶやく)の系譜をひく諸賦課(助郷(すけごう)役を含む)。(2)年貢納入関係の費用。これも夫役の貨幣化したものと考えられる。(3)村を維持・運営するための諸費用で,村役人給,村役人出張経費,会合費,筆墨紙油蠟燭などの村政諸経費,村内水利土木普請費,治安費,祭礼・宗教関係費,村借り年賦支払など種々の費目があげられる。(1)(2)は近世初頭の村切によって設定された村が,第一義的に年貢(諸役)村請(むらうけ)のための行政単位であったことを反映している。(3)はその村が構成員である小農民の生活と生産のための共同組織でもあったことを示しており,村用と御用両者にかかわるものが多い。(1)(2)を広義の村入用とすれば,(3)は狭義の村入用といえる。

 (1)や(2),あるいは(3)の一部は別に帳簿が作られることもある。村入用帳はおおむね村の支出費目と金額,そして総額と村民への割付けを記した,いわば決算書である。この帳簿は17世紀中葉以降の領主側の政策によって提出用に作成されたが,それは村役人(庄屋名主)の専断的な算用のあり方を批判する小農民の運動が背景にあり,18世紀以降,帳簿の作成がほぼ定着する。しかし村入用をめぐる争いは近世を通じて絶えることがなく,それは村落構造の変化とかかわっていた。争点の一つに割付方法があった。通常,村入用は持高割を原則としていたが,土地を所有しない村民が村内に構成員として定着する時期(17世紀末~18世紀前期)には軒割(のきわり)や人別割(にんべつわり),さらに地域によりさまざまな方法が併用される場合があった。費目により割付方法が異なる場合もあった。18世紀前期,幕府試算では狭義の村入用額は村高100石につき永(えい)1500文(銭6000文)であり,実際の村入用額よりかなり低く見積もられていた。村入用の増加は農民の疲弊をもたらしかねないので,近世後期には領主側はたびたびその節減を命じた。また村内部でも中・下層民を中心に村政改革が要求され,そのなかで倹約が申し合わされ,プリミティブな形での予算制度を準備する場合もあった。しかし,組合入用など一部費目の増大と新たな費目の増加,さらには割付方法をめぐる対立など,もはや村レベルでは解決され難い問題を抱えて,村入用は近代に至るのである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「村入用」の意味・わかりやすい解説

村入用
むらにゅうよう

江戸時代、村政の運営や領主支配の末端行政に必要な諸経費。その諸経費の内容は地域によって違いがあるが、一般的には村役人の給料や出府費用、定夫(じょうふ)給料、寄合(よりあい)費用、筆墨紙(ひつぼくかみ)代、自普請(じふしん)入用、代官への進物(しんもつ)代、巡見使・代官の廻村(かいそん)費用、飛脚(ひきゃく)代、高札(こうさつ)書替え入用、寺社の勧化(かんげ)代、旅僧・虚無僧(こむそう)の宿泊代などである。1年間に支出された村入用の村民への割賦(わっぷ)は、農民の所持石高(こくだか)割や戸数割によって賦課された。その村入用の割賦をめぐっては、村内でしばしば問題となり、いわゆる村方騒動の原因となった。そうしたことから村入用帳を毎年二冊作成し、それを支配役所へ持って行って押切(おしきり)印(割印)を受け、その二冊の帳面に村入用を記し、ふたたび支配役所へ行って改めを受け、不審の事がなければ一冊は村へ返され、一冊は役所で保管された。

[川鍋定男]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「村入用」の解説

村入用
むらいりよう

「むらにゅうよう」とも。江戸時代,村民が村を通じて賦課された年貢以外の負担。年貢納入・助郷役・国役・河川普請など領主支配にかかわる費用と,村内の道橋普請・筆紙墨・寄合・祭礼など村民の生産・生活にかかわる費用にあてられた。村民への賦課方法は石高に応じる高割(たかわり)が多いが,家割・人別割・段別割なども行われた。村役人が1年ごとに村入用帳を作成し,費用の支出については村民による監査が行われたが,支出内容をめぐって村方騒動がおこることも多かった。


村入用
むらにゅうよう

村入用(むらいりよう)

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世界大百科事典(旧版)内の村入用の言及

【村入用】より

…近世の農民が村を通じて賦課された,年貢以外の農民負担である。村入用の内容は村入用帳などと呼ばれる帳簿に記されており,村によってさまざまであるが,大きく三つに分けられる。(1)領主夫役(ぶやく)の系譜をひく諸賦課(助郷(すけごう)役を含む)。…

【名主】より

… 近世初期の名主は,身分は百姓であったが,中世末以来の在地有力者が多く,戦国大名の家臣だった者も少なくない。したがって初期の名主は村民に対してかって気ままな振舞いをすることがあり,初期村方騒動の中には,名主の年貢・村入用不正や村民に対する私的夫役(ぶやく)を原因としたものが多い。しかし名主の私的権力は領主によっても規制されたので,その力は時とともに衰え,しだいに村の新しい有力者が選ばれて名主になった。…

【百姓代】より

…村方三役の一つである名主(庄屋,肝煎)は近世の村体制成立とともに置かれ,名主を補佐する組頭もそれとほぼ同時期に設置されたが,百姓代の成立はそれらよりかなり遅く,中期以降一般化した。百姓代は,村の百姓を代表して名主・組頭の職務執行を監視するものとされ,名主・組頭による年貢・村入用(むらにゆうよう)の割当て不正をめぐる村方騒動などを契機に成立したものが少なくないようである。一村に1~2名程度で,組頭より少ないのが普通である。…

【村方三役】より

…いずれの場合も領主の許可が必要であった。村入用の中から若干の給米を受けるのがふつうである。(2)組頭は名主・庄屋に次ぐ有力農民で,複数が選ばれた。…

※「村入用」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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