日本の旧憲法下では,姦通は,妻が行った場合は,夫の告訴によってその妻と相手の男とが処罰されたが,夫が行った場合は,その相手が人妻でない限り処罰されなかった(刑法183条。刑は2年以下の懲役)。しかし戦後,現行憲法に男女の平等(14条),夫婦の平等(24条)がうたわれたのに伴い,夫婦とも平等に処罰するか,あるいは両方とも不処罰とするかの必要が生じた。処罰・不処罰それぞれから生ずる種々の効果,刑法と道徳の役割等をめぐって,激しい議論が交わされたが,結局不処罰論が国会で多数を占め,1947年に姦通罪の規定は削除された。その後諸国においても,イギリスなど従来からの不処罰国に加えフランス,イタリアは不平等処罰から不処罰へ,西ドイツ(現ドイツ)は平等処罰から不処罰へと転じている。なお民法上は,戦後の改正にあたって,夫婦いずれの場合の姦通も裁判上の離婚原因となるとの方向で平等化が図られた(旧法813条→現行法770条)が,詳しくは〈不貞〉の項を参照されたい。
執筆者:田中 利幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
夫または妻がそれ以外の男女と性的関係をもつことを犯罪として処罰の対象とする場合をいう。第二次世界大戦前の刑法では、第183条において、「有夫ノ婦姦通シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ処ス 其(その)相姦シタル者、亦(また)同シ(1項)。前項ノ罪ハ本夫ノ告訴ヲ待テ之(これ)ヲ論ス 但(ただし)本夫姦通ヲ縦容(しょうよう)シタルトキハ告訴ノ効ナシ(2項)」と規定されていた。戦後、妻の場合だけを本罪によって処罰し、夫の姦通については処罰しないのは憲法第14条における男女平等の原則に違反するという考え方が支配的となった。そこで、本罪の改正にあたって双方とも処罰するか双方とも処罰しないかが争われ、1947年(昭和22)の刑法一部改正で、姦通罪の規定は削除されることとなった。ただ民法上は、姦通は不法行為にあたり損害賠償の対象となる。
[名和鐵郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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[フランス]
フランスでは,大革命のときに,O.deグージュが〈女性と女市民の権利宣言〉(1791)を発表し,女性たちはパンを要求して行進をしたり,独自の革命運動の組織もつくった。だがその後に成立したナポレオン法典によって女性の地位は低くおさえられ,革命のときに撤廃された姦通罪は1810年に,離婚の禁止は16年に復活した。このためフランスの女性運動では,イギリス,アメリカ合衆国とは異なって女性参政権よりは家族,職業労働,教育の問題に重点がおかれた。…
※「姦通罪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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