デジタル大辞泉
「実験計画法」の意味・読み・例文・類語
じっけん‐けいかくほう〔‐ケイクワクハフ〕【実験計画法】
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じっけんけいかく‐ほう‥ケイクヮクハフ【実験計画法】
- 〘 名詞 〙 一九二〇年代にイギリスの統計学者フィッシャー(Ronald Fisher)によって創始された数理統計学の一分野。工場の製品や農場の作物などの品質に優劣の影響を及ぼす各因子が、それぞれどのような効果をもち、どのように関連し合っているかを調べるための実験を計画する方法を研究する。
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じっけんけいかくほう
実験計画法
experimental design
実験研究において研究関心に適切に答え得る研究デザインを決定するための方法,またデータを取得した後の解析法を実験計画法とよぶ。研究者が操作・制御できる要因について精度の高い推測を行なうことだけでなく,制御できない要因の影響を除去するためのデータ収集法も実験計画法に含まれる。実験計画法では独立変数や共変量を要因あるいは因子factorとよぶ。要因は通常カテゴリカル変数であり,各カテゴリーを水準levelとよぶ。たとえば正答率に与える要因のうち,刺激の種類と教示条件を実験者が操作できる場合,2要因の実験計画法になり,刺激の種類が三つならば刺激要因の水準は3となる。
【フィッシャーの3原則】 具体的な実験計画法について説明する前に,統計的実験計画法の創始者フィッシャーFisher,R.A.が挙げた実験計画法がもつべき3原則を説明する。まず一つ目は,関心がある要因について,無作為に配置を行なうことで他の要因(共変量や交絡因子とよばれる)の影響を除外し,研究の内的妥当性を高める無作為化randomizationである。二つ目は,誤差の大きさを知り,要因の効果が統計的に有意に大きいかについての検定を行なうために,当該要因の各水準について複数のデータを得る反復replicationである。三つ目は局所管理local controlで,操作できない要因のうち従属変数に対して影響が大きいものについては,積極的に解析で取り上げるべきであるというものである。具体的には,局所管理を行なうべき要因の各水準内で,無作為化と反復を行なう。局所管理を行なうために利用する因子のことを,とくにブロック因子block factorとよぶことがある。ブロック因子は通常無作為割当などの制御ができない因子であり,たとえば同一対象者に繰り返し実験を行なう場合の個人要因がこれに当たる。他の因子と交互作用が存在しないと考えて解析を行なうことが多い。
【一元配置モデルと二元配置モデル】 関心のある要因が一つだけの場合,それを要因とした一元配置モデルone-way layout modelが利用される。この場合,データは全体平均と,対象者が属する水準の主効果main effect,および誤差の和として表現される。ただしモデルの識別性のために,通常は主効果の和がゼロなどの制約をおく。各水準の主効果がすべて等しいことを帰無仮説とする検定を主効果の検定とよび,これが棄却された場合に,要因の従属変数への効果があったと考える。また,主効果の検定結果が有意であることがわかった後は,通常は水準間の比較を行なうが,その場合には検定の多重性を考慮した多重比較の手法を利用する。
一方,関心のある要因が二つある場合,あるいは関心のある変数以外に従属変数に影響を与えうる要因が一つある場合には,二元配置モデルtwo-way layout modelを利用する。データは全体平均,要因1の水準の主効果,要因2の水準の主効果,交互作用項interaction term,誤差の和として表現される。ここで一元配置モデルとの相違は,2要因の特定の水準の組み合わせが従属変数に与える効果を表わす互作用項が存在することであり,これが存在する場合にはそれぞれの要因単独の効果を別々に議論することにはあまり意味がない。そこでまずは交互作用が存在するかどうかの検定を行ない,それが有意であれば一方の要因の特定の水準での他方の要因の効果を表わす単純主効果simple main effectの検定を行なう。単純主効果の検定については繰り返し検定を行なうことから,多重比較の方法で有意水準の調整を行なうことが多い。一方,交互作用項の検定で有意でない場合は,二つの要因の主効果について一元配置モデルと同様の解析を行なえばよい。
三つ以上の要因を同時に扱う多元配置モデルも同様に考えることが可能であるが,高次の交互作用項について考察する必要があること,サンプルサイズを多くしないと検定力が低くなってしまうことから,あまり利用されない。
【さまざまな実験計画法】 乱塊法デザインrandomized block designはブロック因子が存在する場合のデザインであり,もともとは農学などで収量など従属変数に影響を与える区画をブロック因子として考え,ブロック内で局所管理を行なうために利用された。ブロック因子が実験参加者である場合には,とくに反復測定デザインrepeated measurement designとよばれる。反復測定デザインでは,同じ対象者について対応のあるデータが実験要因の水準数分得られることになる。この場合,繰り返しのない二元配置モデルが適用され,関心のある実験要因とブロック因子との交互作用は存在しない,あるいは単なる誤差として考えることになる。
また,ランダムに要因Aの各水準に被験者が割り当てられた後,要因Bについては反復測定がされる場合のように,対応のあるデータと対応のないデータが混在するような場合を分割区画デザインsplit plot designとよぶ。
要因が複数存在する場合には,すべての水準間の組み合わせを考え,さらに反復を行なうとなると測定数が膨大になる。そこで,なるべく少ない回数で関心のある要因の主効果や交互作用効果を調べるための研究デザインが求められるが,交互作用が存在しない場合に回数を大幅に減少させることができるラテン方格法Latin square designや,そのアイデアをさらに洗練させ,少ない実験回数でより多くの要因や水準についての解析を可能にする直交表orthogonal arrayを用いた部分実施要因実験fractional factorial experimentがよく利用される。
研究関心を満たす解析を行なうために,どのような要因について何水準で,どの程度繰り返しを行なうのか,ブロック因子として何を利用するのか,どのような部分実施法を利用するのかなどを決めることを要因配置計画factorial arrangementとよぶ。工学などではよく利用されるが,同時に考慮する要因が多い場合や探索的な研究を行なう場合には心理学研究でも有用である。
【反復測定分散分析】 同一対象者が繰り返し複数の実験要因について測定を受ける場合には,その実験要因の水準数分の従属変数に対する多変量分散分析モデルを実施すればよい。たとえば学習条件が四つあれば,4変量の多変量分散分析モデルを利用して,その4変量に相関があることを想定したうえで,4変量の平均値間に差があるかどうかを検定することができる。ただし相関(厳密には共分散)に球形仮定(または球面性仮定)sphericity conditionをおくことが可能な場合には,相関を無視して実験要因にブロック因子として対象者要因を加えた乱塊法(繰り返しのない二元配置分散分析モデル)を用いることで,実験要因の主効果の検定を行なうことができる。さらに検定力という観点からも,二元配置分散分析を行なった方が多変量分散分析よりもよいことが知られているため,まず球形仮定に関する検定を行ない,仮定が保持されれば二元配置分散分析を行なうことが多い。
【固定効果と変量効果】 各水準や各セルでの主効果・交互作用効果が未知の母数であり,推定,あるいは検定を行なうべき対象である場合,それらを固定効果fixed effectとよび,対応する要因を固定因子fixed factorとよぶ。実験要因での主効果や交互作用効果は固定効果である。固定効果だけで構成されたモデルを固定効果モデルとよぶ。
一方,実験計画法で考慮する必要がある要因の各水準の差そのものに関心があるわけではないという場合もある。たとえば学習効果について考える場合,複数の参加者のさまざまな学習条件でのテスト得点を従属変数とした二元配置モデルが適用される。ここで二つの要因である「参加者の違い」と「学習条件の違い」のうち,各被験者の適性処遇効果を知ることが目的ではなく,一般に学習効果を向上させる条件の特定が目的ならば,個々の被験者ごとの主効果には関心はない。この場合,実際に調査を受けた被験者は母集団からランダムに選び出されたごく一部であり,個々の被験者の主効果の実現値自体には関心はないため,被験者のテスト得点の母集団分布がどのようなものであるか(たとえば被験者の母分散がどれくらい大きいか)といったことが問題となる。このように,ある要因の主効果や交互作用効果を確率変数と考える場合,それらを変量効果random effect,対応する要因を変量因子random factorとよび,変量効果だけで構成されたモデルを変量効果モデルとよぶ。これに対し,例に挙げたような「被験者の学習効果」を変量効果,「学習条件の効果」を固定効果とするなど,変量効果と固定効果を両方もつモデルを混合効果モデルとよぶ。一般にブロック因子を変量効果とする場合が多く,固定要因についての検定力も高くなる可能性が高い。
実験計画法で解析に利用される分散分析モデルは,説明変数にダミー変数が存在する回帰分析モデルと考えることができるが,これは通常の回帰分析モデルを含めて一般化線形モデルgeneral linear modelとして統一的に理解することが可能である。 →因果分析 →回帰分析 →実験法 →多重比較 →統計的推論
〔星野 崇宏〕
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実験計画法
じっけんけいかくほう
design of experiments
ある特定の観察対象について、それにどのような要因が影響を与えているかを実験によって究明しようとするとき、できるだけ少ない実験手続や観測によって、できるだけ多くの要因の効果を、可能な限り正確に分析しうる実験計画のたて方と、それに基づく分析方法を研究すること。20世紀の初期に、イギリスの統計学者R・A・フィッシャーが、勤務していた農事試験場での農業実験について開発した考え方であり、その後、医学、薬学、工学、経営学、社会学など、広い分野で応用されている。
[高島 忠]
ある対象にいくつかの異なった処理を施す実験を行うことによって、処理ごとの効果に差があるかどうかを知ろうとするとき、その特定の一連の処理は因子とよばれ、因子に与えられる個々の処理の内容は因子水準といわれる。たとえば、ウシの飼育に、ある飼料が効果があるかどうかを実験によって検討しようとするとき、その飼料が因子であり、与えられるその飼料の量が因子水準となる。また、その際にK個の異なった飼料量で調べる場合には、因子水準数はKであるといわれる。
一連の実験によってただ1種類の因子の効果の有無を検討する実験計画のたて方を一元配置の実験計画といい、これに対して同時に2種類以上の因子による効果分析を行うものを多元配置の実験計画とよぶ。たとえば、先のウシの飼育について特定飼料の効果の有無を調べる実験において、実験結果に、飼料量のほかに、その実験を行う牧場の環境条件が影響を与える可能性が考えられる。この場合には、試験飼料のほかに牧場の所在地がもう一つの因子として加わることになる。いま、与えられる飼料量の相違をA1、A2、A3の3通りとし、B1、B2、B3、B4の4か所の牧場において実験を行う。それぞれの牧場で3頭ずつのウシを確率的に選択し、各1頭に異なった量の飼料を一定期間与えて、その間に増加した体重を測定することにする。これは飼料量と牧場所在地という2種類の因子の組合せについて効果実験を組み立てたものであり、二元配置の実験計画の例である。
[高島 忠]
この二元配置の例で、飼料効果の有無を調べるためには次のような方法がとられる。まず、測定値xijが実現される背景となっている構造を理論的に想定する。この例の場合には、飼料量の効果のほかに牧場の違いが影響を与えていると考えられるから、それぞれの効果をαi、βjとすると
xij=μ+αi+βj+uij
という構造が想定される。ここで、μは測定値全体にとっての共通の効果であり、uijは確率的な変動部分、いわば誤差である。これが実験計画モデルといわれるものである。このモデルは2因子の効果が足し算の形で作用するものと想定されているため線形実験計画モデルとよばれる。もし、この飼料が与えられる量によって効果に差がなく、また牧場の所在地による影響もないとするならば、
H1: α1=α2=α3=0
H2: β1=β2=β3=β4=0
であるはずである。この両仮説(H1、H2)が、実験によって得られた12個の測定値に基づいて統計的に検証される。それには、確率変数uijについてのある種の仮定に基づいて、分散分析という手法が用いられる。この二元配置の例では、二つの仮説が同時に検定されるが、主たる目的は、飼料量による効果の差の有意性を検定すること(H1)にあり、牧場差の有意性の検定(H2)は付随的に行われる。しかし、牧場因子を考慮することにより、飼料量の効果を牧場差による効果を除去した形で調べることができるわけである。また、この実験の例では、因子水準を実験単位に割り当てる際にグループ(牧場)ごとに確率的に行ったが、このような割当て方を乱塊法とよぶ。このほかに、ラテン方格法、直交配列法などの割当て方法がある。
[高島 忠]
『R・A・フィッシャー著、遠藤健児・鍋谷清治訳『実験計画法』(1954・荘文社)』▽『奥野忠一・芳賀敏郎著『実験計画法』(1969・培風館)』▽『鷲尾泰俊著『実験計画法 改訂版』(1997・日本規格協会)』▽『永田靖著『入門実験計画法』(2000・日科技連出版社)』
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実験計画法 (じっけんけいかくほう)
design of experiments
数理統計学の一つの応用手法で,どのようなデータを集め,どのように分析したら,そこから導かれる統計的判断に誤りが少ないかを研究する学問である。数理統計的手法の多くが,得られたデータの解析に主として用いられるのに対して,実験計画法はデータの効率的な集め方を決める一つの有力な手法といえる。農事試験の計画とそのデータ解析から発展した実験計画法は,今日広く生物学,医・薬学,工学,心理学などの実質科学の分野に活用されている。また理論的にも,整数論,置換群論,環論,有限幾何学,グラフ理論,符号理論,組合せ理論など多くの数学の分野と互いに接触をもつ分野に成長している。
実験の場に確率モデルを導入するため,実験計画法の創始者R.A.フィッシャーは1920年代に,反復,無作為化,局所管理の3原則を提唱,誤差の推定と管理を可能にし,モデルの下で実際に解析する手法として分散分析法を確立し,実験計画における統計的方法の重要性を力説した。
実験計画法の基礎においているデータの確率モデルは線形モデルである。すなわち,観測値からなるベクトルyが未知母数のベクトルθと誤差ベクトルeを用いてy=Xθ+eと表される既知の行列X(計画行列という)が存在するときである。このとき実験計画で扱うことは,(1)モデルが与えられたときの推定,検定などの統計的推論,(2)ある種の目的と制限をみたすように計画行列Xを求めること,(3)観測の実情に基づいて統計的線形モデルなどによる取扱いの理論的根拠を与えること,である。以下,基礎概念であるフィッシャーの3原則の考え方を述べる。
実験を計画するとは,実験処理の選択(因子と水準の選び方)と実験配置の方法(ブロックの構成と無作為化)を念頭において必要な意志決定を行うことである。ここで因子とは実験結果を表す特性値に影響を及ぼすと考えられる種々の原因系のうち,その実験で取り上げて比較されるもの,水準とは因子のとる種々の条件をいう。またブロックは実験の場を層別する因子である。実際実験から妥当な結論をうるかどうかは,実験で取り上げて比較した処理が実験の目的に照らして適切であったかどうかによる。それゆえ,実験処理の選択は因子と水準の選び方とともに実験者の創意と工夫が必要となる。また実験結果のデータに誤差が伴うのはつねである。この誤差を考慮に入れて統計的判定をくだすためには,前述の統計的モデルをみたすように実験が計画されなければならない。これらのことを可能にするのが以下に述べるフィッシャーの3原則である。(1)反復 もし同一条件下での2回以上の独立な繰返し(実験の反復)があれば,その実験でのデータの散らばりの程度がわかり,誤差分散の推定ができ,平均値に伴う誤差は小さくなる。(2)無作為化 測定誤差には,(a)偶然的に起こりその状態が統計学でよく知られた確率分布に従うと仮定できる偶然誤差と,(b)測定の時間的順序,測定者のくせや装置の差など一定の傾向をもつ系統誤差がある。フィッシャーは系統誤差を偶然誤差に転化するため,実験順序,装置,測定者などの無作為割付け(例えば乱数表などを用いる)を提案した。このことより実験の場の誤差分散の大きさを偏りなく評価できる。(3)局所管理 いま3通りの処理を3日間にわたって各3回ずつ実施する場合を考える。このとき(1)(2)の原則をみたすものとして各処理の割付けを全体として無作為に行う完全無作為化法がよく使われる。しかしこの実験は1日3交替で3日間かけて行うので,時間的順序に伴う系統誤差は日間変動と日内変動から成る。一般に日間変動は日内変動より大きい。完全無作為化法では両方とも誤差として扱うので,日間変動もなるべく小さくなるように,この3日間を通じて実験条件を均一にしなければならない。このことは一般には不可能なことが多い。そこで日内変動は無作為化により誤差に転化し,日間変動は“日”をブロックとして考えブロック内の実験条件をできるだけ均一にする誤差要因の局所管理により除去される乱塊法を用いるのが普通である。日間(ブロック間)に差があったほうが結論の適用可能な範囲が広いといえる。実験装置や担当者を変える必要があれば日の変り目に行えばよい。このことは実験を非常にやりやすくする。この局所管理の原則はブロックの構成原理とも呼ばれる。工場実験では通常,日,作業者,装置などがブロックとして用いられる。
執筆者:景山 三平
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実験計画法
じっけんけいかくほう
design of experiments
統計学の一分野。イギリスの数学者 S.R.フィッシャーによって考えられた。自然科学だけでなく社会科学においても,実験は重要な研究手段であるが,従来は実験の計画において,特に考慮される一つの条件 (因子) のみを変化させ,実測値に影響を及ぼす他の多くの要素を一定に保つことによって,着目している因子の効果を測定する方法がとられていた。しかし,このように実験を計画できるのは,ごく限られた問題についてだけである。それを克服するために考えられたのが,この実験計画法である。フィッシャーは,農事試験に際して試験地をいくつかの均一化された地区に分割し (層別の原則) ,その各地区をさらに小さく分割して,それらの各小地区に,どの品種を植えるか,またどのような肥料を用いるかを,無作為に定め (確率化の原則) ,各地区に,同種の実験を十分に反復して行う (反復の原則) という方法を採用した。これが実験計画法の原則であるが,特にこの層別と確率化の原則によって,実験に影響を及ぼす着目因子以外の,他の無数の要素による判別の誤りを回避することができる。実験計画法を用いると,同時に2種類以上の因子を取上げて,それらの効果を別々に測定することができる。それらの因子を計画的に配置することを,実験配置法といい,また測定された結果を統計的に分析することを変量分析法という。 (→因子分析 )
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実験計画法【じっけんけいかくほう】
数理統計学の手段を用い,合理的に実験をわりつけ,なるべく少ない労力と費用で信頼できる情報を得ようとする実験の設計方法。たとえばコムギの品種A1,A2,A3,A4の収量を比較するとき,植えた場所により肥沃度や気温・降水量が異なり,収量に影響を与える。そこで土地を四つのブロックB1,B2,B3,B4に分け,各ブロックごとに4品種を無作為的に並べて栽培し,品種AとブロックBの組合せ別に収量xを測定する。この結果を分散分析法により分析して,求める情報を得る。これはコムギの収量に変動を与える原因のうちから,品種とブロックの二つだけ(これを因子と呼ぶ)を特にとり上げた最も簡単な場合で,2元配置法と呼ばれる。他に三つの因子をとる3元配置法や,ラテン方陣を用いるわりつけもあり,以上を直交配列という。実験計画法は自然科学,社会科学,農事試験,生産管理その他多方面に応用され,種々の方法が考案されている。
→関連項目乱数表
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世界大百科事典(旧版)内の実験計画法の言及
【統計学】より
…数理統計学のなかにはこのような一般理論のほか,一つの対象について同時に多くの観測値が得られる場合のデータを扱う[多変量解析]法,対象の時間的変化を表すデータを扱う時系列解析法([時系列分析])などが,それぞれ独自の体系を作っている。 統計データの作成法を扱う分野として,標本調査法と実験計画法があげられる。[標本調査]法は多数の構成単位からなる大きい集団(母集団という)の特性値を,その構成単位の一部(標本という)だけを取り出して観察することにより,推定する方法を取り扱う。…
【フィッシャー】より
…第2は統計量の[標本分布]に関連し,処女論文における相関係数の精密標本分布の導出をはじめ,偏相関係数,Z分布,分散共分散行列の固有根の分布などを求めた。第3は統計的[実験計画法]の創出で,ロザムステッドにおける経験にもとづき,実験誤差を含む条件のもとでの実験の計画およびデータの解析法を確立した。実験の計画における局所管理,確率化,繰返しの三つの原則を立て,またデータの解析における分散分析法を発案した。…
※「実験計画法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」