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定位放射線治療 テイイホウシャセンチリョウ

デジタル大辞泉の解説

ていい‐ほうしゃせんちりょう〔テイヰハウシヤセンチレウ〕【定位放射線治療】

病巣に対して多方向から放射線を集中させる治療法。通常の放射線治療よりも、周囲の正常な組織に与える影響を抑えることができる。ピンポイント照射SRT(stereotactic radiotherapy)。→ガンマナイフサイバーナイフ

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

定位放射線治療
ていいほうしゃせんちりょう
stereotactic radiosurgery

定位的放射線手術ともよばれる放射線治療で、体内の比較的小さな容積の腫瘍(しゅよう)などに立体的(定位的stereotactic)高線量を短時間で集中照射する治療方法。病巣の形状や大きさ等にあわせて正確に照射することで、周辺の臓器・組織を傷つけることなく病変のみを治療する。一般的にピンポイント照射と称される。
 スウェーデンの脳外科医レクセルLars Leksell(1907―1986)によって考案され、最初は1968年にスウェーデンのSophia Hemmet Hospitalに設置された装置レクセルガンマユニットで実現した。レクセルは、放射線の細いビームを用いて頭蓋(とうがい)内の標的に対して正確に定位的に照射することにより開頭術を行うことなく病巣を破壊することを「定位的放射線手術stereotactic radiosurgery」と定義した。当初は三叉(さんさ)神経痛や癌(がん)性疼痛(とうつう)、行動異常といった通常の脳外科治療ではコントロールできない機能的障害を治療する目的で用いられた。その後装置は改良され、またCTやMRIなど診断技術も発達してより正確に行うことができるようになり、脳動静脈奇形artetiovenous malformationや脳腫瘍に用いられるようになった。
 この装置で治療した部位の辺縁は非常に明瞭(めいりょう)であるゆえに、この装置は「ガンマナイフGamma Knife」ともよばれている。ガンマナイフの構造は照射ユニット、コリメータヘルメット(放射線の入射方向等を規定する装置)、治療台から構成される。照射ユニットの中には201個のコバルト60の線源が5列の円周状に配置され、その内側に線源からのガンマ線が照射ユニットの中心を焦点として一点に集中するように厚い鉛のコリメータが設置されている。線源から焦点までの距離は40センチメートルである。最終的なビームのコリメーション(照射野の設定)はコリメータヘルメットで行われる。これは大きな鉛のヘルメットで、照射ユニットのコリメータの穴と同じ数だけ、同じ位置になるように、また中心が焦点となるように穴が開けられている。治療計画はCTまたはMRIの画像を用いて立体的に行われる。たとえば重要臓器を通過するビームはブロックされなければならない。どの穴がプラグされるべきか等が決められて照射時間が決まる。患者の頭蓋にスケールを外科的に固定してそのメモリに基いて病巣が焦点になるようにあわせる。照射時は照射ユニットの前方のシールドが開き治療台に固定されているヘルメットが入っていき、照射ユニットのコリメータと合体して照射が始まる。治療台がスライドして出てくるときが治療の終了である。
 通常の脳外科的治療が施行できない部位の病巣や、手術によって摘出不能であった残存腫瘍、全身状態や高齢のため手術できない症例に用いられている。脳動静脈奇形では、この治療後2年で85%以上のナイダスnidus(異常血管塊)の閉塞がみられる。聴神経腫瘍に対する治療でも86%に発育停止または消失がみられる。
 この治療をリニアックX線で可能にしたのが「サイバーナイフCyber Knife」である。この治療の本質はガンマナイフと同じであるが、人工頭脳を搭載し病変追尾システム(TLS)を有するコンピュータロボットであるゆえ、サイバーナイフとよばれる。アメリカ・スタンフォード大学教授のジョン・アドラーJohn Adlerによって開発され、1994年アメリカでの治療が開始された。六つの関節をもつロボットアームに小型軽量化された放射線発生装置(リニア・アクセレレーター)を搭載したものである。追尾システム等を有するため患者固定が簡単で、ガンマナイフのように痛みを伴う金属フレーム(スケール)をつける必要はなく、プラスチックマスクの固定だけでよい。サイバーナイフのロボットアームは六つの関節をもち患者の周囲を自由に動けるのであるが、無制限に動けるのは扱いにくく事故の元となる。効率の良い治療計画を行うために、ガンマナイフのコリメータのように患者の周りに100か所のポイントが決められていて、各々のポイントから12の方向に照射できるように設定されている。最大1200方向の放射線ビームが利用できる。病巣の形状や大きさ等に応じて適切なビームを選び、適切な治療を行うことができる。サイバーナイフで治療可能な疾患としては、脳動静脈奇形等の脳血管疾患、三叉神経痛の機能的疾患、聴神経腫瘍、髄膜腫、下垂体腫瘍、頭蓋咽頭(いんとう)腫等の良性腫瘍、転移性脳腫瘍、小さなグリオーマ等の悪性腫瘍の頭蓋内定位照射線治療が主である。また、固定がプラスチックマスクであるため脱着が簡単で再現性も良いので、1回だけでなく繰り返して行う分割照射が可能であり、悪性腫瘍の原体照射conformation therapyを行うことができる。よって脳や頭頸(とうけい)部の悪性腫瘍の分割照射治療も可能である。耳鼻咽喉(いんこう)科領域では咽頭癌、鼻副鼻腔(びくう)癌、唾液腺(だえきせん)癌、リンパ節転移等。口腔(こうくう)外科領域では舌癌、口腔底癌、歯肉癌、頬(きょう)粘膜癌等。その他眼窩(がんか)腫瘍、頸髄(けいずい)腫瘍、転移性頸椎(けいつい)腫瘍等の治療が行われている。[赤沼篤夫]
『菊池晴彦監修『脳神経外科の最新医療』(2004・先端医療技術研究所) ▽小林達也著『ガンマナイフ――切らずにがんを治す放射線手術』(平凡社新書)』

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