子供歌舞伎(読み)こどもかぶき

改訂新版 世界大百科事典 「子供歌舞伎」の意味・わかりやすい解説

子供歌舞伎 (こどもかぶき)

子どもだけで一座を組織した歌舞伎からくり人形竹田芝居が,からくりの前芸または間狂言として江戸中期に始めたもので大坂で流行した。ちんこ芝居,首振り芝居,身振り狂言などともいい,多くは浄瑠璃につれて無言身振りや表情をみせた。人形芝居の形式を歌舞伎が継承し,明治中期に初世中村吉右衛門,初世中村又五郎らを中心とした子供芝居が流行,これは役者養成の役割も果たした。一方民俗芸能では,曳山(ひきやま)狂言といわれる山車の上で行われる子供歌舞伎が,滋賀県長浜市,岐阜県不破郡垂井町,石川県小松市などで神社の春祭を中心に奉納されている。最もよく知られているのは,長浜曳山まつり(4月14~16日)で,5,6歳から11,12歳の子ども(かつては少年のみ)が,曳山を舞台として《忠臣蔵》《恋女房染分手綱》《源平屋島日記》など子どもには至難と思われる演技を奉納している。これは1769年(明和6)以来の記録をもつ。
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関連語 茂子 中村

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「子供歌舞伎」の意味・わかりやすい解説

子供歌舞伎[長浜]
こどもかぶき[ながはま]

4月13~16日に滋賀県長浜市長浜八幡宮で開催される長浜曳山祭において行なわれる狂言(子供歌舞伎)。天正年間に長浜城主であった豊臣秀吉が男子誕生の祝いに下賜した砂金元手に,屋根と車輪のある移動式屋台である曳山をつくり曳き回したのが祭りの始まりと伝わる。子供歌舞伎は寛保3(1743)年の台本と明和6(1769)年以降の外題記録が残されている。曳山をもつ 13の山組のなかから,毎年必ず曳行する長刀山(なぎなたやま)のほかに,年ごとに 4基の曳山が出される。子供歌舞伎は,長刀山以外の山組で,5~12歳の男児によって曳山の舞台で演じられる。14日には,各山組町内での上演後,曳山とともに神社に行き,狂言終了時の装束で「夕渡り」の参拝をし,15日には,狂言上演時の装束での「朝渡り」のあとに,神社および神輿渡御の経路上と御旅所での上演がある。

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