経済の動きについての時間を追って観測された統計データに関して、経済自体の動きから生ずるものではなく、春夏秋冬によって生ずる気候的、自然的変動によってもたらされる動き、あるいは人々の社会的な慣行から毎年決まった時節に繰り返される行動によってもたらされる動きなど、経済外的な要素に基づいて発生した部分を観測データのなかから除去し、元のデータの系列を経済的要因だけに基づく動きに修正すること。たとえば、わが国のデパートの売上高をみると、どの年においても7月と12月については飛び抜けて大きな数字となるのに対して、1、2月と8、9月は決まって低い数字になっている。このような毎年決まって繰り返される変動は、物価の変動とか生産の変動というような経済的な要因によってもたらされるというよりも、日本社会に特有の中元、歳暮の習慣による売上げ増とその直後における商業活動の季節的停滞という経済外的要因に基づくものといえる。このような場合には、そのような経済外的要因による大幅な変動を年間を通じて平準化し、元の統計データから、その背後にある純粋な経済的要因に基づく動きを取り出してみなければ、ほんとうにそのデータが上昇傾向にあるのか、下向傾向にあるのか、さらにはその水準自体をも正確に知ることはできない。
季節調整のおもな方法には次のようなものがある。
(1)移動平均法moving average method 季節変動は、四季ごとに繰り返されるものも、特定月のみに発生する変動も、いずれも12か月を1周期とするものである。したがって、その波動を取り去るのには、その周期の平均値をとればよいことになる。この考え方に基づいて、ある月の値として、その月を中心とする12か月の値の平均値をあてることにして、順次この修正をしていくことによって原系列の季節調整系列とするのが移動平均法である。
(2)連環比率法link-relatives method パーソンズ法Person's methodともよばれる。時系列の各月の対前月比を計算して各月別の中位数を求め、これを1月を100とする連環比率に直し、補正を加えて季節変動指数を作成する。この指数を用いて原時系列の季節調整を行う。
(3)センサス局法Census Bureau method アメリカ商務省センサス局が中心になって開発したもので、方法的にはコンピュータを利用して移動平均を繰り返し行うものであるが、大規模な計算が行えるため、細部の調整や計算手続の選択なども可能となった。1970年代には種々批判を受けつつも世界的に広く利用されるようになり、利用目的に応じて多くの改良法が考えられてきている。わが国でも、日本銀行統計局などではそのまま利用している。
[高島 忠]
『森田優三著『経済統計読本』(1970・東洋経済新報社)』▽『経済企画庁経済研究所編『季節変動調整法』(1971・大蔵省印刷局)』▽『奥本佳伸著、経済企画庁経済研究所編『季節調整法の比較研究――センサス局法X-12-ARIMAの我が国の経済統計への運用』(2000・大蔵省印刷局)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 季節変動のパターンは経済分析に際してしばしば外生的なものとされ,分析に先だって取り除かれることが多い。季節変動を取り除く(このことを〈季節調整seasonal adjustment〉,季節調整済みの数値を〈季節調整値〉という)方法は大別すると2種類ある。一つは経済データを作成する政府系機関等がよく用いるもので,考える変数の原系列を適当な長さの移動平均で割って季節指数を求め,さらにこれを年間平均が100になるように調整したうえで,原系列に適用することによって季節変動を除去した系列が求められる。…
…月次および四半期データは短期的な経済動向を把握するのが目的で,景気観測などに利用される。また,これらのデータは1年を周期とする変動=季節変動を含む場合が多いので,これを除外した季節調整データも同時に作成される。一方,年次および特定年次データは長期的な経済現象の変化を把握するのが目的で,構造分析や成長分析などに利用される。…
… 不規則変動要素(I)――原系列(O)か ら以上のT,C,Sの成分を除いた 不規則な変動。この中で,とくに季節変動を除去することを季節調整と呼び,アメリカ商務省で開発されたセンサス局法が手本となって,日本でも経済企画庁のEPA法や通商産業省のMITI法が開発されて使用されている。また,景気の循環変動を計測するために,経済企画庁では25の系列からなる景気動向指数を発表している。…
※「季節調整」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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