日本大百科全書(ニッポニカ) 「学生自治会」の意味・わかりやすい解説
学生自治会
がくせいじちかい
大学の構成員としての学生の自治組織。大学における学生生活を守り、豊かにするための種々の活動を行うものとして、日本でも第二次世界大戦前からあったが、戦後の大学の大衆化に伴い多くの大学で組織されるようになった。おもに学習上の環境条件や厚生福祉の改善に努めるとともに、文化、教養、体育などの多方面のクラブ・サークル活動を実施する。
かつての学生自治会は、学生側の権利主張や政治・社会問題に結び付く学生運動とかかわりが深く、第二次世界大戦後は学園民主化闘争(1945~1946)を背景に、1948年(昭和23)には大衆的な自治会運動として全国の145大学による全日本学生自治会総連合(全学連)が組織された。純粋な社会正義の理念と現実の社会体制のあり方との矛盾から、大学の自治、社会主義的あるいは国家主義的理想の実現を掲げて、ときに激しい実力行動を展開するものもあった。
しかし、1965年には高等教育機関の在学者数が100万人を超え、大学の大衆化が進み、1969年に学園紛争収拾のための時限立法である「大学の運営に関する臨時措置法」(大学臨時措置法)が成立すると、学生運動もしだいに沈静化していった。それに伴い、学生自治会も弱体化し、政治色のないものになっていった。以降、学生自治会主催の文化祭、学園祭などが大学の年中行事になり、学外から多くの参加者を集めるようになった。こうした流れが形成された原因の一つに、以下のような経緯が考えられる。学生数の増加が、学生集団の出身階層、進学の動機や目的、学力、態度、意識などの変化をもたらし、その結果、政治的・社会的な意識をもった学問志向型の学生が減少し、遊び志向型、職業志向型の学生が増加したことがあげられる。
その後、2007年(平成19)に社団法人日本私立大学連盟(東京)が実施した学生の実態調査では、将来につながる専門的な知識や技能を大学時代に身につけようとする学生が増加していた。これは、「大学全入時代」といわれる現代の状況などから、専門性をもたなければ就職ができないという職業志向型の学生が増えたことの現われと考えられる。
[手塚武彦・西根和雄]
『社団法人日本私立大学連盟監修・刊『私立大学学生生活白書2007』(2007)』