日本古代の戸籍・計帳における戸主との関係表示のひとつ。〈寄人〉〈寄〉あるいは何も書かれていないものも,同じ性質であると考えられている。戸主との続柄がいっさい表示されず〈寄口〉とのみ記されるものであるが,戸主と同姓のものも異姓のものもあり,また戸主のそれよりも大きい家族をなしているものもあれば,個人の例もあって,その性格規定をめぐって学説の対立がみられる。だいたいにおいて,戸籍・計帳が家族構成の実態を示しているとする論者は,寄口の隷属的性格を強調し,とくに異姓寄口を中心として家内奴隷制への傾向を認めようとするのに対して,戸籍・計帳に表現されたものが法的擬制であるとする論者は,その隷属的性格について否定的であり,編戸にあたって50戸1里制に規定されて,遠縁者などを同一戸内にあわせねばならぬところから生じる表示上の問題にすぎぬとして,〈郷戸・房戸〉の制度と関連させて考えようとする。
→古代家族論
執筆者:福岡 猛志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
奈良時代の戸籍・計帳において、戸主との血縁関係が当時の親族称呼では表せない場合につけられた一種の続柄(つづきがら)用語。「寄人」とも書く。古代戸籍の親族称呼は「いとこ」(=「同党」「従父兄・弟」「従父姉・妹」)までしかないため、これより遠い親族者や非血縁者は「寄口」「寄人」と表示するか、なにも続柄を書かずに近い親族者のあとに列記している。寄口の階層性について、寄口はすべて良民が没落したもので奴隷的存在であるとする見方が行われているが、寄口には戸主の遠い親族で、しかも家族的まとまりをもった者がかなり含まれており、このような寄口は同一戸内の共同生活者か、独立した家族が便宜上編付されたものとみたほうがよいようである。
[平田耿二]
寄・寄人(きにん)とも。古代の戸籍に記載された,戸主との続柄注記のない戸口。単身者や破片的家族だけでなく,傍系親を含むものや妾をもつものもある。その性格については,戸主との同姓・異姓の別も手がかりとしつつ,(1)戸主を家長とする家父長制家族の従属的労働力,(2)戸を人為的画一的に編成するため便宜的に編付されただけで階層差とはかかわらない,(3)父系的な続柄記載の原則からはみでた女系親族,とみる諸説が対立している。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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