真名(読み)マナ

デジタル大辞泉 「真名」の意味・読み・例文・類語

ま‐な【真名/真字】

仮名に対してまことの字の意》漢字。まんな。
「俗に稗史よみほんと呼ならわせし―まじりの半紙本は」〈逍遥小説神髄
漢字の楷書
さうにも―にも、さまざまめづらしきさまに書きまぜ給へり」〈・葵〉
(真名)まことの名。本当の名。
[類語](1漢字本字国字親字簡体字俗字文字文字もんじ鳥跡ちょうせき鳥の跡用字表記点画てんかくレター邦字ローマ字アルファベットハングル梵字ぼんじ大文字小文字頭文字イニシャル英字数字仮名片仮名平仮名万葉仮名字母表音文字表意文字音字意字象形文字楔形くさびがた文字甲骨文

まん‐な【真名/字】

まな」の撥音添加。
「―のすすみたる程に、仮名はしどけなき文字こそまじるめれ」〈梅枝

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精選版 日本国語大辞典 「真名」の意味・読み・例文・類語

ま‐な【真名・真字】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 仮名(かな)に対して、正式の文字の意 ) 漢字。まんな。
    1. [初出の実例]「いみじう、まなも仮名(かんな)もあしう書くを」(出典:枕草子(10C終)一〇三)
  3. 漢字の楷書。
    1. [初出の実例]「さうにもまなにも、さまざまめづらしきさまに、書きまぜ給へり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)
  4. ( 真名 ) まことの名。実名。

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改訂新版 世界大百科事典 「真名」の意味・わかりやすい解説

真名 (まな)

真字〉とも書き,日本仮名(仮字)に対して漢字をさす。〈本字(ほんじ)〉というに近い。仮名が発生する以前は,漢字が唯一の社会通用の文字であったので,特に真名(真字)の称を必要としなかった。しかし漢字による日本語表記の補助として発生した仮名が漢文訓読の世界から独立するとともに,漢字の万葉仮名的用法(つまり表音的用法)を襲って表音的な文字使用を主とする仮名文を生じる時代(平安前期)になると,日本語表記の文字組織は,両者併存しながら互いに対峙する2系列をなし,両者の自由な混合の度合によって語や文の表記は種々の段階をみせることになる。こうして,漢字本来の表意性が仮名の表音性に対していっそう際だち,真名は本来の文字としてその特色を発揮するにいたった。平安後期からは,仮名文学を漢字専用の変体漢文風の表記で書き変えて,語については表意性の強い表記へ転移させ,仮名文を漢文を基準とする体制に従わせることも行われた。たとえば《真名本伊勢物語》,おくれては《徒然草真字解》《古今集真字解》。またものによっては仮名本と並行して《真名本方丈記》《真名本平家物語》などがつくられた。その意味で〈真名〉は,単に漢字という称呼とは異なる雰囲気をもつ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「真名」の意味・わかりやすい解説

真名
まな

漢字の音・訓を仮借(かしゃ)した仮名(万葉仮名、平仮名、片仮名)に対して、漢字そのものをいう。「ま」は真正、「な」は文字の意で、まんな、本字ともいう。仮名または仮名交じり文で書かれた仮名本に対して、同一内容を漢字だけで書いたもの、つまり漢文体のものを真名本とよび、『真名本伊勢(いせ)物語』『真名本平家物語』などが有名である。また、草書行書に対する、漢字の楷書(かいしょ)を意味することもある。

[沖森卓也]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「真名」の意味・わかりやすい解説

真名
まな

日本においてかなに対して漢字を呼ぶ名称。非公式の私的なものという意味のかな (カリナ→カナ) に対して,本来の正式の文字という意味であり,真字 (まな) ,本字 (ほんじ) ,男手 (おとこで) ともいう。この真名 (漢字) を意義とは無関係にかなとして用いたものは真仮名という。

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世界大百科事典(旧版)内の真名の言及

【仮名】より

…日本には古来文字がなかったので,漢字が最初の文字であった。したがって漢字を真名(まな)(ほんとうの文字の意)とよび,真名を省略するか,草書化して作り出した簡略な文字を〈仮り名(かりな)〉とよんだ。その音便形が〈かんな〉で,それのつまった形が〈かな〉である。…

【書体】より

… 平仮名は,日本語を表記するのに漢字の音を使用して,一字一音とする表音文字として作られた。漢字を真名ということから,この名がある。奈良時代は楷書にほぼ近い形で使用され,これを男手(おとこで),真仮名と称した。…

※「真名」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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