研究方法による物理学の分類の一つで、実験や観測に重点をおく物理学の分野。個々の実験・観測から現象間の量的関係を推定して、新たな法則の発見や理論の検証を行う。また、それらに必要な実験方法や実験装置を開発研究する。理論物理学と対比されることが多い。
物理学において、実験と理論は車の両輪の関係にあり、理論の検証を目ざした実験が、新たな原理・法則を導くことが多くある。たとえば、エーテルの存在を確認するために計画されたマイケルソン‐モーリーの実験により光速度が一定であることがわかり、アインシュタインの特殊相対性理論につながった。また溶鉱炉の温度を正確に測定する際の、溶鉱炉からの光強度の実験式を説明するためにプランクが導入した量子の考え方は、まったく新しい量子力学を生み出した。一方、アインシュタインが一般相対性理論を宇宙に対して適用した当時、宇宙は永遠不変であると考えられていた。そこでアインシュタインは一般相対性理論の解によって宇宙が膨張や収縮をしないように、宇宙を一定の大きさにとどめる宇宙項を導入した。しかしその後ハッブルにより宇宙が膨張していることが観測され、宇宙項は破棄された。ところが最近の超新星の精密な観測により宇宙膨張の加速が観測され、逆に宇宙項が必要になってきた。このように実験・観測と理論は互いに影響し合いながら、物理の地平を広げている。
[山本将史 2022年3月23日]
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