日本大百科全書(ニッポニカ) 「学級担任制」の意味・わかりやすい解説
学級担任制
がっきゅうたんにんせい
一般に小学校低学年段階でみられるように、1人の学級担任教師が、その学級の学習指導(教科指導)や生徒指導の全部か大部分を担任している教授組織のこと。中学校以上で行われている教科担任制に対立する概念。
[吉本二郎・岡東壽隆]
学級担任制の特徴
学級担任制の長所は、1人の教師が児童・生徒と深く接触できること、授業にあたって教科間の連携が容易であること、個々の子供の生活と学習を関連づけて指導できることなどにあるが、他方では1人の教師が教育内容のすべてに精通することの困難さがあり、また、ときに閉鎖的な「学級王国」を形成する危険性も認められる。学級担任制は、児童・生徒にとっては、良きにつけ悪しきにつけ教師の人格的影響を受けやすい傾向にあり、複数教師による指導(複数担任制)の必要性を説く根拠を与えている。
そこで、学級担任制の長所を残しながら一部に教科担任制ないし複数担任制を取り入れたり、あるいは学年教師による協力教授体制(ティーム・ティーチング)に組み替えたりする組織法が採用される傾向がみられる。教科担任制ないし複数担任制の長所としては、次の点があげられる。
(1)一般に専門教科の背景となる学問領域に精通しているため指導内容の質が高くなる。
(2)複数教師が個々の児童・生徒を多角的に観察し、興味や関心を総合的に把握するため、個に応じた指導や援助が可能となる。
(3)児童・生徒にとって素晴らしい教師と出会う機会が広がる。
このような教科担任制ないし複数担任制の特性を、学級担任制にも生かそうという考えがある。また、生徒指導面ではスクールカウンセラーの拡充配置が行われており、これらは学校の教育力向上のために重視されてよい。
[吉本二郎・岡東壽隆]
課題
小学校低学年においてさえ学級崩壊が増加するなかで、学級担任制については、この崩壊問題への対策をめぐって見直しの声が高まっている。そこで文部省(現文部科学省)は、1999年(平成11)に学級担任制見直しのための研究会を発足させ、担任制を基本としつつ複数教員が一つの学級に関われる態勢を探ることを決めた。同時に、それまでの応急対策として、非常勤講師約2000人を崩壊現象のみられる学校に配備していく考えも示した。教育課程のスリム化のなかで学力向上を図るという視点からは、基礎・基本の確かな定着を図ること、学級の一部を飛び級などによって流動化すること、複数の学級担任制の導入を図ること、学級が二つ以上の場合、学年経営の質の見直しを図ること、1人の教師が担当する児童・生徒数の適正化を行うこと、などが課題となっている。
[吉本二郎・岡東壽隆]
『下村哲夫著『教育学大全集14 学年・学級の経営』(1982・第一法規出版)』▽『田原迫龍磨編著『現代学級経営の理論と実際』(1995・第一法規出版)』▽『岡東壽隆他編『学校経営重要用語300の基礎知識』(2000・明治図書出版)』