高知県の最西端にある市。西部は愛媛県に接し、南部は宿毛湾に臨む。1954年(昭和29)幡多(はた)郡宿毛、小筑紫(こつくし)の2町と橋上(はしがみ)、山奈(やまな)、平田、沖ノ島の4村が合併して市制施行。市域は、宿毛湾奥を中心に扇形に広がり、北半は松田川流域で山がちであるが、河口部を中心に宿毛平野が開け、南部はリアス海岸をなしている。なお、宿毛湾内の沖の島、姫島、鵜来(うぐる)島を含む。国道56号が愛媛県側へ通じ、足摺(あしずり)岬方面への国道321号を分岐している。1997年(平成9)土佐くろしお鉄道宿毛線が開通した。古来、九州方面からの渡海地で、片島港から大分県佐伯(さいき)市へフェリー定期便があったが、2018年(平成30)より運行休止となっている。
宿毛平野の農業、山地部の林業のほか、古くから漁業が盛んであるが、現在は養殖業に重心が移った。中心市街地宿毛は、近世土佐藩家老伊賀氏の小城下町。一帯には、宿毛貝塚(国の史跡)、近世初期の松田(宿毛)城跡、河戸堰(こうどせき)、土佐藩執政野中兼山(けんざん)一門幽閉地や墓地などの史跡も多い。また竹内綱(たけうちつな)と吉田茂、林有造と譲治の父子二代の政治家を生んだ。市域東部の平田地区は古代幡多国造(くにのみやつこ)の中心地とされ、近年は工業団地などが造成されている。山奈地区の「浜田の泊屋(とまりや)」は若衆宿で国指定重要有形民俗文化財。四国八十八か所第39番札所の延光寺がある。中西部の県境にある篠山(ささやま)や沖の島などは足摺宇和海(うわかい)国立公園に含まれる。また、咸陽島(かんようとう)は宿毛県立自然公園の中心地となっている。面積286.20平方キロメートル、人口1万9033(2020)。
[大脇保彦]
『『宿毛市史』(1977・宿毛市)』
高知県西端,愛媛県境にある市。1954年市制。人口2万2610(2010)。市域の大部分が山林で,ほぼ中央を松田川が南流して宿毛湾に注ぐ。農業は米のほかミカンを産する程度で振るわず,県境の山間部では林業が盛んである。宿毛湾口に浮かぶ沖ノ島,鵜来(うぐる)島周辺はイワシ,ムロアジなどの好漁場で,古くから土佐・伊予両国で漁場をめぐる争いをくり返してきたが,沿岸漁業が不振となり,代わって湾内での真珠母貝やハマチの養殖が盛んになった。松田川下流に位置する宿毛の市街地は,近世には土佐藩家老安東氏の居館を中心とした町であった。失脚した野中兼山の一族は宿毛に40年間幽閉され,墓は安東氏の菩提寺東福寺の背後の西山墓地にある。市街地北西の丘陵には縄文時代の人骨も出土した宿毛貝塚(史)があり,東部の平田にはかつて曾我山古墳があり,近くに式内社の高知坐(たかちにます)神社がある。中山の延光寺は俗に寺山と呼ばれ,四国八十八ヵ所の第39番,土佐路最後の札所。延喜11年(911)の銘のある銅鐘(重要文化財)を蔵する。また,浜田の泊屋はかつての若衆宿で,国の重要有形民俗文化財。土佐くろしお鉄道宿毛線が通じる。
執筆者:正木 久仁
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