国有国営の事業。国が資本・経営両面において直接かつ全面的に関係している事業のことで、本来、国とは別の法人格をもつ公共企業体とか、地方公共団体の所有・経営にかかわる地方公営企業とは異なる。しかし、ときには官公企業というように、広義には、これらすべてを含ませる場合もある。
官業は、一般的には資本主義の発展段階により変遷を示してきた。(1)資本主義形成期には、資本主義の確立・発展に向け、さらに国家の財政収入確保のために、官業(あるいは官営工場)が広範囲に存在した。(2)資本主義確立期に移ると、自由主義的要求に加えて、官業の非能率性が非難され、官業は整理・縮小されてゆく。(3)さらに資本主義が発展して独占段階に入ると、私企業では維持できない設備や生産力を保持しようとして、国有化が唱えられるとともに、反面で資本主義がもつ構造的矛盾を克服しようとして、新しい官業が生成してくる場合がある。もちろん、このような変遷は、それぞれの資本主義の構造やその発展の具体的な過程により多様である。
19世紀末に後進国として、資本主義の育成を図らなければならなかった日本の場合には、欧米からの近代産業の移植、技術移転などを図ろうとして、官営模範工場(兵器、造船、セメント、ガラス、紡織、製糖など)を設置し、殖産興業を推進し、のちにそれらを民間に払い下げて、後年の財閥を育成した。さらに、軍事上・国防上の要請から、鉄道、電信電話、造兵造艦事業を国有国営とした。日清(にっしん)戦争後経営として始められたたばこ専売や日露戦争後経営の一環たる塩の専売事業は、国庫に重要な財政収入をもたらしてきた。官営八幡(やはた)製鉄所の戦前日本鉄鋼業に占める地位も周知のとおりである。第二次世界大戦後は廃止ないしは公共企業体化、さらには民営化、独立行政法人化されたものが多く、今日では国有林野事業、国立病院などが残っているにすぎない。
[加藤幸三郎]
『小林正彬著『日本の工業化と官業払下げ 政府と企業』(1977・東洋経済新報社)』▽『『社会政策学会史料集成10 官業及保護会社問題』(お茶の水書房・1977)』▽『『調査報告 官業と民業の役割分担』(1983・日本経済調査協議会)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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