(1)能では,シテの中入のあと狂言方が出て演じる部分をいうが,能のアイ(間狂言)のみならず近世初頭の諸芸能では,たて物の芸能の間々に,種々の雑芸が併せて演じられた。それを〈アイの狂言〉または〈アイの物〉と呼ぶ。歌舞伎踊や浄瑠璃操り,幸若舞,放下(ほうか),蜘(くも)舞などの諸芸能の間でも,それぞれ間狂言がはさまれ,物真似(ものまね)狂言,歌謡,軽業,少年の歌舞などが演じられた。なかでも一番多く演じられたものが物真似狂言であり,演者は歌舞伎の座に主に所属する狂言方,後に明暦・万治頃から道化と呼ばれた人たちである。三国(みくに)彦作,けんさい,奴作兵衛(やつこさくひようえ),坂東又九郎らは初期の道化として名高い。また,それら有名な道外方(どうけがた)の,顔を模した道化人形も多く作られ,人形による上演も多かった。各種物真似の独芸,狂言をもどいた寸劇や新作のせりふ劇,その他歌謡,万歳,石引きや木遣りなどの芸能がその主な演目であった。(2)能取物あるいは能様式にのっとった舞踊劇では,能のアイと同様に,前後段のつなぎ役として軽い話術を演じる場合もある。それを〈間狂言(あいきようげん)〉という。《連獅子》の宗論や《鏡獅子》の胡蝶,《紅葉狩》の山神がそれに当たる。
→アイ →野呂間
執筆者:信多 純一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
能のなかで狂言方が担当する部分。その役をアイという。「語リ間(かたりあい)」「アシライ間(あい)」「劇間(げきあい)」に大別できる。語リ間のうちもっとも多いのが、シテの中入リの間に所の者などとして出、ワキの要請に応じ座って一曲の主題や関連する話題を語る「居語(いがた)リ」である。これに対し末社の神(まっしゃのしん)などが立ったまま社寺の縁起などを語るのを「立語(たちがた)リ」といい、変事の急を告げる「早打チ間(はやうちあい)」やアイの語リによって能が始まる「口開ケ間(くちあけあい)」も立語リに含まれる。アシライ間はシテやワキなどと演技的交渉の深いものである。劇間は複数のアイが出て、能の他の役とはかかわりをもたず、アイ同士が能のなかで演ずる寸劇をいう。また常と異なる特殊演出は「替間(かえあい)」とよぶ。アイはほとんどが所の者、太刀持(たちもち)、能力(のうりき)、末社の神など身分の低い役であるが、能の一役として曲の雰囲気を左右するので軽視できない。なお、能の現行曲約240番のうち40番ほどの曲には間狂言がない。
[小林 責]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報
…能一番のなかで狂言方の担当する役とその演技。間狂言(あいきようげん)とも,能間ともいう。もっとも一般的なかたちは,二場物の能で前ジテの退場後,後ジテの登場までのあいだをつなぐ役で,これに4種ある。…
…(1)能では,シテの中入のあと狂言方が出て演じる部分をいうが,能のアイ(間狂言)のみならず近世初頭の諸芸能では,たて物の芸能の間々に,種々の雑芸が併せて演じられた。それを〈アイの狂言〉または〈アイの物〉と呼ぶ。…
…ルネサンス期イギリスにおける演劇形式のひとつ。元来,2人ないしそれ以上の少数の役者の間interで演じられる劇ludusとする説と,宴会のコースの間あるいは劇の幕間に演じられる劇とする説の,二通りの解釈があるが,ふつう後者の意味をとって〈間(あい)狂言〉と邦訳される。一般に世俗的,喜劇的,笑劇的な性格をもち,王侯貴族の宮殿や邸宅で演じられた。…
※「間狂言」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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