主として人工衛星を利用して、大気圏外の宇宙空間で軍事活動を行う兵器。1967年1月、宇宙条約が調印(同年10月発効)され、核兵器やその他の大量破壊兵器を宇宙空間の地球を回る軌道に乗せることは禁止された。しかし核兵器を積んだ弾道ミサイルが宇宙空間を通過することまでは禁止していない。また直接に大量破壊を行わない兵器の宇宙空間への配備も制限の対象とはなっていない。1957年以来、多数の人工衛星が軌道に打ち上げられたが、その75%以上は軍事衛星であった。1981年4月から打上げの始まったアメリカのスペースシャトルの実験計画も、その4分の1以上の回数が国防総省に割り当てられていた。
軍事衛星にはいろいろの目的をもったものがある。通信衛星は、全世界に広がっている戦略体制のなかで、とくに海外の基地との通信連絡に重要な役割を果たしている。測地衛星は、精密な軍事地図の作成ばかりでなく、地球の重力場の測定で慣性誘導装置による弾道ミサイルの命中精度の向上に役だつ。気象衛星からの気象情報は、軍事作戦をたてるうえで重要である。海洋探査衛星も、艦船の航跡ばかりでなく、各種の海洋に関するデータを収集する。もっとも数の多いのは各種の偵察衛星で、目標についての正確な情報を与え、また速やかな攻撃効果を期待できる。たとえば写真偵察衛星は、カメラの技術の進歩によって、地上の物体を15センチメートルの分解能力で見分けることも可能になっている。早期警報衛星は、敵のミサイル発射をほとんど即座に探知できる。航法衛星は、艦船や航空機ばかりでなく、長距離弾道ミサイル自体の位置や速度の確認にも利用できる。
一方、多国間の軍備管理協定の検証を、国際監視機関が人工衛星を使って広く国際的に行うことが提唱されている。今後予想されるもっとも重要な宇宙兵器の開発は、弾道弾防御兵器であろう。
[服部 学]
『野本恵一著『宇宙兵器』(1987・サンケイ出版)』▽『毎日新聞社外信部著『レーガンの宇宙戦略と軍事衛星』(1984・築地書館)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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