日中戦争の拡大に伴う農村・工場などの労働力不足を補うための学生・生徒の強制的動員。1938年(昭和13)6月、文部省の「集団的勤労作業運動実施ニ関スル件」の通牒(つうちょう)により、中等学校以上で夏季休暇の前後などに3~5日の勤労作業が始められた。ナチス・ドイツの「労働奉仕」に倣い、かつ精神主義的教育とを結合させたものである。41年8月、文部省は「学校報国団ノ体制確立方」の訓令を発し、学校ごとに学校報国隊(団)を組織し、軍事的要請に従って学徒を労務に動員しうる体制をつくった。
1943年6月、閣議は「学徒戦時動員体制確立要綱」を決定し、戦力増強のための本格的軍需工場動員と「直接国土防衛」の軍事訓練の徹底を期した。44年3月に「決戦非常措置要綱ニ基ク学徒動員実施要綱」を閣議決定、中等学校以上の生徒は男女を問わず徹底的に工場に配置されることになり、45年3月には国民学校初等科を除き1年間の授業が停止され、学徒は軍需生産、食糧増産、防空防衛に動員された。その数は45年7月には340万余に達し、最大の危機にあった軍需産業での支柱的役割を果たした。その一方、学力低下は免れず、一般工員との摩擦や空腹、けが、病気、風紀問題などさまざまな問題が起きた。動員中の空襲その他による死亡者は1万0966人に達し、これには8953人の原爆死亡者が含まれ、わが国の学生史上、学徒出陣とともに最大の哀史となった。
[吉村徳蔵]
『文部省編・刊『学制八十年史』(1954)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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