委託売買の一種。他人から売買の委託を受けた商人が、相手方を求めて自己の名において行う売買取引をさし、とくに取引所の会員、商品取引員が顧客の委託に応じて行う売買をいう。委託販売では、商品の生産者または商人が、他の商人に商品販売を委託し、それに対する報酬として、売上金額の一定歩合(ぶあい)を手数料または口銭(こうせん)(コミッション)として支払う販売方式がとられる。委託する側の生産者または商人は委託販売者、委託された側の商人は受託販売者とよばれ、後者はさらにその受託方法によって、代理商、仲立(なかだち)商(ブローカー)、問屋(といや)に分かれる。受託者が委託者の名において売買にあたるのが代理商、他人間の売買の媒介のみをするのが仲立商、受託者が自己の名において委託者の計算によって販売をするのが問屋である。なかでももっとも典型的な委託販売の例は問屋の場合であり、ついで代理商の場合である。手数料または口銭の歩合は、商品や売上金額によって異なるが、一般には2~3%前後であり、多くても10%を超えるものはまれである。
委託販売は主として次のような場合に行われる。(1)市場性の不安定な新製品や無名品を販売するには、生産者や取扱い商人が自分で販売するよりも、百貨店や有名小売店の販売能力に依存したほうが安全である。(2)商品取引所や証券取引所における取引は、商品仲買人や証券業者(会員)に委託しなければできない。(3)貿易上では、在外出先機関をもたない業者や新販路を開拓しようとする商人は、一般に海外市場の需給状況や相場の情勢に暗いことから、手数料を払っても委託販売したほうが安全である。この場合とくに委託販売貿易とよばれる。
委託販売の際、販売価格について、委託販売者が受託販売者に対して最低値段を指示する場合と、市価の成り行きに任せる場合とがある。前者を指値(さしね)、後者を成行(なりゆき)という。また、受託販売者が受託品を時価で処理することをとくに仕切り販売という。
[森本三男]
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…所定の手数料を支払い,他の業者に委託して行う商品の売買のことであり,販売を委託する〈委託販売〉と,買付けを委託する〈委託買付〉に分けられる。委託売買において委託を受ける業者,すなわち受託者は,おおむね日本における商法上の問屋に該当し,自己の名義で取引を行うが,取引から生ずる損益はあくまでも委託者に帰属するのが通例である。…
… 日本における営利事業としての出版にとって,雑誌は格別に重要な比重が置かれてきた。大正年間から昭和初年にかけて,出版物を全国統一価格(定価)で売って個別の値引きを禁ずるのとひきかえに,売残りは出版元が引き取るという委託販売制(返品制)が採用されてゆくうえで,雑誌はこの商慣行が確立するためのかなめとなった。単行本では,1人の人間は1冊しか買わないが,雑誌は同じ読者が繰り返して購買者となる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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