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電波天体 デンパテンタイ

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デジタル大辞泉の解説

でんぱ‐てんたい【電波天体】

強い電波を放射している天体の総称。1970年代初頭以前には電波星またはラジオ星と呼ばれていた。電波望遠鏡で観測される主な電波源として、銀河系内の散光星雲超新星残骸星形成領域パルサーのほか、銀河系外の遠方にある電波銀河クエーサーなどの特異銀河がある。低温の中性水素原子線スペクトル星間分子が放つ分子スペクトルは熱的放射と呼ばれる。また、超新星パルサーの磁場、クエーサー電波銀河ジェットによるシンクロトロン放射非熱的放射と呼ばれ、高エネルギーの粒子が存在すると考えられている。電波源。電波星。ラジオ星。

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大辞林 第三版の解説

でんぱてんたい【電波天体】

比較的強い電波を発する天体。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

電波天体
でんぱてんたい

電波を放つ天体。「電波星」「ラジオ星」とよばれていた時期があるが、宇宙において強い電波を放つ主要な天体は、実は恒星ではない。恒星も弱い電波を放ち、とくにその形成期と老年期において特異なメーザー電波を発することが知られているが、電波望遠鏡で観測されるおもな電波天体は、銀河系内の低温の暗黒星雲や高温の散光星雲、超新星の爆発の跡、遠方の特異銀河、クエーサーなど、光では見えないか、あるいはかすかにしか見えない天体が多い。電波で見た宇宙がそれまでの光で見た宇宙を大きく塗り換えたのはこのためである。[海部宣男]

電波の発生メカニズム

電波は、電磁波のなかでもっとも波長が長い(すなわち低周波数の)領域を占める。電磁波のエネルギーは周波数の二乗に比例するので、電波はもっとも低エネルギーの電磁波であるといえる。したがって自然界における電波の発生は、可視光に比べて低温・低エネルギーの領域においておこることが多い。
 宇宙における電波の発生メカニズムは、さまざまな温度のガス体が放つ熱的放射と、高速の荷電粒子(宇宙線)が磁場と作用して放つ非熱的電波(シンクロトロン放射)とに大別される。
 熱放射には、原子や分子の内部状況の変化に応じて放射される波長が定まった電波(線スペクトル)と、プラズマが放つ波長範囲が広がった電波(連続スペクトル)とがある。線スペクトル電波は、高温ガス雲中での原子の電子状態変化で放たれる可視光の線スペクトルと異なり、10~100Kという低温のガス雲における分子の回転など、ごく小さな内部エネルギー変化にかかわるものである。したがって、おもに高温のガス体である恒星を見る可視光とは対照的に、電波の線スペクトルは宇宙空間に漂う低温で暗黒のガス雲を観測するのに都合がよい。
 非熱的放射は、高エネルギーの粒子すなわち宇宙線を大量に生み出す宇宙特有の大規模爆発に関連して観測される。しかしここでも電波のエネルギーの低さが重要である。すなわち、爆発で生じた高エネルギー粒子は、初めX線や可視光など高周波の電磁波を放つが、すぐにエネルギーを消費して低周波の電波しか放てなくなってしまう。爆発後、X線や可視光が消え去っても長い時間にわたって電波が放出されるため、こうした現象は電波によって容易に観測することができるのである。[海部宣男]

熱的電波源

熱的電波を放つ天体のおもなものについて述べる。
(1)月・惑星 固体状の小天体である月や惑星は、その温度(100~数百K)に応じ赤外線から電波にかけての波長で熱放射を発する。
(2)中性水素原子雲(H領域) 低温で電気的に中性の水素原子は、波長21センチメートルの線スペクトル電波を発する。宇宙の物質の70%(重量比)は水素であり、この21センチ波の観測で、宇宙空間にあまねく分布する低温で希薄な雲の存在が明らかになった。また中性水素原子雲の観測から、銀河系の渦巻構造や運動が明らかにされた。
(3)星間分子雲 中性水素原子雲より高密度で、さらに低温の星雲は、その中に含まれるさまざまな分子・化合物の放つ線スペクトル電波で観測される。波長が短い電波であるミリ波領域では、多数の分子スペクトルが知られており、一酸化炭素・アンモニア・青酸から、地上では知られていない有機分子までが発見されている。
(4)星の形成領域 星間分子雲は、分子ガスとともに微小なシリケイト・氷などの固体粒子(ダスト)をも含んでいて可視光を遮るために、光学望遠鏡では内部を見ることができない。電波と赤外線の観測から、星間分子雲が星を生み出す直接の材料であり、多くの星が星間分子雲の中で生まれつつあることが明らかになった。生まれようとしている星は激しくガスを吹き出すため、その存在を知ることができる。
(5)H領域 いわゆる散光星雲である。大質量の星が生まれると、強い紫外線を放って周囲のガスを熱してプラズマとし、光と連続波電波を放つ。
(6)年老いた星 星が進化して赤色巨星となると、膨れ上がった外層大気は分子ガスとなって流れ出し、膨張していくようすが分子の線スペクトル電波で観測されている。
(7)銀河系 水素原子雲、分子雲、星などの集合がわれわれの銀河系である。光では見通せない銀河系全体やその中心部の現象は、さまざまな電波の観測によって調べられている。
(8)銀河 さらに遠方の銀河の構造と運動は、21センチ波や分子スペクトルなどで観測される。楕円(だえん)銀河はガスをほとんどもたないため、電波での観測は困難である。
(9)宇宙背景放射(宇宙黒体放射) 138億年前のビッグ・バン(火の玉)宇宙の名残(なごり)の電波も、もとは高温プラズマの熱的放射が冷却して3Kまで下がって見えるものである。[海部宣男]

非熱的電波源

非熱的電波を放つおもな天体について述べる。
(1)太陽 太陽は表面からプラズマによる熱的電波を放つが、黒点に伴う爆発(フレア)のシンクロトロン放射は強い電波源である。
(2)超新星 大質量星が不安定となって爆発し、飛散する超新星現象は、爆発後、10万年にもわたって広がり続ける衝撃波を残す。衝撃波がつくりだす強い磁場によってシンクロトロン放射が放たれるが、そのような衝撃波が200個以上も電波望遠鏡によってみいだされている。
(3)パルサー 1秒に1回ないしもっと速い、きわめて正確な繰り返し電波(パルス)を発する天体である。実体はつぶれてしまった星すなわち中性子星で、電波のビームを放ちつつ高速で自転しているため、電波ビームが地球を照らすとパルスが観測される。
(4)電波銀河 非常な遠方にありながら強い電波が観測される電波銀河は、その中心に存在する小天体すなわち巨大ブラック・ホールを主体とする銀河中心核が、超高エネルギー粒子を放出していると予想されている。粒子の流れはしばしば10万光年を超える長大なものとなり、それが発するシンクロトロン放射が「宇宙ジェット」として観測される。また星の形成が爆発的におこっている銀河もあり、これも電波銀河として観測される。
(5)クエーサー 電波銀河よりさらに遠方(遠いものでは100億光年を超える)にあり、さらに強力なエネルギーを放出している。その正体は長い間不明であったが、本質的に電波銀河の中心核と同様のものと考えられるに至っている。電波で宇宙ジェットを伴って見える点も電波銀河と同様で、このような現象は巨大なブラック・ホールに物質が大量に落ち込むことで生じると解釈されている。[海部宣男]
『海部宣男著『銀河から宇宙へ』(1972・新日本出版社) ▽西村史朗・海部宣男編『現代天文学講座11 宇宙の観測 光と電波による観測』(1981・恒星社厚生閣) ▽赤羽賢司・海部宣男・田原博人著『宇宙電波天文学』(1988・共立出版) ▽祖父江義明著『電波でみる銀河と宇宙』(1988・共立出版) ▽ルドルフ・キッペンハーン著、祖父江義明訳『宇宙とその起源――銀河からビッグバンへ』(1991・朝倉書店) ▽福江純著『「宇宙ジェット」――銀河宇宙を貫くプラズマ流』(1993・学習研究社) ▽海部宣男著『宇宙の謎はどこまで解けたか』(1995・新日本出版社) ▽前田耕一郎著『電波の宇宙』(2002・コロナ社)』

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世界大百科事典内の電波天体の言及

【電波星】より

…電波を発する天体の総称。電波天体ともいう。現在まで3万個近くが見つかっている。…

※「電波天体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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