客主(読み)かくしゅ

精選版 日本国語大辞典 「客主」の意味・読み・例文・類語

かく‐しゅ【客主】

〘名〙 客と主人主客。きゃくしゅ。
続日本紀‐天平宝字七年(763)正月庚戌「賜客主五位已上祿各有差」

きゃく‐しゅ【客主】

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改訂新版 世界大百科事典 「客主」の意味・わかりやすい解説

客主 (きゃくしゅ)

朝鮮の伝統的な商業機関の一つで,李朝とくにその後期に発達した。客主とは客商主人の略で,大別すると歩行客主と物商客主とに分かれる。前者は比較的高級な旅館業を営む者を指すが,おそらくこうした旅館業者が,旅客たる商人の商品を委託販売したり,保管したりするようになって,商業,金融業を営む物商客主が発生したものと推測される。歴史的に重要なのはこの物商客主で,その業務は次のように広範囲にわたった。(1)委託販売業 生産者や商人から委託を受けて商品を販売し,口銭(手数料)を得た。販売に際しては,居間と呼ばれる仲介人を立てるのを通常とした。(2)倉庫業。(3)金融業 商品を担保とした代金の立替えや,官僚・両班(ヤンバン)からの預金業務を行った。前者の場合には,於音オウム)と呼ばれる一種手形を発行するのが普通であった。客主と同様の業務を行う機関として,旅閣というものもあった。地方によっては客主と旅閣のあいだになんらの差異もない所もあったが,その取り扱う商品の種類により,穀物魚類,塩等の容量の大なるものを扱うのを旅閣,金銀織物,紙,薬種等を扱うのを客主と称する地方が多かった。したがって旅閣は通常,船運に便利な大河川沿岸に存在した。客主,旅閣ともにその多くは非特権的な商人であり,18世紀後半から19世紀前半にかけては大規模な都賈とこ)(買占め)を行ったりして,特権的な御用商人と鋭く対立した。1876年の開港以後,進出してくる外国商業資本に抗して,もっとも能動的な対応を示したのも彼らであった。
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普及版 字通 「客主」の読み・字形・画数・意味

【客主】きやくしゆ

主客。

字通「客」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の客主の言及

【商人】より

…このほか,浙江省や広東省からも多くの商人を出したが,彼らは19世紀ころから台頭しはじめ,海外諸国との関係を通じて足場を固め,20世紀にはいると最大の勢力へと成長した。華僑専売【寺田 隆信】
[朝鮮]
 近代以前の朝鮮における商業の担い手には,御用商人である市廛(してん)(六矣廛(ろくいてん))および貢人のほか,客主,旅閣や褓負商(ほふしよう),さらには京江商人など李朝後期に台頭する私商人層がある。李朝政府は,高麗の制度を受け継いで建国当初から首都ソウルに市廛を設置,特定商品の専売権を与える代償として種々の負担を課し,国家の必需品を調達させた。…

※「客主」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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