妊娠とわかったら(読み)にんしんとわかったら

家庭医学館 「妊娠とわかったら」の解説

にんしんとわかったら【妊娠とわかったら】

 まず、妊娠出産育児に必要な生活設計をたてましょう。とくに、お産にかかる費用、住宅などの生活環境、出産の場所など、あらかじめ夫婦でよく相談しておくことがたいせつです。
 そして、妊娠中や産後における母体の変化、胎児乳幼児発育のしかたを知るために、参考書などを読んだり、母親学級にも積極的に出席して、十分な知識を身につけておいてください。
 また、生まれてくる赤ちゃんの幸せのためにも、夫や家族の理解と協力はぜひ必要です。
産院の選び方
 現在、日本ではお産のほとんどが、自宅でなく、診療所あるいは病院・産院などの施設で行なわれています。その理由には、医学的管理の重要性と安全性を求めることや、核家族化などがあります。
 お産のための施設には、いろいろな種類があり、その特徴もさまざまです。
 妊娠の診断から出産、そして育児まで、できれば隣接した同じ施設を利用するのが理想的です。しかし、完全看護かどうか、個室相部屋か、費用はどのくらいかかるか、夫の立会いが可能かなど、近くの人に聞いたり、また直接施設に出向いて、調べてから決めるのがよいでしょう。
●総合病院
 お産のほとんどは正常に経過するものですが、なかには妊娠高血圧症候群妊娠中毒症)や糖尿病など、重篤(じゅうとく)な合併症が現われることがあります。
 総合病院には、産科のほかに内科外科小児科など、十数種類以上の診療科があり、医療スタッフもそろっているので、妊娠前から病気があったり、途中で異常がみられるようなときには、総合病院でのお産をお勧めします。
●産科・小児科専門の産院
 お産をとり扱う医師・助産師のほかに、小児科医など専門のスタッフが整備されており、妊娠の健康管理もゆきとどいています。
●個人経営の診療所・産院
 大病院に比べて規模は小さくなりますが、同じひとりの医師から、主治医として妊娠・出産、さらに乳幼児の管理と、一貫したきめ細かいゆきとどいたサービスが受けられます。
●その他の施設
 母子健康センターや助産院などがあります。妊娠の経過が順調で、しかも住居が近接している場合には、費用も比較的安く便利です。また、異常があれば、近くの医療機関へ紹介してもらえるので安心です。
◎里帰り出産をするときは
 実家などに帰ってお産をする目的は、人手不足の解消や、出産・育児への不安を少なくすることなどがあげられます。いまでは交通機関も発達しており、地域での医療連携がうまくいっていれば、まったく心配いりません。
 しかし、里帰り出産にはつぎのような問題も生じてきます。
・産前産後、2度の旅行が安全か。
・主治医の交替で、一貫した指導が受けにくいのでは。
・異常の頻度が増えないか。
・親への依存心が増し、その後の育児に影響しないか。
・夫婦が別々の生活は大丈夫か。
 そのため、里帰りをする場合は、なるべく早めに出産の場所を決め、主治医からの紹介状をもらってください。
 時期は妊娠の末期がよいと思いますが、そのタイミングは主治医に相談しましょう。
 荷物などは先に送っておき、できれば家族の人と一緒に旅行するのが安全です。飛行機を利用するときは、出産予定日の26日以内ですと、搭乗許可のための医師の診断書が必要です。
 お産が終わって自宅に帰ったときは、異常がないかどうか、早めにもとの主治医の診察を受けてください。
 そして、赤ちゃんが小学校に入るまでは、かかりつけの小児科医を決めておくと便利です。
◎分娩(ぶんべん)費用と医療保険
 お産にかかる費用は、一般に、異常がなければすべて本人負担となります。
 そのおもなものは、分娩料、入院料、新生児介補料(かいほりょう)、それに薬代、検査料などですが、これらは施設によっても、また個室か相部屋かによっても異なります。あらかじめお産をする施設で、概算額を聞いて用意しておきましょう。ただし、一般健診のうち2回は、公費負担として、受診券が母子健康手帳と一緒に公布されます(青色は初期、黄色は中~後期)。
 妊娠・出産時に異常、たとえば帝王切開(ていおうせっかい)、多量の出血、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、糖尿病があり、さらに未熟児、低出生体重児(ていしゅっしょうたいじゅうじ)などで治療を要する場合は、当然保険の適用となりますので、受診時および入院時には、つねに保険証を持参してください。
 これらの自費料金は、補助が受けられます。出生届を提出した後、2、3か月後に、所属している社会保険から、本人または被扶養配偶者(夫)に、出産育児一時金として30万円が支給されます。所定の請求用紙は、それぞれ会社に用意されています。
 さらに、出産手当金として、産前(6週間)、産後(8週間)の無給期間について、1日標準報酬日額の60%が保険組合から支給されます。
◎母親学級(ははおやがっきゅう)を利用しよう
 母親学級は、妊婦のお産に対する恐怖や不安を取り除き、お産を安全かつ順調に進めるために、施設や保健所で行なわれています。
 内容は、おもに妊娠のなりたち、妊娠中の栄養、妊婦体操、分娩経過、お産のときの呼吸法や補助動作などの講義や指導です。
 実施日や回数はまちまちですが、1週間に1、2回、計6回、1日に2時間程度で、妊娠12~20週ごろの人を対象に開かれているようです。
 お産には妊婦自身だけでなく、これから家族の一員として加わっていく子どものためにも、夫ならびに家族一同の協力が必要です。そのためには、できれば夫婦そろって受講することが理想です。
 また、夫婦そろっての両親学級、夫だけを対象とした父親学級や、出産後の親子学級などを実施しているところもあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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