公企業の近代的合理化形態。広義には、国または地方公共団体の所有と支配下にある公法人、すなわち公社、公団、公庫、事業団、営団など、特殊会社以外のすべてを含むが、狭義には公社だけをさし、この用法が一般的である。最狭義には、日本国有鉄道、日本電信電話公社および日本専売公社の旧三公社のみを公共企業体とする用法があったが、これらの民営化により、この用法は消滅した。また、営団も最後まで存続していた帝都高速度交通営団(東京の営団地下鉄)が2004年(平成16)に民営化されて東京地下鉄株式会社(東京メトロ)となり、姿を消した。
公共企業体は、一般に公企業のなかの特殊形態公企業の一種であり、公共的需要を満たしつつ経済的給付の生産を行う組織である。それは独自の法人格をもち、経営上の自主性を発揮することによって外部からの政治・行政の干渉を排除することを意図していた。もちろん、究極的所有者である国民を代表する議会の支配を否定するものではないが、それは経営者の任命における議会の同意、予算および決算の議会への報告、その他一般的監督という形に象徴化され、現実にはむしろ専門経営者に経営を付託しようとするところに公共企業体の制度の由来があった。この点は、いかに所有と経営が分離したにせよ、現代の株式会社が依然として株主総会の形式的支配下にあるのと同様である。このような付託を受けて自主的に経営にあたる管理機関が、各公共企業体に置かれていた。それは公共企業体の経営者機関であり、経営上の基本的意思を決定する責任と権限をもつ。その構成員は、専門経営者として国民の利益を十分考慮しながら、組織の合理的・能率的な運営にあたることを期待されていた。公共企業体はまた、財務について自己責任をもつ。国が直接経営する「現業」のように毎年の経費を国庫から支出するのではなく、固有の資本をもち、収支の適合を図り、必要に応じて債券発行により資金を調達する。すなわち、独立採算制をとっていた。また労務については、従業員は一般公務員と区別され、団結権と団体交渉権が認められるのみで、事業内容の公共性のゆえに争議権は認められていなかった。以上のような諸種の内容が、公共企業体が現業に比べ近代的合理化形態であるとされる根拠になる。
公共企業体は、イギリスで比較的早く発展し、産業国有化政策に関連してこの企業形態が広く用いられた。アメリカはもともと公企業の非常に少ない国であるが、そのなかで例外的に成功を収めたTVA(テネシー川流域開発公社)は公共企業体の典型である。日本では、1948年(昭和23)マッカーサー書簡により、現業の公共企業体移行が勧告されたことから、旧三公社が成立した。その前身は、いろいろ曲折はあったが、鉄道省(国鉄)、逓信省(ていしんしょう)(電電)、大蔵省専売局(専売)であった。しかし日本の公共企業体の実態は、欧米の公共企業体のあり方とは異なった方向に進み、政治・行政・財政の経営に対する介入はかなり強く、経営の自主性は低かった。経営に政治が強く影響したこと、労使関係について当事者能力に欠けていたこと、官僚的非能率などが顕著にみられたため、その後の民営化による改革の理由となった。
[森本三男]
『増地昭男・佐々木弘編著『最新・現代企業論』(2001・八千代出版)』
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…官公庁企業は,国有国営または公有公営で,経営の自主性のない行政組織の一部である。法人体企業は,国や地方自治体の全額出資であるが,経営の自主性の高い形態であり,公共企業体と会社形態とがある。会社形態は株式会社形態を取り入れたものであり,さらに民間資本を導入したものが公私混合企業である。…
…憲法28条は,〈勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は,これを保障する〉とし,労働基本権(労働三権ともいい,団結権,団体交渉権,争議権をさす)を保障している。このうち〈その他の団体行動をする権利〉が争議行為をする権利,すなわち争議権をさすと解されている。
[争議権の意義]
労働者は,賃金労働時間その他の労働条件を維持・改善し,その経済的地位の向上を図るために労働組合を結成またはこれに加入する権利(団結権)を保障され,使用者またはその団体と対等な立場で交渉しその結果を労働協約として締結する権利(団体交渉権)をもつ。…
※「公共企業体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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