WMAP(読み)だぶりゅーまっぷ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「WMAP」の意味・わかりやすい解説

WMAP
だぶりゅーまっぷ

NASA(アメリカ航空宇宙局)がCOBE(コービー)(宇宙背景放射探査機)に続いて打ち上げた宇宙背景放射をより正確に観測するための科学衛星WMAPとは、英語名Wilkinson Microwave Anisotropy Probeの略称。ウィルキンソンマイクロ波異方性探査機ともいう。ウィルキンソンDavid Todd Wilkinson(1935―2002)とはこの計画の指導者の名である。2001年6月にアメリカのケープ・カナベラル空軍基地より打ち上げられた。質量は約840キログラムで1.4メートル×1.6メートルの主反射板が二つある観測装置をもち、機体からの赤外線放射を極力抑えるために90K以下に冷却された。軌道全天をくまなく観測でき、かつ地球と太陽の影響をできるだけ排除するようにラグランジュ点(L2)が選ばれた。軌道は地球から約150万キロメートル、地球と同じ周期で太陽を周回した。観測機器はCOBEの差分型マイクロ波測定器(DMR:Differential Microwave Radiometer)と同様である。

 WMAPによる最大角分解能0.2度での観測により、以下のことが判明した。

(1)宇宙の年齢は137億年。(2)インフレーション理論を支持する空間の平坦性。(3)宇宙のエネルギー構成は、物質バリオン)が4%、ダークマター暗黒物質)が20%、ダークエネルギーが76%。(4)ハッブル定数は72キロメートル/秒/326万光年。

 これらの測定値は宇宙の生成後、インフレーションで急膨張し、その後ビッグ・バンが起き、水素ヘリウムの元素合成を経て、星・銀河の生成、大規模構造の進化を想定するΛ-CDM(ラムダシーディーエム)モデルでうまく説明できるとされる。なお。WMAPの運用は2010年9月に終了した。

[編集部 2023年2月16日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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