日本大百科全書(ニッポニカ) 「婿いじめ」の意味・わかりやすい解説
婿いじめ
むこいじめ
婿に加えられる「いじめ」をさし、新婚の夫(おっと)すべてに対するものと、養子婿に対するものとがある。前者は、正月や祭礼その他の機会に、大盛りの飯をむりやり食べさせたり、水を浴びせたり泥をかけたりする行事が各地にある。後者は、村の統制に従わせるために試練を課すもので、祭りのときに重い太鼓を担がせるとか、年長であっても下働きをさせるとかのことがある。階級社会ではひとりひとりに序列があり、同等の身分のなかでは年齢序列が守られてきたが、養子婿や嫁は他から参入した者として、以前は序列の下位に組み込まれた。ただし「いじめ」の内容は漠然としており、通過儀礼のなかで次の段階に移行するための再生呪術(じゅじゅつ)の変化したものや、他人の幸福への「やっかみ」なども含まれている。
[井之口章次]