出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
静岡市駿河区(するがく)宇津ノ谷と藤枝市(ふじえだし)岡部町(おかべちょう)岡部坂下との間にある峠。標高約170メートル。東海道の丸子宿(まりこしゅく)と岡部宿との間に位置し、難所の一つとして知られた。奈良時代は、海岸部の日本坂を越えるのが普通であったが、急峻(きゅうしゅん)なため、平安中期以後は『伊勢物語(いせものがたり)』の「……宇津の山にいたりて、わが入らむとする道はいと暗う細きに、蔦楓(つたかえで)は茂り……」に由来する蔦の細道の古道が利用された。現在、頂上付近に在原業平(ありわらのなりひら)がよんだ「駿河なる宇津の山辺(やまべ)のうつつにもゆめにも人にあわぬなりけり」の歌碑がある。近世初期、街道整備により、蔦の細道にかわって、その北の鞍部(あんぶ)が旧東海道の宇津ノ谷峠となり、古道は廃止された。ここは河竹黙阿弥(もくあみ)の世話物の代表作『蔦紅葉宇都谷峠(つたもみじうつのやとうげ)』の文弥殺し(ぶんやごろし)の舞台となった所。明治以後、1876年(明治9)、1930年(昭和5)、1959年(昭和34)、1998年(平成10)の4回にわたって峠下にトンネルが構築された。1959年完成の新宇津ノ谷トンネルと1998年完成の平成宇津ノ谷トンネルを国道1号が走り、また蔦の細道はハイキングコースとなっている。
[北川光雄]
静岡市西部の駿河区宇津ノ谷と藤枝市岡部町岡部の坂下(さかのした)との間の峠。宇都谷峠とも書く。標高180m。東海道の丸子(まりこ)宿と岡部宿との間の難所で,この山地の峠越えは,海岸に沿った日本坂,国道1号線のやや南にある〈蔦(つた)の細道〉から宇津ノ谷峠越えへと変遷した。宇津ノ谷トンネルの開通は旧道1876年,旧国道1号線1930年,新国道59年。《伊勢物語》に〈駿河なる宇津の山べのうつつにも夢にも人にあはぬなりけり〉と歌われて東海道の名所となり,河竹黙阿弥の《蔦紅葉(つたもみじ)宇都谷峠》の舞台ともなった。名物に厄よけの十団子(とおだんご)がある。
執筆者:北川 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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